エロゲ転生、汚いなさすが忍者きたない
校門より入ってすぐ左手側。普通科の野球部がよく使っているグラウンドが、ルミナス学園で使用されている校庭だ。なんで野球部があるかって? 個別ルートの文化祭で野球部と勝負するイベントがあるからだよ。そんなことはどうでもいいんだ。
2限目に突入した俺は、更衣室内で長袖長ズボンに着替えを終えた後、待つ理由がないから先に校庭に向かっていた。後の面々は着替え中だったり談笑していたから、そのうちまとまってくる気がするが…。先にきたのは瑛士ではなく晴臣だった。
さわやかな笑顔を浮かべているのがなんとなく腹立たしい。
「おう、あの紹介でご満足かい?」
「あぁ、全方位に挑戦状をたたきつけた気分はどうだい?」
「最高でした、とでもいえば満足か?」
「さてな。みながどう受け取ったか次第ではないのか」
「お前にも同じこと言ってるんだけどな」
「別にどうとも思わないさ。アレくらい正面から啖呵をきって激高するなら貴族は務まらんよ」
……皮肉が通じない。暖簾だ暖簾、押しても意味ねぇ、不毛だ。
「ま、いいんだけどな。学園ダンジョン解禁されるまではおとなしく待つことにするさ」
「それがいい。ただ、おまえがどこでその情報を手に入れたかが気になるが、な」
……。
「……この学園に来ればわかることだろ」
「そうか。情報統制されたこの学園に初めて来た人間がどうやって知ったんだ?」
……。ガバった……。
そうだったわ。ダンジョンの情報は先生から教えてもらって初めてわかる情報じゃん……。そうでなきゃ瑛士がモノローグで「この学園にダンジョンが二つあるの?」なんて言わないわ。
「いや普通に気配で……」
「……ハッ」
「お前、なにわろとんねん。ドついてシバき倒すぞ」
身からでた錆…とまでは言わないけども、これで笑われるのは納得いかない。
どうやってハリ倒そうかと考えていると遠くから俺を呼ぶ声がする。そっちを向くと瑛士が黒い布を振り回しながら駆けてきていたところだった。なんだあの布?
「兄ちゃん! サポーター忘れてたよー!」
「ん? 腕のやつだよな?」
「そうそう! 廊下に落ちてたの! はい忘れ物」
「腕ならもうつけてるぞ? ほら……」
そう言って長袖ジャージの腕を捲って見せた。きちんと肌が見えない黒色サポーターをつけているのを見た瑛士は頭を傾げる。
「あれ? じゃあこのサポーターって……」
「ふむ…間宮兄よ、広げてみたらどうだ?」
「え?」
そう言ながら一歩引いている晴臣。なんとなくイヤな予感が……。
「瑛士、こっそり広げるんだぞ? わかったな?」
「わ、わかったよ!」
念のためにくぎを刺しておこう……。
瑛士がゆっくりと手元で開いていく。そこにあったのは……。
「わ、わぁぁっ!? ど、どうしてぇっ!?」
……真っ黒な……タイツだった……。
「……。ふぅ…瑛士、落ち着け。深呼吸だ」
「う、うん! すぅー、はぁー、すぅー、はぁー」
「タイツ持ちながら深呼吸するのはかなり危ない絵面だな」
「ぶはっ! ゲホッ、ゴホッ!」
「晴臣お前!?」
「なんだ? 事実を言っただけのつもりだが?」
「タイミングを考えろって言ってんだ!」
「にに、兄ちゃん!? ど、どどどどうしよう!?」
「うーん……まずは落ち着こうか」
だめだこりゃ。瑛士がかなりテンパってやがる。
………仕方がないな。
「とりあえず落ち着いたらその荷物をビニールの袋か何かに入れて事務室に落とし物として届けてこい」
「う、うんっ!」
「で、その時にちゃんと『男子更衣室の前に落ちてた』って言うんだ。そうすればお前は助かる(はずだ)」
「わ、わかった……い、いってくる…」
逝ってこい瑛士……。そして…悪いな……。
「……お前……義弟を人柱にするなんて最低な奴だな……」
「……じゃあどうしろってんだ…お前だって気づいてたじゃねーか……」
「……誰だって我が身は可愛いものだと思わないか?」
「……せやな。それは同意するけど、この件で瑛士がヤバくなったらお前も最後まで手伝えよ」
「……やむを得まいか……」
ここは一番被害が少なさそうな瑛士を犠牲にしてことをやり過ごそう。と、だいたい同じタイミングで晴臣も思ったようだ。だが逃げようとするのは問屋が卸さない。
地獄まで付き合ってもらうぜ?
「先ほど瑛士殿がコソコソしながら何かを隠しておったが……何か知っているかの?」
のっしのっしと後ろを気にしながらやってくるのは敦だ。なにやら気になるようだが…。
「トイレじゃねーの? さっきまでめちゃくちゃ緊張してたっぽいから」
「あぁそうだな。瑛士だって人間だからな、緊張の一つや二つくらいはするだろう」
ワイらはとっても仲良死! 死なばもろともやで晴臣!
