堕ちた都~ミストセルラル~#02
ミストセルラルは海に囲まれた孤島だ。
その近辺には複数の孤島があり、その全てを合わせてミストセルラルと呼ぶらしい。
大陸からは大きく離れているわけではないが、禁足地として取り扱いをされている。
多くのドラゴンが住む場所に足を踏み入れる、そんな物好きもいないとは思うが。
ライカを休ませている孤島はミストセルラルの中でも一際大きい孤島だ。
到着前に見た悲惨な光景が、他の孤島でも起こっていると思うとグレイヴッツの奮った猛威は相当だろう。
「この島の中でドラゴンたちが傷を癒す場所や、そういった効果を持つ物はないか?」
「『安息地と呼ばれる場所なら何カ所かありますが、その全てが身を隠すためだけの場所です。今回のようなこともあり、傷ついたドラゴンたちはそこへ集まっていると思います』」
「そうか…」
あくまでもドラゴンに不思議な力があるというのは勝手なイメージである。
勝手に理想を抱いて、それを砕かれて落胆する隼人。
勿論他の種族と比べるのであれば長けているのかもしれないが、傷を一瞬で癒すような特効薬などは竜の都と言われる地でも存在はしない。
「『どうしますか? 立ち寄られますか?』」
「…いや、やめておこう。それよりも宮殿のような場所はないのか?」
「『王が身を置く場所ですか』」
「もし可能なら見ておきたい」
「『可能ですが、その王はもういませんよ』」
「別にいいさ。王様に挨拶をしようってわけじゃない」
「『…わかりました』
サラマンダが方向を変えた瞬間に、その場所を確認することが出来た。
普段はなにも気にしない風景でも、目的が重なったときにその存在にすぐに気付く。
「もしかしてあそこか?」
「『そうです。この島の森林地帯の中でも一際深い森林地帯、ヴェノワール森林です』




