何言っても蹴られる私
「ほら、見なよ。
見張りのやついるだろ?」
私たちは私がここに来るために出てきたトンネルの前まできた。
そこには先ほどのように女が2人いる。
「あいつらめちゃめちゃ強いからまず勝てないよ。
あんた、ほんとに運がいいんだからね。
見張りがいないなんて全然ないんだから。1年に1回あったらいいほうだよ。」
「まぢ?私運だけはいいほうだと思ってたけどそこまでとは…。
でもどうしよう…。私が魔女じゃないってバレたら殺されちゃうんだよね…。」
私はさっきの光景が頭に浮かぶ。
「バレないようにするしかないだろ。幸い、普段私らは自由に生きてるからね。
干渉しないようにしようと思えばそんなに難しいことじゃないよ。」
「よし…!帰り方を考えつつ、バレないようにしつつ頑張るよ。
リリーも手伝ってね!」
「は?なんで私が…」
「命の恩人を見捨てるの?」
「あ?私がそんなことするわけないだろ、私に任せときな。」
え?なにこの子。超いい子じゃん。
「とりあえず今日は私の家に来なよ。布団くらいならだしてやるから。」
「ほんと?!じゃぁお言葉に甘えちゃおうかな。
……おそったりしない?」
「人間に興味ねぇなぁ。」
「よかった。今日のパンツはクマさんだから、勝負パンツじゃないから。」
それにさっき少しちびっちゃったし。
そもそも勝負パンツなんて持ってないや。
「なんていうか、こっこって気持ち悪いな。」
「なんていうか…がちで言われると傷つくよ。」
そんなこんなで私はリリーの家に行かせてもらうことにした。
「リリーの家ってここから近いの?」
「私の家も3丁目にあるからね、すぐそこだよ。」
「3丁目?ここのこと?」
「そだよ。ここはもののき3丁目。
さっきのところはもののき1丁目。
1丁目のやつらが1番狂ってるかな。」
「確かにあいつら狂ってるね。」
「本来ならここまで来る道って結界みたいので人間には見えないようになってるんだよ。
でも1丁目のやつらはわざと結界を弱めて人間をここに来させてさっきみたいに楽しんでんだよ。」
「ないわー、ありえないわ1丁目。
私が来たときも結界弱まってたのかな?」
「意外とやわな結界だからね。
何かの拍子に歪ができてたんじゃないかな。」
私は運がいいんだか悪いんだか…
「お、着いたよ。」
そういうと一軒の割ときれいな住宅を指差した。
「立派な家だなぁ。リリー1人で住んでるの?」
「そうだよ。あんな狂ったやつらと一緒に住めるかよ。」
「…よかった。リリーがまともなやつで…」
私は笑いながら言った。
「おーい、早く入ろうぜ。」
「褒めたんだからきけよー。」
家の中に入って驚愕した。
「……きたない…」
足の踏み場もないくらいにものが散乱している。
リリーいわく、全部ごみじゃなくてコレクションだという。
ないない、バナナの皮とか落ちてるじゃん!
私は泊めてもらうかわりに掃除をやらせてもらった。
寝るスペースもないしね。
リリーはその間に夕飯を作ってくれた。
まずくはないけど驚くほど美味しいわけでもない普通のオムライスがでてきたけどとりあえず美味しいって言ってみた。
そしたら顔を真っ赤にして飛び膝蹴りをしてきた。
なんなの…どう答えても蹴るじゃん!
部屋もあらかた片付けたし私は満足しながら汗をふいた。
携帯を見ればもう午前1時。
相変わらず圏外だし。
「あんた、すげーな。
こんなに片付くとは思わなかった。」
タオルを片手に感心しながらリリーは周りを見渡す。
「あー、私もお風呂入りたいよ。
汗かいちゃった。」
「そう思ってさ。せっかくだから銭湯いこーよ。」
「いいねー。銭湯もあるとかあんま私らの世界と変わらないんだね。」
銭湯で汗を流しながら今日のことを振り返る。
「あそこでリリーに会ってなかったら私死んでたねきっと。」
「あー一瞬だったろうね。」
「…もし私が命の恩人とかじゃなかったらリリーも私に冷たかったの?」
「んー…もしもの話しはあんまわかんねぇわ。」
「そっかぁ…でもありがとね、リリー。」
「……ん」
私たちは話しながら夜空を見上げていた。
リリーの顔を見たわけじゃないけどたぶん顔を赤く染めていると思う。
あれ…?
蹴られなかったや。