「そうだったか。それは引き留めて悪いことをしたな…」
「それは後で軽く謝りゃ大丈夫だろ」
「だな、まぁ大したことではあるまい。友を気に掛けることをあいつも咎めることはせんだろう」
「……気遣い感謝する」
「ええんやで」
そうして先に出て行った瑛士がいないことを自然に流すことに成功する。ちなみに罪悪感は少ししかない。どちらかと言えば、今回は瑛士の運が悪かったのだ。そう、それだけの話だ。うむ。
何かあればちゃんと手伝うから……それで許せ。
そのあとに和樹が怠そうに、忍が神妙な面持ちで校庭に歩いてきた。なにやらめんどそうな気配……。
「のぉみなの者、一つよろしいでござるか?」
真面目な顔で問いかけてくる忍。珍しくまともな雰囲気をしているので先に校庭に集まっていたクラスの男子が忍の近くに集まる。
「またしょうもないことを言うのではないだろうな?」
「そんなことないでござる。拙者はいつも至極真面目でござるよ」
「……」
「なんでござるか。その目は」
呆れてるんだよ。
こいつが真面目な顔をして問いかけてくるんだ、きっと真面目なことなはずがない。大穴で昨日の件だが、まだ気づいてないはずだしここでいうこともないだろう。
「わかったでござる。では拙者が手に入れた情報をここで公開するでござるよ」
「情……報…?」
「……女子の体操服は…ハーフパンツでござる」
沈黙と静寂が場を支配した。
「見る点は、体操着の胸部とちらと見える腹部。そしてハーフパンツはうっすらと浮き出るショーツラインでござる」
そしていらない援護射撃でござる。
「さすが忍者。忍者汚い」
「優月殿。それは誤用でござるよ」
そういう意味じゃねぇよバカ。
「聞いて損した」 ←知っていた
「いつも通りで期待は裏切ってなかったがな」 ←いつも通りで逆に安心している
「ほら、解散だ解散」 ←無関心
「チッ、無駄な時間だぜ」 ←溜息が止まらない
「ちょ!? ちょちょちょちょ! 全員待つのでござるよぉぉ!」
全員が忍のそばから離れていった。
というか忍よ、それには一つを除いて致命的な欠点があるんだよ。例外はあるけども。
「あれ? みんな早いねー!」
「むっ! 来たでござる! ぬぁっ!」
胡桃を筆頭に女性陣が続々と集まってくる。光に群がる虫のように、とか表現したら女性から殺されそう。
「胡桃さん。女性のほうが時間かかるのは当たり前ですわ」
「えー、そうかなぁー?」
「そうですよ。昔から男の甲斐性というのもはそこで決まります」
「そうなんだー!」
「それは貴族社会の話だけな気が……」
「うーん。ボクはノーコメントで」
無邪気に登場して無自覚に忍を裏切る胡桃と、それを知っていて無視しつつ嗜める愛莉栖お嬢。
本物の貴族からの説明になんとなくわかったような顔をする胡桃。そしてそれを察した桜は疑問を呈してせせりは逃げた。
そしてさりげなく貴族講義が始まり、胡桃がへー! とかほーん? みたいな相槌を打っている。逃げ遅れたな。
「な……なぜ皆は長袖なのだろうか……くッ!!!!」
「まだ春だからじゃねーの? お前も長袖だろ」
「そうでござった……盲点でござったよ……」
こんな寒い中誰も半袖にならんでしょうよ……。長距離とかならアレだけども……この時期で半袖にはまだなりそうにない。
「優月様」
「あん? どうした?」
そして同じ長袖組のかえでが耳打ちしてくる。どないしたんや。
「先ほど校内で黒タイツが盗まれた、という噂話を耳にしましたので」
瑛士死んだな。
「あい。関係ないとは思うけどわかった。ほかにも何かあったらよろしく」
「かしこまりました。ちなみに犯人は優月さんで?」
「一度たりとも黒タイツに欲情したことはない」
「……さようでございますか」
なにが悲しくて幼女たちの黒タイツで興奮しなければならないんだハスハス。
「……ところで瑛士さんは……」
「……そういうことだ。多分巻き込まれるぞ」
「……………………………………かしこまりました……」
ここまで理解したくないという感情を飲み込んだかえでを俺はまだ見てない。
「……晴臣は協力者だからうまく使え」
「ありがとうございます……」
久しぶりに嫌そうなありがとうございますを聞いた。ということで晴臣と瑛士、あとはがんばれ。
「ただいま~。……兄ちゃんにかえでさん、どうしたの?」
「あーっとだな、特に何もないぞ」
「そうですね。ただの世間話ですね」
「それよりもちゃんと逝ってきたか?」
「え? うん行ってきたよ!」
「…………そうか……」
ご愁傷様。グッバイかえでと晴臣と瑛士。
「はぁ~い! みなさん集まりましたねぇ~? ではこれから、体力テストをはじめまぁす!」
混沌と混沌と歓談のなか、なぜか半袖ハーフパンツの体操服に着替えていた美鈴先生が登場した。
いや、ね? なぜか立ち絵で用意されていたからアレだなぁっては思ってたけどさ? うん、ね? もうちょっと…こう。ごちそうさまでした。
次からは体力テスト(実写)シーンです。




