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9:墓地

ホーンラビットを刈り始めて30分。

あれからなんとか3匹ほど見つけて狩ることができ、種族レベルも2に上がっていた。

ゼル神父に聞いていた通り、この辺りはあまり魔物がわかないようで、大量に出てきて処理しきれずに、なんてこともなく1匹ずつ対処できたため安全ではあったが、探すのに時間がかかるため効率はかなり悪い。

それでも私的にはある程度育つまではここで狩り続けるしかない理由がある。


「さすがにHP低すぎるし、防御も初期装備じゃねぇ。」


一度ドレインタッチの効果を確かめようとわざと攻撃を食らったのだが、その際のダメージは5。最弱のホーンラビットの攻撃でさえ5発くらえば御陀仏なのだ。他の魔物の攻撃であれば下手したら1撃でやられる可能性も高い。

そのためある程度まともな装備が買えるようになるまでは極力安全マージンを取って戦うため、しばらくここで狩り続ける予定だ。

あ、ちなみにその時のホーンラビットはドレインタッチで倒しており、すでにダメージはない。

しかしドレインタッチの効果は視覚的にちょっとひどいものがあった。なにせ触れるとどんどん干からびていき、10秒もかからずミイラみたいにカラカラのしわしわになってしまったのだ。あれはちょっとホラーっぽかった。

そんなことを考えながら探していると、またもホーンラビットを見つけた。しかも今回は2匹いる。

とりあえず1匹は先制して倒そうと思い、同時に試したいことがあったため術式の構築を変更して使用した。


「ソーラーバレット!」


発動したのは陽光属性のバレットだ。ちゃんと発動したことに心の中でガッツポーズをとる。

属性適性は魔法においては魔力をその属性に変換して使用するためのプログラムだ。魔力を変換する構文は一緒なので、変換したい属性の構文さえわかれば対応する属性についての適性スキルを持っていなくても使用可能だ。

しかしこの属性についての構文が問題だった。私が読んだ本には基本となる6属性についての構文はあったが、派生属性の構文は記述されていなかったからだ。

けれど記述されていないからって、完全にわからないわけじゃない。使用する文字自体はわかっているのだし、派生元となる火と光については構文もわかっている。

ヒントがあれば後はトライ&エラーで試していくだけだ。そうして何度目か―――いや、見栄を張らずに言うと数十は下らない回数失敗しているが、今回何とか成功したわけだ。

わざと攻撃を受けたときも、本当は先制しようとして構築がうまくいかないうちに接近されて方針転換した結果だったけど、あれはあれで必要だったし、怪我の功名ということにしておこう、うん。

そんなこんなを考えてるうちにソーラーバレットは片方のホーンラビットに着弾、一撃でHPを吹き飛ばした。ちなみにもう1匹はドレインタッチでおいしくいただきました。


【条件を満たしたため、スキル『陽光属性適性』がアンロックされました。】


戦闘を終えると、期待していた通りそんなポップアップが。

魔術による属性変換プログラムはスキルによるものと一緒。なら、取得していない属性であっても、その属性の魔術を使用することで習得できないか、もしくはフラグを達成したことにならないかと考えたのだ。

その結果はこの通り。さっそく習得しようとして―――


「SPが足りないっ!」


見事なまでのorzを披露することになったのだった。






気を取り直して先に進み、レベリングを続けることにする。

ちなみに先ほどの戦闘でレベルアップして種族レベルが3、魔導言語が5となったためSPは10まで増えたのだが、陽光属性適性の必要SPはこれまた10と、魔術とどちらか片方しか取れない。

魔術を取った方が戦力向上という面ではいいが、もうしばらくすると日が昇る。そうすると陽光属性適正を取らなければ外にいることができないため、レベリングを続けるならそちらを取るべきだが、就寝時間を考えるとそう長く続けることもできない。逆に日が出たらログアウトして寝てしまい、早起きして夜にレベリングするのもありだ。6時間寝てからログインしても、ゲームでは夜の12時なので日の出までレベリングすれば必要なだけのSPはおそらく集まるだろう。とはいえ陽光属性適正のレベルを上げておかないと日中ダメージを受けるため、友人たちと一緒にプレイする際に支障が出ないように早めに取得しておきたい気持ちもある。


どちらを取ろうか迷いながら進んでいくと、いきなり開けた場所に出た。

しばらく人が来ていないのか多少汚れが目立つものの、きれいに加工され文字が彫られた石が無数に整然と並ぶその場所はまさしく―――


「墓地、か。」


中に入って見回してみる。結構な広さがあるようで、サッカーコートが二つ三つ入りそうなくらいだ。

せっかくだし何かあるかもしれないのでぐるっと見て回ることにする。

そういえば、まだ街の探索もしてないし、これがこの世界に来て初めての探索になるのか。初めての探索が墓地だなんてほかにいないだろうし、2重の意味で世界初だな!なんて一人でボケてみたりしながら墓地の一番奥まで来てみると、一際大きな墓石があった。

おそらくかなり重要な人物のものであろうそれは、大きいのはもちろんのこと、様々な彫刻が施してあっただろう形跡があるが、おそらくかなりの年月が経っているせいか残念ながらそのほとんどが風化してなくなってしまっていた。

刻まれていた文字もほとんど見えなくなってしまっていたが、かろうじて一部読めそうだったので近づいてみた。


「…の、聖…、ここ、に眠る…、かな?」


残念ながらほとんどかすれてしまっていて読めなかったので、ほかに読めそうな場所はないか墓の周りをぐるっと回ってみた。すると、墓石の裏側、地面に近い位置に文字が彫ってあった。ほかのものとは違い後から彫られたようで、しっかりと形のわかるそれを読み上げてみる。


「えっと、…暗き道よ開け、深き場所へ我をいざなえ…?…って、ええっ、なに!?」


書いてあった文字を読み上げた途端、突然周囲の地面が光った。突然のことに何が起きているのかわからず混乱していると、次の瞬間光が急に強くなった。あまりのまぶしさに目を閉じていると、しばらくして収まったのか瞼越しにも感じられた光がなくなったので、目を開けてみると―――


「………なにこれ?」


死体に囲まれてました。

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