エロゲ転生、魔族ってやっぱ害悪そのものだってはっきりわかるんだね
エロゲがテーマとはいえ、そういう描写の部分はぼかしております。
つまりチキってます。
でもタイトルではイキってます。
翌日全員が起床をする頃の朝7時頃。
俺たちは講堂裏の倉庫から通路を使ってダンジョンに潜り込んでいた。2層までは準備運動という名の散歩をしながら、さらに下に降りる入口の前にいる。
かえでの最下層突破と魔族の血の強化が最優先事項。それ以外は…まぁ今は放置だな。
「それでは優月様、行ってまいります」
「ああ。がんばれ……とは言わん。さっさと終わらせてこいよ」
「かしこまりました」
壁の一角を触って起動させ、何事もなくかえでは奥に入っていった。本心としては何かリアクションが欲しいんだけど、それをあいつに期待するほうが無駄だ。
ということで俺も後をつく。ダンジョンの性質上、数時間もあれば破壊された壁や床はダンジョンが持つ魔力を使って原状復帰する。
「……発現してから感覚が鋭敏になったよな。間違いなく異常だ」
もってきていた油性ペンで壁に落書きをしてから、31階層に転移する。俺の姿に気付いちゃったアンラッキーなコイツに警告しておく。俺の方は俺の方で問題だからな。
何者かが気付く前に通路の突き当たりまで走ってから起動する。
「転移、31階層」
ただアイツなら、二度も死にたくないだろうし引き返すだろ。意味があって朝から俺たちの後を付けてるはず。でもまだここは早い。ということであとは瑛士たちに任せよう。カウンセリングは先生やお嬢がいるだろうし、すぐにクラスに馴染むでしょ。
よろしく~。
その二人組を見たのは本当に偶然だった。
早く目が覚めてしまったために誰もいない時間に登校して、いつも行っている公演やリハーサル同様、ひとりで自分の舞台を念入りに下見する。
これは自分のルーティンワークであり、自分のプロとしての矜持でもあったがための行動。
だからこそ、誰も起きていないような時間に「何気なく登校するような雰囲気」で歩く二人組が気になったのだ。
そしてたどり着いたのは自分の知らないモンスターたちが跋扈するダンジョンと呼ばれる異世界のような場所。もちろん名前や常識の範囲では知っていたが、今自分がダンジョンに入る「資格」はもっていないので、本来は立ち入ることすら許されない。
と、わかってはいるがどうしても抑えきれない好奇心が意志とは別に足を動かしていた。そして前までたっていた場所では味わえなかった非日常感、普通の生活では味わえない緊張感、まともに対峙したことない敵という存在への恐怖心とそれを上回る探求心と好奇心が今の原動力となっている。
―――資格を持たない誰かさん。一人で死にたいならこの先にどうぞ。
「…………」
ただ、過ぎたる好奇心は猫をも殺す。
その落書きを見たひとりの生徒は持っていた護身用の警棒を固く握りしめた後、『前は引き際を間違えた、今度は間違えない』と胸に熱く言い聞かせて、長さをもとに戻してから日常へと帰ることを決意した。
☆★☆★☆★
自分でも不思議に思うけど、俺の魔力って間違いなく無尽蔵に限りなく近いはずだ。
前でも結構魔力保有量はあったが、魔族化してからは一日中魔法を使っていても使い切ったような感覚がなければ、少し休んだだけで中級魔法は発動できてしまうくらいには保有量が圧倒的に増えている。減ったと感じる例外は無属性極大魔法である【アブソリュート・ゼロ】と闇属性の上級魔法である【デオキシニア】だ。
【アブソリュート・ゼロ】についてはかなり使い手を選ぶ魔法だが、大量の魔力…つまりは膨大なMPが用意できるのであれば誰でも習得ができる。しかし【デオキシニア】は違い、味方はほとんど覚えず逆に敵しか使わない魔法だが、ただの魔法ではない。これの一番恐ろしい効果は「自分の生命と魔力を引き換えに、相手を即死させるか代償にした生命力と魔力をそのまま相手にダメージとして与える」というもの。もちろん魔法扱いなので闇属性の耐性か即死耐性があれば即死は防げてある程度ダメージも減らすことができる。なければとても悲惨なものではあるが、話はそれるのでここで割愛。
どうして魔力の話になったかと言えば、今自分と目の前のカプセルに身を投じている女の人が纏っている根源だが、これは自分が無意識的に作り出す魔力から溢れた分で生成されているからだ。
この根源の噴出量が多ければ多いほど靄の影響範囲が広がるという。
かえでから聞いた話では『魔族としての格』の一つらしい。ただこれが無くても目の前の女は「武力」だけで成り上がったのだが…。
『優月ひとつ筆問です。あなたは魔族ですか?』
部屋に入ったと同時に前までは感じ取れなかった薄い霧のようなものを感じ取った。
「…いや、魔族ではないです」
質問と同時に魔王軍の幹部本人からねめつけるような目線を送られるが、以前感じていた縛り付けられる恐怖のようなものはもう感じていない。むしろ正気を冒そうとしてくる闇に煩わしさを覚えていた。
そして抑えていた魔族としての本能が身体を駆け上がってきてくる。しかも伝わってきた感情が「この程度の闇で足止めしようとする事実に対して報復する」という暴虐の意志だった。
