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別れを受け入れられぬ春

"七転八百奇先生初作品!漫画『貴方を最後まで追いかける』が書籍化決定!"


タイムラインに流れてきたのは見覚えある作者の名前。

そう、SNSで小説版『貴追』と同姓同名の作者が、同じタイトルで漫画を発表していたのだ。


その投稿を見た瞬間、私は真っ先に小説サイトを開き、お気に入り欄をスクロールした。


しかし、いくら探しても目当ての作品は見つからない。タイトルで検索しても結果はゼロ件。



作者は、小説版のページを消してしまっていたのだ。



なぜわざわざ消したのか。

そもそも漫画化するなら、事前に告知くらいあってもいいはずなのに。

そんな尽きることのなかった疑問も、書籍を購入し、最後まで読み終えた頃には、どうでもよくなっていた。


漫画版の『貴追』は、小説版とはまったくの別物だった。


いや、世界観自体は同じだった。

しかし、キャラクターの性格と物語の展開が全て変わっていたのだ。

冷酷で疑り深かった主人公は天真爛漫で平和主義な青年へ変えられ、小説では死んでいた登場人物は全員生き残り、苦労の末の努力は報われ、敵には更生のチャンスがあり、みんなで仲良くおててを繋いでハッピーエンド。

私が愛した小説版『貴追』の唯一無二の特徴は全て削ぎ落とされ、万人受けする王道ファンタジーへと姿を変えていた。


夢であって欲しかった。

タイトルが同じだけの別作品、質の悪い二次創作だと言われても信じる、いやむしろそうであって欲しいとさえ思った。


仕方なかったのだろう。


小説版の方は人気がなく、私以外に見る人もおらず、売れるようなものではなかったから。


それでも、私からすると小説版『貴追』は私の青春そのものだったのだ。


漫画のストーリーが進む度に、小説版との乖離は酷くなっていった。


これ以上過去を踏みにじられないよう、どうにか漫画版『貴追』を避けて生活をした。


しかし、漫画版『貴追』の人気は類を見ないほどの盛り上がりを見せたことで、日本に住んでいれば嫌でも目に入ってしまう、そんな作品になってしまっていた。



「好きになれるかもしれないから全巻読んでみたけど....やっぱり私には無理だなぁ」



涙で世界がボヤけた。

厄介オタクだと思われるかもしれない、それでもどうしてこんなに話を変えたのか、小説版をどうして消したのか。どうしても七転先生に聞きたかった。


今まで送るのを躊躇っていたDMを開く。


《七転八百奇@漫画家 アニメ絶賛放送中》


七転先生のSNSを開いて震える手でDMのボタンを押そうとする、が、やはり直前になって"最悪の返答"が頭をよぎり、結局今日もDMを送れないままSNSを閉じた。



「何時までもクヨクヨしてちゃ駄目なのは分かってるんだけどなぁ...」



桜が舞い出会いと別れの季節


私は今年も過去から抜け出せずにいる。

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