瀬戸内の海に
鳴門でバスを乗り換え、本日何度目かの高速に乗る。午前8時。あたりは随分と明るくなって草木がきらきらと輝いている。連れ立った二人の友はやや疲れた様子で静かに寝息を立てている。ぼんやりと二人の顔を見ていると自分の高校時代が蘇ってきた。
二人は当時から有り余るほどの個性がギラギラしていて、僕にはとても眩しかった。僕はいつも個性を出さないように、目立たないように生きてきた人間だから、二人に限らず振り切れた個性の集合体のようなまわりに、正直戸惑いを隠せなかった。僕の中の常識は、オセロで角を打たれたように次々とひっくり返された。
自分に素直に生きる。
どこまでもぶれずに一貫した生き方は僕を大きく揺さぶった。僕は偽りに満ちた人間だ。ちょうど、トイレットペーパーの芯のように中身のない軸に、一生懸命綺麗な色を塗ってきたような僕は、鉄の芯を持つ友人たちと打ち合いをしても到底かなわない。今までの生き方を否定されたことへのやり場のない怒り。どうすることもできない苛立ち。それらすべてを内包して存在するとてつもない不安。後に遺ったのは、夕暮れ時の波打ち際のような何とも言えぬ悲哀だった。
バスが休憩所に入った。少しのどが渇いたようだ。二人は寝ているので僕は独りでバスを降りた。コンビニでコーヒーを買って外に出ると熊蝉の鳴く声。夏の太陽が山の緑に反射して眩しい。バスの発車時間までまだあるようだ。僕は白いガードレールから身を乗り出して、崖下に広がる景色を見た。街が見える。豆粒が光を反射して動いて見えるのは、きっと車かな。街のさらにその先に、きらきらがゆらゆら動いて見えるの何だろう。時々小さな山が浮かんでいる。ああ、これはきっと海だ。瀬戸内の海だ。初めて見た景色に純粋に感動したからだろうか。僕はおもわず携帯を手に取り、シャッターを押した。
バスの中へ戻ると、友人の一人が起きていた。
「なんだか嬉しそうだね」
「きっと故郷を見たせいかな」
友人は少し笑って再び眠りについた。興奮冷めやらぬ中で、バスは再び動き出した。




