強者#01
「はぁはぁ…」
「どうしたの?さっきまでの威勢がないけど」
「ちっ!」
明らかに状況はライカが優勢である。
今まで本気で戦う姿を見たことはなかったが、竜帝と呼ばれ最強と謳われるのも頷ける。
一瞬で間合いを詰め、一撃一撃が重い。
それでもってグレイヴッツはライカの動きをしっかりと追うことが出来ていない。
「すごいな」
「ライカ様に敵う相手自体がそもそも少ないのです。私もライカ様と本気で戦ったとなれば、どちらか勝つかわかりません」
「そうか」
ライカの実力も驚きだが、ベルザも同じぐらいの力を持っていることに少し動揺する。
魔王でありながら、部下の位置づけになる二人より弱いのだから、隼人自身もいろんな意味で焦ってしまう。
「さっさと終わらせて、知っていること全て喋ってもらうよ」
気付けば間合いを詰め、的確な一撃を放つ。
ギリギリで防御態勢を取ってはいるが、ダメージは確実に蓄積されている。
「くっ…!」
「反撃する余裕もないみたいだね」
少し距離を取ったライカが右の掌を空に向ける。
「我の名の下に命ずる。天の裁きとしてその姿を具現化し、仇なす者の身を穿ち斬り裂け」
ライカが唱え始めると黒雲が空を覆い始める。
「何をやっているんだ?空がどんどん曇っていく…」
「魔王様、こちらへ」
ベルザのほうへ駆け寄り、立ち込める黒雲を見上げる。
「ベルザあれはなんだ?」
「以前、魔法は魔力と引き換えに精霊の力を借りている話をしたと思います。ただ一部の魔法は魔力だけではなく、その術者の名前を媒体とすることで使うことが出来るものがあります。私もライカ様のこの魔法は過去に1度しか見たことはありません」
「名前を媒体…?」
これまでの魔法の概念と少し異なる。
ただベルザとライカに施している封印術も、言葉に魔力を乗せて発動させている。
その点だけを見れば、通常の魔法の発動条件にプラスの要素があるだけで基本は同じなのかもしれない。
「くそっ!」
グレイヴッツが困憊しながらもその場から離れる。
「逃がす訳ないでしょ」
ライカが手を振り下ろすと一瞬で周辺が白い光に包まれる。
その一瞬後に落雷の衝撃と耳を劈く轟音が突き抜ける。
「雷翔ミリシア」




