1.いくつになっても
初投稿になります。
よろしくお願いします。
どこまで青い空。
そしてこの土と緑の匂い。
懐かしさが込み上げる。
匂いの記憶というものは、どれだけ年月を重ねようと薄れることはないようだ。
「ねぇ、これからどうしようか、レル?」
私の後ろにいるのは、精霊のレル。体ほど大きな果実を美味しそうに
食べていた。
「えー、そうだなぁ、たいていのところには
行ったもんねえー」
小さな口の周りを果実の汁でベタベタにさせながら
思案するようにレルが言った。
私、滝原美鈴こと、ミズは何かの拍子にこの不思議なありとあらゆる種族が住む世界に迷いこんでしまった。というより、放り出された。
元の世界では念願が叶って、世界中のいろいろを見てみたいという夢を叶えるべくワーキングホリデーをしていたのに。
そりゃぁ、いろんなところに行ってみたかったけど、別世界にいきなり連れてこられるとは…。
こちらに来た当初は何も分からず、ただ茫然自失に森の中で座り込んでいた。そこに血相を変えて走ってきた森人のお兄さんに助けられたのだ。化け物か何かと間違えられた?
それからどれだけの時間、場所、種族と関わったのか分からない。その中で大地の精霊のレルと出会い、なぜか私は気に入られ今も一緒に旅をしている。
私達の旅は、とても気ままだ。滞在するとなると長期間に
なる事もザラで、種族によっては3世代の生を見送ることもあった。
えっと、私っていくつになったんだろう?
っていうか、私って寿命があるのか?
見た目はこの世界にきた時とほぼ変わらない。
だからか気持ちは好奇心旺盛な20代のままだ。
どうやら肉体年齢にに精神が引っ張られるようだ。
そのおかげか、レルとの長い長い旅も飽きずに楽しんでいる。
「あっ、ミズ!人間の国にもう一回行ってみようよ!」
「…。」
「もうあの時の人間達はいないだろうし、人間の国も変わってるんじゃない?」
そう、私は自分と同じ種族であろう人間の国が苦手なのだ。私が最初に出会い、助けられ、この世界のことわりや魔法と呼ばれる不思議な力の使い方を教えてくれた森人の場所から旅立つときに、次に訪れたのが人間の国だった。
私に対して森人達は、最初こそ警戒してよそよそしかったが、時が経つにつれ家族同然に扱ってくれ、私が人間の国に行くと言った時はかなり心配された。
でも自分と同じ種族であろうこの世界の人間に会ってみたかったし、この世界の人々の暮らしというものに興味があった。森人達に聞いても「あの種族の考えてることは私達には理解できない。」と不可思議な生き物のように語るだけだった。
初めての人間の住む街ヴェーナムにレルと二人で訪れてからかなり時が経つ。
もうその時いた人々はもう生きてはいないだろうけど、私の記憶が体を重くさせた。
「…そうだね、レル。いつまでも嫌な記憶を引きずってばかりじゃだめだね。ヴェーナムに行こうか!」
私は立ち上がると荷物を片付け、人間の国がある方角へ歩き出した。
今日の空やっぱりどこまでも青い。この空はあの時の場所に繋がっているんだ。
じんわりと胸の奥が重さを持ち始めていることに、憂鬱な気持ちになった。
ただ向き合う時がきたんだと自分に言い聞かせるしかなかった。




