エロゲ転生、アイを重ねないでくださいおねがいします死んでしま……
ある日~森の中~クマさ……
この部屋に充満している根源と闇魔法の性質が違うのはさっき闇を取り込んだ時に知った。ということは、目の前の女が力を失っていて、微弱な『魔王復活』の瘴気にすら抗えなくなってきていることも、あながち間違いではないと思う。
『まさか根源まで知っているとは…。でも先ほど魔族ではないと言いましたよね?』
「嘘はついてない。俺は正真正銘人間で、瑛士の兄貴分だ」
『……』
そう答えるとしばらく考えるように目を伏せた。果たしてなんの考えなのだろうかね。
その間に気になっていた周囲に漂う瘴気と闇魔法を調べるとするかな? 闇堕ちさえしなければこの女は間違いなく瑛士の強い味方になってくれるはずだ。そう思い少しずつ闇を取り込んでみる…が、魔族の血が内部で激しく暴れそうになった。どうやら微弱な闇を受け取り拒否している感じで、何かと押し返してはそのたびに魔力を暴走させようとしている節がある。
なら逆に闇を放出してみたらどうだろうか。辺り一帯が強い魔に支配されてしまえば蝕む原因が取り除けそうな気がするけど…果たしてカプセルのなかまで保証できるのかが問題だ。暴れだしたら目も当てられなさそう。
おとなしくかえでを待つのがよさそうだな…。
あいむ役立たず…。
『急に落ち込んでどうしたのですか?』
「いや、自分の力不足に嘆きたかっただけ」
『そうですか。忙しいのですね』
皮肉か? 皮肉なのか?
「それよりも、考えはまとまったのか?」
『…優月が人間であることを事実としても、やはり魔族よりも魔に長けているのが腑に落ちません。それこそ魔将レベルと言っても過言ではない力量で』
「俺はしがない英雄候補の兄貴分なんだけどなぁ…」
苦しい言い訳か? かえでが居たら「まあなんと白々しいのでしょう。名大根役者賞を数年連続で受賞間違いありませんね」と頓智と皮肉を織り交ぜてくれるはず。たぶん間違いじゃない。
『まるで自分はただの人間だと言いたそうな顔ですね』
「言いたそうなんじゃなくて言いたいんですわ、コレ」
『常識外の人間が常識を語るのはいかがなものかと思いますよ』
「常識外れの存在に言われちゃおしめぇだわ」
ひでぇやつだ。
『……あら。招待客がいらっしゃったようですね』
かえでか? それにしては早いけど…もしかして?
「たぶん知り合いかもしれないから、迎えに行ってきても?」
『いえ、その必要はありません。おそらく行っても無駄かと』
「……?」
目を閉じながらそう話すのは、諦め?
疑問に思いながら少しだけ待つと、ダンジョンを突破してきたソイツが部屋の壁を紫焔の炎で妬き尽くしながら入ってきた。
「優月様、お待たせいたしました」
「なんだ、早かったな。つかそれでお前が本気出したらこんな早いんか」
かかった時間は3時間も経っていないはずだ。移動はどうしたんだろう?
「私の最優先は優月様であって、それ以上がなければ以下はすべて塵芥も同然です」
「……言ってることはだいぶ物騒だけど、ありがとうな」
「いえ、もったいないお言葉です」
綺麗にスカートの端を摘まみカーテシーを決めるかえで。
だが今のかえではかえでであってかえでの姿ではない。
『……なるほど。そういうことでしたか』
「えぇ。ですが私たちはこちらでは初めましてでしょう?」
メルリアの形を成した魔王軍幹部がそこにいた。そして部屋の中に流れていた微弱な魔物の根源が消滅していった。
『……そうでしたね。初めまして名もなき少女。あなたの名前は?』
「初めまして。優月様の許嫁を務めます海空かえでと申します。以後お見知りおきを」
『……あぁ…上手い事やったのですね』
「なんのことかわかりませんが、あなたのお名前をお聞かせいただいても?」
『ええもちろんです。八重乃みやびと申します』
「わかりました八重乃さん」
な、なんとも白々しいやり取りだ。元々棒演技というか誰にも同じ姿勢を貫くかえではともかく、つながりを築くためにあえてしました感がする。
『ではかえで、あなたに問います。あなたの目的は何でしょうか?』
「どちらの世界でも優月様のおそばに仕えることです」
少し背筋が凍った…ような気がした。
『わかりました…では優月が世界を滅ぼすとしたら』
「優月様の思うがままに」
目をスッと細める目の前の女……みやびから表情が消えて怒りのような感情が現れた。それに対抗するようにかえでも怒りの感情が若干表現化する。
怒りと怒りのぶつかり合いで見ている緊張感が出てきたのだが……。
「今のあなたが何をできるというのですか? 優月様を害するなら殺しますよ?」
むしろ隣から発せられるじわじわと締め付けるような殺気のほうが怖いので、不快ではないがねばねばと狙われているような変な緊張感が出てきている。たぶん場違いだ。
『わかっています』
「ちなみに優月様のほうが私や八重乃さんよりも格上ですので、それもお忘れなく」
こちらを見てふんわりと口角を上げるかえでだが、そのヨイショも場違いだと言いたい。
『優月は魔族の血に耐えた人間…だけではないのですか?』
「優月様こそ私が探し求めていたお方です。生涯の伴侶だけでなくあの方に唯一対抗できる存在として」
『あなたの思いは理解しました。優月が人類の味方で居続ける限り、私も力を貸しましょう』
重い愛と思いあいがひとつになった瞬間だった。
