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07 買い物。




 ドラゴンの姿のアギトさんの背に乗って、ドクロ族の村に戻ってみれば、流行り病の村人達が待っていた。

 袋一杯のリンの花を渡せば、泣かれてしまう。これで救われるとたくさんの感謝を伝えてくれたあと、自分達の村に帰っていった。


「シエルちゃん。これからはあくびも堪えてほしいのだけれど、頼めるかな?」


 シエルちゃんの家で、シエルちゃんと向き合って話す。


「うん……堪える」

「ありがとう」

「えりな……」

「なぁに?」

「もう来たくない?」

「そんなことないよ。ただ私の世界での生活があるからね。私はいつでもいいんだけれど、りょうたは学校があるから」


 学校というワードがわからないらしく、首を傾げられた。

 私は頬に手を当てて考えてから言う。


「そうだ、土曜日になったら呼んでね」

「どようび……?」

「あーえっと……六日後になったら、私達のことを想像してヴァルレオに呼んでね」


 曜日は伝わらないので、数字を言えば伝わり、シエルちゃんは頷く。


「アギトさんも、六日後までレックスを預かってもらってもいいですか?」

「ええー!? レックスとはなればなれになるの!?」


 レックスを抱き締めて、りょうたは目をうるうるさせた。

 レックスも金色の瞳をうるうる。


「また抜け出したら、騒ぎになっちゃうもの。りょうたも学校の授業に集中出来ないでしょう?」

「集中できるもん! はなればなれはイヤ!」

「休みになったら、また会えるから」


 小学四年生のりょうたは、駄々をこねった。

 そこは我慢してもらう。


「いい? 異世界に行くのは土日にしよう。じゃないと身が持たないわ。ちゃんと両立しなくちゃ。次来る時は準備して、いーっぱい遊べばいいよ」


 そう説得すると「うーん」としぶしぶ納得してくれた。

 レックスを持って、アギトさんに渡す。

「キューン」とレックスは悲しげな声を出した。


「じゃあまた六日後に会いましょう。シエルちゃん、アギトさん、それにレックス」

「レックス、またね……」


 まだうるうるしているりょうたは、レックスの前足を握る。

 レックスが暴れ始めたが、アギトさんが押さえた。

 シエルちゃんは、口を大きく開ける。初めてあった時のように。

 すると、足元の影が虹色に染まった。ズインと私とりょうたを呑み込んだ。

 虹色がなくなると、私の部屋に立っていた。


「あっ! ブーツ履いたままだった」

「もらったからいいんじゃない?」


 アギトさんにもらったブーツを履いたまま。濡れているから、慌てて脱いだ。カーペットが濡れてしまう。りょうたのブーツも脱がせた。


「レックスがいなーい……」


 しょんぼりするりょうたは、ソファーで項垂れる。


「また来週会えるよ」


 そう宥めて私は、弟のランドセルを目の前に置いた。

「ほら、宿題やって」と言うと、りょうたはこの世の終わりみたいな顔をしたのだった。夕方になって、家へと帰る。

 私は、土日に起きた出来事を書き留めていた。

 眠れなかった分のように今日はぐっすり眠ったあとは、インスタントコーヒーを飲んで仕事に集中。おおよそのノルマを達成した。

 んーっと背伸びをしてから、ソファーに倒れ込む。

 スマホをいじって、防水のリュックサックとバーベキューセットを注文した。


「明日はアギトさん達の服を買いに行こうっと」


 楽しそうな買い物になりそうだと口元を緩ませる。

 男物の服を選ぶのも楽しいものだ。

 りょうたとか、あと……元カレ。

 嫌な奴のことを思い出してしまった私は、首を振って忘却した。


「……んふふ」


 アギトさんに抱き締められたことを思い出して、また口元を緩ませる。

 キュンと胸が狭くなって、私はクッションを抱き締めて悶えたのだった。




 自転車に乗って、近くのモールに行く。

 お手頃価格のブランド服の店。そこで先ずはアギトさんの服を選ぶ。

 あの人の身長は、百九十センチ近くあるだろう。でも細身だから、XLくらいで大丈夫だろうか。冬にもなるし、温かいアウターにしよう。黒い服とか着させたらかっこいいんじゃないだろうか。着るところ見てみたい。楽しみだ。

 ルンルン気分で選んでいく。


「問題はズボンか……」


 一人呟く。サイズがわからない。思い出してみる。だいたいの太さがこのくらいだったからぁっと適当に選んだ。スエットとデニムをカゴに入れた。

 次はシエルちゃん。あの子も細身だからサイズはSサイズで十分だろう。スエットを一着とワンピースを二着。これぐらいでいいっか。

 印税収入が入ったから、余裕で買えた。

 二日後には、ネット注文したものも届く。

 しまえるバーベキューセットも、大きなリュックサックに入れる。

 スケッチブックも詰め込んだ。色々スケッチするつもり。スケッチすれば、より鮮明に描写出来るもの。楽しみだ。楽しい時間になることは間違い。


「楽しみだな、んふふふ!」


 楽しみを胸に、私は一週間を乗り越えた。


「明日土曜日だよ!! お姉ちゃん!!」


 金曜日の夕方。りょうたは嬉々とした表情で泊まりに来た。

 りょうたも楽しみでしょうがないらしい。

 金曜日の夜は準備確認して、眠る。

 翌朝は早起きして、着替えた。

 アギトさんからもらったブーツをしっかり履いて、待機する。


「まだかな? まだかな? ねぇ、まだかな?」

「落ち着きなさい、りょうた。そう言えば時間決めてなかったわ」


 ブーツを履いてソファーに座るりょうたは、足を揺らしながら忙しない。

 私も貧乏揺すりをしたくなるけれど、堪えた。

 時間を決めればよかったけど、そもそも時計があるのかも疑わしい。

 曜日もないみたいだし、星も月もない世界。


「レックスと一緒にいーっぱい遊んでもいいんだよね? ね?」

「うん、でも目の届く場所にいてよね。前みたいに飛ぶのはなし! まだレックスは小さいんだから落ちるかもしれないわ!」

「アギトさんには乗っていいの?」

「……しっかり掴まるのよ?」


 アギトさんのドラゴン姿に乗るのは、百歩譲って許可しよう。

 レックスはだめだ。

 ん? あの子って成長するのかしら。

 アギトさんは伝説のドラゴンなんて言っていたけれど、なんの伝説だろうか。

 私達の言い伝えも、深くは聞かなかった。機会を見て尋ねてみよう。


「あっ!! お姉ちゃん!」

「あっ!」


 私達の影が、虹色に輝いた。

 シエルちゃんからのお呼び。


「行こう! 異世界へ!!」

「うん!! ヴァルレオへ!!」


 伸びてくる影に自ら飛び込んだ。



 




勝手ながらここで一度終わらせてもらいます。

まだまだ未熟でした。

もっとゾクゾクワクワクするような文章や展開が書けるようになったら再開したいと思います。

それまでごめん!!!

ブクマありがとうござます。

またいつか。


2018118

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