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出発⑤

 かぐや姫は、カショーキから渡された策略書を読み返していた。それを実行するための、さらなる綿密な計画を考えている。カショーキの考えは、合理的かつ具体的だ。かぐや姫は、刺客を手配するよう、桃太郎にメールした。


 分身仏から、桃太郎のパソコンのパスワードが分かったと、連絡が入った。

『主様、パスワードが判明しました。面白いですよ。パスワードは、全て小文字で、「kibidango」です。』

この組織の人間は分かりやすい奴ばかりだ。素直な性格な奴ばかりだ。白雪姫しかり、赤ずきんちゃんしかり。素直さゆえ、悪魔の巧みな言葉に騙されているのだろう。


 俺はMr.Tの元に向かった。台場の事務所で、Tは仕事中であった。

『おじちゃん、ちひろだよ。』

彼は、俺の突然の訪問にも、もう驚かない。慣れてしまってるからだ。

『ちひろ様。取りに来たんですね。USB、出来てますよ。やり方は、この紙に書いておきましたから、3分もあれば完了できます。完了したなら、連絡ください。後は、こちらで遠隔操作しますから。』

まだ、何も言っていないのに、全て答えてもらった。

『ありがとう、Tおじちゃん。何か欲しいものとかない?お礼をしたいので。クルマ?マンション?何でも用意するよ。』

『ちひろ様、礼など無用です。強いて言えば、これにサインしてもらえますか。』

Mr.Tが取り出したのは、ヤングマガゾン。モデルの俺が表紙になっている号だ。

『何買ってるのよ。恥ずかしいでしょう。』

『たまたま、買っただけですよ。サイン入りだと、プレミアがつくんですよ。ちひろ様は、分かってないと思いますけど、今、その人気は凄いですよ。秘密のベールに包まれているのが、男たちの心をくすぐっているようです。そのサインを持っているとなれば、ちょっと自慢できるのでね。』

『Tおじちゃんも、男ってことね。じゃあ、特別よ。ちょっと待っててね。』

 俺は瞬間移動で、自宅に戻り、20歳のちひろに変身し、着替えとメイクをした。そして、再び、Mr.Tの元に戻った。

『Mr.Tさん、お、ま、た、せ。』

Mr.Tは、座っていた椅子から、飛び上がるほど驚いた。20歳のちひろを見るのは初めてだからだ。動揺しているのが、よく分かる。露出度の高いワンピースに、目のやり場に困っている。純情な男だ。少し、からかってやるか。

『いつも、ありがとうね。』

俺は横の椅子に座り、脚を組んだ。そして、Mr.Tの肩を優しく撫でた。

『ちひろ様。勘弁してください。あなたが、想像以上の美しさだということは分かりました。しかし、もはや、その美しさは男の心を破壊する武器ですよ。限りなく危険な武器です。』

『うふふ、可愛いんだから。雑誌を出しなさい。サインしてあげるわ。』

Mr.Tは、手を震えながら、雑誌を俺に差し出した。俺は表紙にサインをし、さらにキスマークをつけた。

『はい、これで、プレミアつくかしら。』

『あ、ありがとうございます。やばい、ドキドキが止まらない。今日は、もう仕事は終わりにしよう。少し冷静にならないと。』

『あはは、面白いわ。沈着冷静なMr.Tが慌ててるのを初めて見たわ。女性になると、今まで分からなかったことが分かり、見えなかったものが見えるようになるの。なかなか楽しいのよ。美人が得だということも、身をもって分かったわ。Mr.Tだから言うけど、この姿だと、男性はみんな、私の言うことに首を縦にふるのよ。あなたが言うように、これは恐ろしい武器と言っていいわ。お仕事中、ごめんなさい。では、またね。』

 俺は、USBを受け取り、自宅に戻った。

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