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元に戻りたい  作者: yukko
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皇帝陛下との謁見を無事終えて、私はシュタウフェンベルク伯爵が親し気に陛下と会話していたことに驚いた。

そして、このまま第三王子と婚約を結ばなかったら、カールとも婚約しなくて済むと思った。

そう思うと、思わず小躍りしたくなるほど嬉しかった。

嬉しさが滲み出てしまっていたようで、シュタウフェンベルク伯爵と伯爵夫人から「嬉しそう。」だと言われて、「そんな娘を見ると、嬉しくなる。」とも言われた。

そして、「自慢の娘だ。」と繰り返された。

私は両親を思い出してしまった。

両親も良く言ってくれていた言葉だからだ。

「自慢の娘だ。」と………。

泣きそうになってしまった私を心配したシュタウフェンベルク伯爵が優しく問いかけてくれた。「どうしたのだ?」と………。


「両親が良く言ってくれたのです。

 『アンは自慢の娘だ。』と………思い出してしまいました。」

「……………そうであったか……。」


それから馬車の中でシュタウフェンベルク伯爵夫妻は押し黙ったままだった。

アン・スミスのことは、家族のことは禁句だったのかもしれないと私は思った。



陛下との謁見の1週間後、皇弟殿下が宮殿の謁見の間にて皇帝陛下へ挨拶したと聞いた。

無事に公務に戻られたということだった。

シュタウフェンベルク伯爵から皇弟殿下の話を聞いた。


「皇弟殿下は毒を盛られたそうだ。」

「毒だったのでございますか!」

「飲み水に極少量だと思うのだ。

 味に違和感を覚えられた殿下は、直ぐに吐き出された。

 それでも、毒は身体を蝕んだ。」

「直ぐに胃洗浄をすれば良いのですが………。」

「それよ、その いせんじょう とやらは無理なのか?」

「無理です。私は医学を学んでおりません。

 それに、道具も作れないと思います。」

「そうか………。」

「胃洗浄は直ぐでないと駄目だったと思います。

 時間が経てば経つほど、胃洗浄は行えません。

 たぶん、そうだったはずです。」

「そうか………。」

「アン・スミスの記憶では、活性炭を飲むくらいです。

 私は活性炭を粉にした物を、どのくらいの水で溶かすのかさえ分かりません。

 毒を飲んだ人で試すしかないです。

 でも、それは不可能です。」

「可能かもしれぬ。」

「えっ?」

「また盛られないとは言い切れまい。

 それに対象が変わるやもしれぬ。」

「陛下のお命を?」

「陛下か、皇太子殿下か……また再び皇弟殿下か……分からぬ。

 そのようなことが起きないようにするには、どうすれば良いのか知らぬか?」

「毒見役を置く、とかありますが………。」

「どくみやく………。」

「陛下がお召し上がりになる前に、毒見役が少量食べるのです。

 毒が入ってなければ、毒見役の命は無事です。

 でも、入っていたなら、毒見役は亡くなります。」

「うむ。」

「後は…………。

 水槽に小さな魚を入れて、陛下がお召し上がりになる前に水槽に入れます。

 毒が入っていたら、魚は死にます。」

「水槽が良いな………陛下に進言して参ろう。」

「お役に立つとは言い切れません。」

「勿論、分かっておる。

 …………テレーゼ…………否、アン・スミス。

 ありがとう。」

「伯爵…………。」


シュタウフェンベルク伯爵と、そのような話をしている間に、事態は少しづつ動いていた。

私が気付かぬうちに………。

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