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平和

 かすみにとって、俺は恋人のはずなのだが、それは過去の思い出になりつつある。今は、かすみの娘として暮らしている。そして、それが当たり前のことになっているのだ。レイちゃんも然り。俺が使命感に燃えて、レイちゃんを助ける。守る。育てる。そう思い、あらゆる能力を使いながら、活動しているが、そんなことは、関係ないのだ。レイちゃんにとって、俺はヒーローではない。ただの妹。か弱き妹なのだ。かすみも、レイちゃんも俺を家族として迎い入れてくれてある。ただし、ヒロとしてではなく、ちひろとしてだ。ならば、俺はどうすればいい?答えは簡単だ。二人が幸せであれば、何でもいい。二人の笑顔が見られれば、それでいいのだ。


 彩先生から、連絡が入った。孝の右手に付着物があったらしい。CIAで調べさせているので、分かり次第、報告がくる手筈になっている。最優先事項で、取り掛かっているので、時間はかからないだろう。今のところ、レイちゃんに変わった様子はない。このまま何もなければ、かぐや姫の作戦は失敗だったということになる。

 気になるのは、カショーキの動きである。もしも、再び、何らかの方法でレイちゃんの暗殺を企ててくるのであれば、かぐや姫の作戦は失敗だと証明できる。しかし、全く動きがないならば、逆に我々の負けということになる。まあ、あれこれ悩んでも仕方ない。まずは、彩先生からの報告を待つことにしよう。


 昨日の件があり、この家族における俺に対するルールが異様に厳しくなっている。言葉遣、行動などで、一回でも女の子らしくなかったり、その他のルールを一回でも破ったならば、即、オチンチン切断の刑になるのだ。俺に拒否権はない。だが、俺には人体再生能力が備わっている。、腕が取れたり、体に穴が空いたりしても、すぐに元に戻れる。だが、さすがに、オチンチンの切断は試したことがない。悪魔や鬼と戦ったときにも恐怖は感じなかったが、オチンチン切断には恐怖しかない。かすみやレイちゃんは、オチンチン切断を望んでいるのが分かる。男に戻って欲しくないからだ。

 もしも、平和な生活が続くのであれば、俺はずっと女の子で暮らすことになるはず。かすみのレイちゃんも、それを望んでいる。俺も、もともと平和を望んでいたのだから、それでいい。「ヒロ」が『ちひろ」の中で静かにしていること。それが平和の証かもしれない。

 女性として初めて、男性を好きにもなった。洋介のことが好きだ。オシャレをしてメイクをして、恋にドキドキする乙女の気持ちを味わえることもできた。キスも経験できた。このまま 交際を続けて、プロポーズされたら、お嫁さんになるのだろうか。愛する人の子供を産むこともあるかもしれない。

 暗殺者として、恐れられた俺が、まさか、女性としての道を歩むことになるとは、考えもしなかった。今では、ウエディングドレスを着て、バージンロードを歩くことを夢見ている一人の女性になっている。

 私は、純粋な女の子になりたい。美しい女性になりたい。本当にそんなことを思っている。なぜって?それは、すでに心が完全に女性だから。何より、今の生活が幸せだから。

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