獣人の二人#02
「それは本当なの?」
「本当だよっ!」
疑問を浮かべるライカに対して、食い気味で答えるリーンの様子からは必死さを感じることが出来る。
ただ先ほど現国王と元国王に会って話をした二人にとっては真実味に欠けていた。
そういった素振りは一切感じることが出来なかったからだ。
それに暴行を受けているのが全員ではないにしても、目の前にいる二人に目立った外傷もなく綺麗すぎる。
それに不自由をしている様子も伺えないため、信用するには情報が少なすぎる。
「話は分かった」
「それじゃ…!」
「悪いが手を貸すことはできない」
「っ! どうしてですか!」
声を荒げるレイに対して、あくまでも冷静に隼人は話を続ける。
「まず第一にお前たちの目的がわからない。話から察するには今の状況を変えてほしいということなのだろうが、それは俺ではなくハビエルがどうにかしないといけない問題だ。部外者である俺たちが、国の問題に口出しすることはできない。それが人間以外の異種族と呼ばれる、魔王側の種族であってもだ」
「どうして…」
落胆する様子を見せるレイに対して言葉を続ける。
「俺は確かに魔王で、お前たちのような人間とは違う種族を守る立場にあるのは間違いない。だが今のお前たちを信用するには情報が少なすぎる。隠し事をしている奴のいうことを信じて動くほど、魔王もお人好しじゃない」
ライカに声をかけてその場を離れる。
レイとリーンは下を向いたまま動こうとしない。
「ライカ飛べるか?」
「どこへいくの?」
「魔王城だ」
ライカは返事をして姿を純白のドラゴンへと変える。
その姿は何度見ても綺麗だ。
隼人が背中に乗ったのを確認したのちに、大きく羽ばたき魔王城へと向かう。
「やっぱりダメだったじゃん」
「うまくいくと思ったんだけどな~」
二人が立ち去った後にレイとリーンは話を始めた。
先ほどの様子とは打って変わり、あっけらかんとしている。
「というか、本当にあいつが魔王なの? そうは見えないぐらいに弱そうだったけど」
「『俺は確かに魔王で、お前たちのような人間とは違う種族を守る立場にあるのは間違いない』」
「ぷっ! うはははっ! そっくりじゃん!」
「だろ? あはははっ!」
砂漠に二人の笑い声が木霊する。
「とりあえず、クラウディア様に報告しないとね」
「魔王を名乗るハヤトという男と」
「アークドラゴンのライカ」
「ハヤトって男は問題なさそうだけど、ライカだけは放っておくと厄介だからね」
フレムノ王国で災禍の炎が燻り出していた。