『確かにあなたと優月の力があれば不可能とは思いませんが…その肝心の力はいかほどに』
指摘されたかえでは眉をひそめた。
「できれば今年中までに…」
『そうですか…私も力を貸すことができればよかったのですが』
安堵していたものの、すぐに意気消沈してしまう。
「優月様で最上位に耐えられたのですから、長い時を刻んだあなたなら耐えられるのでは?」
多分そういう理屈じゃないと思うんだ、俺。気絶してたから詳しいことは覚えてないけどね。
『私が持っているのは低級…大きく見積もっても中級。逆に血が足りず暴走を生ませることでしょう』
そう言って目の前に浮かばせたのは小指サイズも届かない魔族の角だった。
「その程度であれば私が使う予定でした角を使ってください」
『でもそれではかえでの力が…』
「かまいません。今優月様に必要なのは仲間とレベルアップですから、私のことは後回しで良いのです」
『…あなたに感謝を。そして望むならあなたと優月の仲間に』
「えぇ。八重乃さんなら是非に」
満足そうにうなずくかえでと目を伏せて感謝を捧げている八重乃みやび。正直何が何やら…状況についていくので精一杯だ。
そう言いながらかえではどこからともなく掌サイズの魔族の角を取り出して闇色の魔力を注ぎこんでからカプセルに押し付けて中に入れる。それを受け取ったみやびは一目してから俺をみた。
『優月…先ほどまでは失礼をしました』
「え? ああ構わんよ?」
これは何に対する謝罪なんだろうか。激しく嫌な予感がする。心の中のオタクも禿同してくれている。
『そしてもし私の力が暴走をしたら…止めてください』
「ああ。…え?」
聞き返す間もなくかえでから渡された角を受け入れて体の中に取り込む。
『………くっ、ガッ! あぁあぁぁあっ!』
なんともなかった雰囲気だがそれは一瞬だけで、発狂よりも咆哮に近い叫び声をあげたことでカプセルに亀裂が走り、悶絶しながらカプセルの中で暴れだし始めた。元々持っていた黄金色に近い魔力と黒い闇の力が溢れてせめぎあい、粒子となってオーラ化する。濁流となって可視化した粒子が暴走してカプセルが亀裂を広げて破壊した。
「八重乃みやび。魔に従わず意志ではねのけなさい」
懸命に抑え込んでいるみやびに対してかえでは語り掛けているが…説得が通じるのだろうか?
悔しそうに歯ぎしりをするかえでがこっちを向いた。
「優月様。お手を煩わせてしまい申し訳ございません。お力をお借りしても?」
「構わんよ。何をすればいいんだ?」
「ありがとうございます。部屋中に優月様の根源を流し込んでください」
「つまり満たせば良いってことか?」
「はい。全力でやっても構いません」
「オーケー」
かえでからの真剣なお願いなので、全力でやっちゃいましょうかね!
どーれ。
「【死の誓約】解放!」
『アァァァアアァアアアアァアァアァア!!!!!』
ユーフェウスの根源を放出するが、意識的に流すのは慣れてないので腹に力を入れて闇を外に追い出すイメージで黒い靄を外に流した。が……。
「……あれ? 根源って他人に知られちゃまずいやつじゃ?」
「知られても問題になるのはあのお方だけですがこちらに出てくることはありませんし、たかが有象無象の雑種共が優月様の御前にして耐えられるはずもありません。耐えられなければ死にますのでバレることはございません」
カエデ、スゥパァドラァァイ。
部屋の中を黒死の霧で満たしたところでふと思いだした疑問だったが、確かに問題はなさそう。みやびもユーフェウスの根源に耐えているところを見るに、すぐに死ぬことはなさそうだ。
…………あれ? 今何かが引っ掛かったような…? 今はそれよりも目の前のみやびだ。
『ガァアアァッ! ヅァ、アアァ! アァアアアァアアア…………』
悲鳴にも聞こえる絶叫からみやびを見ると姿こそ変わらないものの、闇の力に覆われようとしていた。
『メル…リア……ユヅ…キ……』
最後には声が落ち着きを取り戻したが…魔の力に取り込まれている。
『クッ………コノママ…デハ…アアァアアァァアア!!!』
意識は保っているが保つことで精いっぱいのようで魔の力の暴走までは抑えられそうにないみたいだ。
ってことは間違いなく……。となりのかえでを見るとこちらも闇の力を使っていた。
「なあかえで。あれ…俺にやらせてくれ」
「でも優月様…、いえ、かしこまりました。ご武運を」
何か言いたそうなかえでを瞳で制してから前に出て長柄の棒を産み出して握る。格上というか自分がどこまでできるのかを測るにはちょうどいい機会かもしれない。
「サンキュ。で、アイツは止めればいいんだよな?」
「はい。気絶させて頂ければ後は私にお任せください」
そういうことならいくらか楽だな。目の前の見た目だけは変化がないみやび…ではなく、赫灼刹騎ヤーバルハと対峙する。
こっちの勝ち目は間違いなく魔法戦で、相手の土俵である物理近接戦闘に踏み込むわけにはいかない。と考えていたところで意識を閉ざしているヤーバルハが距離を詰めてきた。
それなら…先手必勝!
「ぶっ飛べ! 【火の上級魔法】! 三連!」
火の上級魔法で近づいてきたヤーバルハを連続爆発に巻き込んで強引に距離を取った。
もちろんこれでダメージが与えられるわけではないが、こちらの敗北条件のひとつは超至近距離で戦うことだから、この距離を保って戦闘を続けなければならない。
圧倒的に格上との闘いは、爆発によって幕を開けた。
お久しぶりでございます。
生きてます。