「魔族ではないですけど、さすがに煩わしいのでそれを止めてもらえるとありがたいんですが?」
なんとか魔族の意志を抑え込み、穏便に済ませようと修正する。
『それは無理な話です』
「それはどうして? 暴走でもしてるんですか?」
しかしにべもなく一蹴される。また身体のなかでざわつくが、衝動に身を任せるのは間違いなので気合で誤魔化す。
『いえ…そうではなく、今の私では力が残っていないからです』
衝撃の事実だが、意識的に闇を吸い取ってみると確かに八重乃みやびが持つ闇とは異なり、微弱ながらも「魔王復活」を目論むという魔族側の意識だった。
「…どういうことだ?」
『それを話すのであれば簡単に私がここにいる経緯から説明しましょう』
そして明かされる八重乃みやびの性質は…予想からそう離れるものではなかった。
『私は過去に魔族対応部隊の騎士のひとりでした。主な仕事は…魔族からの脅威を排除し、出現する魔物などを討伐して国益と平和を維持すること』
『優月が生まれる150年ほど前に起きた魔族間戦争で私を除いて全滅した、魔族の血を浴びて唯一の生き残りなのです』
そして過去の魔族は突如として現れたという「勇者」によって身の引き換えと同時に討伐されてかりそめの平和を勝ち取った。国は勇者を称えて亡き者は「必要な犠牲」と割り切ったのだ。
『立場やいつ魔族化してしまうかわからない現状、意識を失っていた間に取り決められた国の判断は「部隊の解散」と「八重乃みやびを含めた部隊全員が殉職」という報道でした』
「…今生きてるってことは、対魔族への切り札と囚われの実験体ってこと?」
『その認識で間違いありません。非人道的な扱いを受けてもなお、魔族の血が活性して生命力が回復してしまい、そのうえこの首輪によって自害することもできず、来る日も来る日もこの水槽みたいなカプセルに閉じ込められ、血を抜かれては再生、身体を痛めつけられては再生を繰り返されました』
表情を変えずに視線を下に向ける。手は動かせないが首輪をみているのだろう。当時を振り返ってるんだろうけども、なんとも痛ましい話だ。
「なんともクソッタレなこと」
『昔は私も同じ感想でした。しかし何年も過ぎてしまえば感情は何も感じなくなり、他者への興味が薄れていきました』
『それから50年ほどたってまた魔族からの進行があり、今度は都市部…私がひそかに隠されていた場所に魔族が直接襲撃されることになり、地域一帯で壊滅状態に陥りましたがまたもや勇者がこの元凶を討伐し、一応は事件が収束しました』
「その時あんたはどうしてたんだ? 地域一帯ってことはその場所だって割れただろ」
『そうですね。ただし最初に見つかったのは魔族が生成したと言われるダンジョンのさらに奥…この場所に運びこまれたあとでした』
「…当時からこのカプセルにいたってことは…事件に紛れて脱出しなかったのか?」
『いえ、そうではありません。意識を失っていた私が目を覚ましてもすでに魔族に拘束された後でしたので』
……あー…読めた。元々おぼこだった私が~…というシナリオに基づけば、脱出したあっち側の時にはすでに魔力供給タンク―――つまりは魔力の「苗床」だったんだよな。そして供給された過分の「魔族の血」によって魔族に堕ち、怒りのあまりに最強最悪の騎士が誕生したってわけだ。そして感情が反転して憤怒の力を使って人を殺戮するだけの闇堕ち騎士化したのね。
ただ魔王の力が強すぎて最後まで一人では抗えず、意識を奪われて魔王の幹部と四天王に。最後に意識を取り戻して瑛士たちに事実を伝えたところで裏切りが露呈、瑛士たちの目の前で魔王からの罰により呪い殺される。
というところまでが、幹部戦での会話で再現されたシナリオとイベントだ。
この世界では無事に阻止できたため、人類側として抗えていると。
「勇者によって止められなかったなら魔族側に居ただろうけど、討伐が成功してこっち側にいる。でもそれならなぜまだここのカプセルにいるんだ?」
『答えは簡単ですよ。魔族を根絶やしにするため。ひいては「魔王復活の阻止」とこれ以上の「魔族を生まれさせないため」に繋がります』
『魔族を倒すには勇者の力が必要です。ただし勇者一人では絶対に勝てません。必ず仲間の力が必要なのです』
「……絆の力?」
『近しいですが、厳密には「希望の力」と言い、その力を経た勇者のみが魔王に抗える唯一の手段。それから幾度となく魔族が現れて勇者がそのたびに討伐する』
『しかしそれではいつまでたっても後手に回った状況を覆せません。それに過去には未熟な勇者が魔族に殺されることもありました』
『そのため、私は当時の勇者とそれをサポートしていたララ・リム・ルミナス・レティス・ローゼンデルクに伝えて、専用の施設を作ってもらい、魔族討伐の養成所を作るよう進言しました』
結果として今のルミナスができあがったと。
『そして私は地下深くで様子を見守りながら、勇者を待ち続けることにしたのです。これが勇者を探していた理由と、ここに閉じ込められていた経緯です』
前世とやや状況は異なるものの、理解は一応できた。
しかし…腑に落ちない点がひとつ。
「ここにいる経緯はわかったけど、ならなんでこの闇魔法はお前の根源と違うんだ?」




