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元に戻りたい  作者: yukko
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皇弟殿下

皇帝陛下に使者を通じて領内で不審な出来事が複数起きていると伝えると、皇弟殿下御自らシュタウフェンベルク伯爵邸を訪れた。


「皇弟殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう恐悦至極に存じます。」

「テレーゼ、良い!

 挨拶どころではない!

 人払いせよ!」

「はい、直ちに。

 皆、下がりなさい。」

「はい。」

「殿下、お話を伺いとう存じます。」

「うむ。

 今、其方の領内で起きていることは、全て繋がっておるのやもしれぬ。」

「全てとは如何な事でございましょう。」

「私への毒、皇太子への狩場に於ける襲撃、ウージンゲン公爵嫡男のカールへの

 毒、そしてブラウン男爵の失踪。」

「繋がるのでございますか!」

「そう考えておる。」

「この帝国の転覆を狙ったものよ。」

「帝国の転覆………でも、我が領内の出来事は繋がっているとは思えません。」

「否、繋がっておる。

 転覆前にシュタウフェンベルク伯爵領での上下水道事業を盗むため。

 帝国の転覆を他国が内部から行おうとしておったと考えられる。

 陛下派と私の周囲の者達とを対立させて、そのための私への毒だった。

 そして、皇太子殿下を襲撃すれば、対立を扇げると思うたのであろう。

 だが、皇太子殿下を守り命を落としたのが、私の側近である其方の父だった。

 誤算であったのだろうな。

 彼が命を賭して守ったのは皇太子殿下であった。

 私は片腕を()ぎ取られたのだ。」


皇弟殿下は苦痛に顔を歪めた。

テレーゼの父シュタウフェンベルク伯爵は如何に忠義だったか分かると私は思った。


「テレーゼ……其方の身も危ない。

 シュタウフェンベルク伯爵夫人も、ファビアンも、モーリッツも……。」

「私達にも及んでいるとお考えなのですね。」

「そうだ。其方らを保護せねばならぬ。

 シュタウフェンベルク伯爵の遺族を誰一人欠けさせてなるものか!」

「では、私どもは何方で保護されるのでございましょう?」

「宮殿で保護する。」

「殿下、恐れながら申し上げます。

 私の家族の保護はお願い致したいと存じます。」

「其方の家族?」

「其方は?」

「私は伯爵でございます。

 伯爵領を守らねばなりません。」

「残ると言うのか…………。」

「はい。」

「ならぬ!」

「殿下、家族が全て屋敷から居なくなれば、工事は誰が進めるのでございましょ

 う。」

「其方の片腕として働く者がおろう。」

「私でなければならぬのでございます。

 伯爵が自ら成したことでなければ、意味がございません。

 領民と共に成したことでなければ意味はないのでございます。」

「其方の身に危険が近づいておると分かってもか?」

「はい!」

「其方は………。」

「ただ、お願いがございます。」

「なんだ。言うてみよ。」

「私の警護を殿下の手の者にお願いしたく存じます。」

「それは容易い。 それだけで良いのか?」

「はい。」


テレーゼの母と弟達は皇弟殿下と共に宮殿に移った。

ヘンリエッタはテレーゼに「独りで残るなど………。」と共に移ることを承諾させようとした。

だが、テレーゼが頑として承諾しなかった。

ファビアンとモーリッツは「お姉様と一緒がいい!」と言い離れなかった。

「また直ぐに会えます。いい子でお母様を守って下さいね。」と言うと、ファビアンは「はい!」と言った。


15歳で斬首刑は、もしかしたら変わってしまい、無くなったのか、若しくは他国での斬首刑なのかもしれないと思った。

後何日の命か分からないが、出来得る限りのことを領地で行い、この領地では水による病気の蔓延をなくせれば良いのだと思った。

屋敷内で働いている者達にも私はよく観察する必要があると思った。

特に日が浅い者に対しては注意しなければいけない。

執事長は長年シュタウフェンベルク伯爵に仕えてくれた。

今もテレーゼに良く領地について教えてくれている。

彼は対象から外しても良いだろう。

それ以外の者については、全て対象者にする。

そう決めた私は、家族が宮殿に向かった理由を【父ベルンハルト・フォン・シュタウフェンベルクの葬儀の正式なお礼】にした。

そして、疲れている【母ヘンリエッタ・フォン・アルトドルフの休息】とした。

殿下から近衛兵を3人、シュタウフェンベルク伯爵邸に派遣された。

屋敷に来る前に、近衛兵の姿ではなく、執事の姿で来て貰った。

執事として仕えて貰うことにした。

ただ、執事長と違うのは、胸にナイフを潜めていることである。

そして、執務室とテレーゼの寝室には剣を隠している。

それらを扱うのは執事として仕え始めた皇弟殿下の近衛兵だ。

私は自分の部屋のベッドにナイフを潜めた。

枕の下に……それらのことは執事長にも伝えていない。


⦅もしかしたら、15歳を待たずして私は死ぬかもしれない。

 今回は斬首刑では無いかもしれない。

 でも、死ぬことからは逃れられない。⦆


そう執務室の机の引き出しに入っているナイフを見た。

まさか、このような日が来ようとは思っても居なかった。

執務室の窓から外を眺めて、私は思った。

テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク伯爵の✕デーは、必ずやって来るのだろう。

毎回、繰り返される死。

だが、ふと思った。

――人は生まれて来たら、必ず死ぬのだ――と………。

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