17,【回想】魔妖国編3
「いやぁー、マジで昨日はびっくりしたよね。」
「あの妖鬼、ミズを追っかけてきたんでしょ?しかも対魔術用の魔道具まで用意して。」
「そうだよ!しかも人の弱みにつけ込むようなことをしてさ。彼奴はもう自己中変態の極悪人に決定だね。」
あの騒動から一夜、辺境の街の宿で朝食を食べながら、レルと振り返っていた。
ゼフィルで久々に神聖力を使ったからか、帰宅後は夕飯も食べずに寝てしまったのだ。
「まっ、あの男はもう私の前に現れることはないからレルも安心して。彼奴のせいで私の楽しい魔妖国観光も台無しになっちゃうし。私さ、エルダナークに行ってみたかったのに。」
エルダラークとは魔妖国デュベラスの海に近い北側にある湖だ。そこは、禁忌の大地からの魔素、海からの魔素の両方が合わさりできたとされ、受けた見る人によって不思議な色に変化する湖だという。「絶景だ!」という人もいれば、「あんな物々しい場所もう行きたくない」という人までいるほどだ。
それは神からの審判が受けられると言われている場所として、デュべラスでも神聖化された特別な湖だ。
「エルダラークねぇ。別に行けばいいんじゃない?あの妖鬼もしばらくレアルから出られないんでしょ?」
「そうなんだけど。私の勘がこの国に長居は危険って言ってるの!」
翌日、私の小刀が仕上がったと連絡を受け、地人の職人のおっちゃんの工房を訪れた。
「おー!来たか。そこのテーブルに置いてあるやつがそうだ。」
「ありがとう!」
私が小刀を手に取ると、柄の部分には魔石が埋め込まれ、刃の部分は元の銀色から黒っぽい色に変化していた。
「おっちゃん、この刃の色って。」
「あぁ。魔石を組み込んだ途端に変化したんだよ。性能は上がっているから問題はないんだが、なぜこんな色に変化したかはわしにもわからんかったわ。もしかしたら、今までとは違う性能が付与されているかもしれないんだがな。」
「新しいスキルか。それはそれで使うのが楽しみだわ。」
「それならいいんだが。しばらくは気をつけて使うんだぞ。」
職人のおっちゃんにお礼をして、私達は工房から帰ってきた。
「ミズ。これからどうするの?」
「受け取るものは受け取ったし、ダズラムに帰ろうと思う。職人を紹介してくれたケダンにも報告したいし。」
「りょうかーい!それなら食料の調達しとかなきゃね。」
「はいはい。レルの好きな果実は道中あまり見かけなかったもんね。」
「そうだよ!旅に果物は必須だから!」
「じゃ、今日は買い物をして、明日出発だね。」
私とレルが食材を買い込み、満足げに宿へ帰ると、宿の入り口にあのハイスベック馬が6頭も止まっていた。
どんな金持ちがこんな辺境の宿に来たのだろうと思っていたら、宿のオーナーが私の顔を見て、
「あ、ミズさん。待っていたよ。レアルからお客さんだよ。」
レアル?えっ、まさかあの妖鬼の使いの者?自分じゃ来れないから、人を寄越したんじゃ・・・・。
「ミズ様。お待ちしておりました。私たちは魔妖国特務隊第一部隊の者です。私はその特務隊総隊長を務めておりますカッザと申します。」
また特務隊か。えっ、今総隊長って言ってなかった?この人。
カッザと名乗ったこの男は、間違いなく妖鬼だろう。そして今まで会った妖鬼の中でもかなりのガタイがよく、鍛え上げられた体をしており、赤毛っぽい茶色の短髪で目の色はあの変態自己中男シャイアと同じ黒目に瞳孔が金色をしていた。
「その、特務隊の方が私になんの用なのでしょうか?」
「シャイアという男をご存知ですよね。」
やっぱり、彼奴がらみか!!この場から逃げる?もう準備はできてるし、問題ないよね。
私の動揺が分かったのか、カッザは、
「あぁ、貴方を尋問とかどうこうする気なんてないので、ご安心ください。実は私どもがこちらまで来た理由というのは、魔妖国デュベラスの王ナンドーチ様より言付けを預かっているからです。」
ナンドーチ王?このデュべラスを今のように妖術を使って、近代化を推し進めた賢王と言われている人だ。
それまでは、自分のことにしか興味を持てない妖人達は必要最低限の技術しか使っていなかったのだが、その妖人達の特性を活かし、様々な妖術を国の発展に利用してきたのだ。
そんな人が私に何の用?
カッザ特務総隊長が折り畳まれたナンドーチ王からの手紙を読んだ。
『人族であるミズ殿。我国の一部の者が貴方に無礼を働いたようで、この国の代表として謝罪をしたい。そして一部聞き及んでいる貴方の素晴らしい魔術のこともぜひ伺いたいので、首都レアルまでお越しいただきたい。貴方が懸念しているシャイアのことなら、こちらで完全に隔離しているのでご安心ください。もし、お望みならエルダラークへの案内もさせよう。』
ううぅ・・・・。何もかもバレてる。しかもなんで私がエルダラークへ行きたいって知ってるの?めっちゃ怖いんですけど!!
「ミズ。これは逃げられないね。いや、物理的にはミズの魔法を使えば消えることも可能だろうけどさ。」
そう、エルダラークへ行けるの?という希望が出てきたら、俄然その欲望が私を掻き立てた。
しかもシャイアも完全に抑えて安全に行けるってことでしょ?
私を捕まえようとした罠だったりする?
どうする?うーん・・・・。
「ミズ様。我が王は決して不誠実な真似はなさらない方です。王として時には非情な決断もされる方ですが、あくまでもそれはそういう相手にだけです。特にシャイアのような奴には厳しいですが。」
「わかりました。その王様にお会いします。その、会うだけでいいんですよね?」
「もちろんです。ただ手紙にもありましたように貴方が使う魔法にとても興味があるみたいなので、それを見せてほしいということはあるかもしれないですが、貴方に何か強制するということはないと思います。」
うー、なんか少し不安があるがしょうがない!
翌日、私達はあのハイスベック馬に乗せられ、二度と行くまいと思った首都レアルに再び向かうことになった。




