『司は人間だったよ』
司達が消えてから一週間。
王宮内の庭園には色とりどりの花が咲き始めていた。
悠理は眩い光に目を細めながら、ゆっくりと窓に近づいた。
窓の下では使用人の子供たちが、無邪気にかくれんぼをしている。
コンコン
「ユーリ。 起きてるかい?」
レグナードが柔らかく微笑みながら、部屋に入ってくる。
その表情に悠理は詰めていた息を吐いた。
「おかえり、レグ。」
レグナードは悠理の後ろに回り、背中からそっと抱きしめた。
「大丈夫だったよ。穴も、世界樹も。」
レグナードは手を絡めて彼女のお腹に手を当てる。
あの日。テオドールの放った転送魔法による魔素の消失は、魔族領に大きな穴を開けた。
空が裂けて消え去り、世界樹のすぐ近くまで大地がごっそりと消失した。
そのため、悠理の懐妊を早々に発表することで、国民の感情を揺さぶり応急処置を施したのだ。
「さすがに消えた分は戻せていないけど、ゆっくり直していけばいい。」
レグナードは悠理の肩に顔を埋める。
彼が世界樹の様子を見に行くと、世界樹の半分は削れ消失していた。
「世界樹様……」
『問題はない。もう世界は、自分で癒えていく。』
レグナードは淡々と答える世界樹を見上げた。
「……悠理は、あなたを心配しています。」
その言葉に少しだけ、世界樹が思案する。
『そう。さすが人間だね。』
レグナードはその言葉の意味を捉えきれないでいた。
「あの男なら理解できるのだろうか……。」
ポツリと溢れた疑問。
ざわりと、世界樹が大きく揺らぐ。
『司は、人間だったよ』
世界樹がほんの少しだけ⸻楽しそうに答えた。
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