失ったもの#01
「ライカ様の…?」
「お前が私の兄?」
「(どうも様子が変だ。兄と名乗るこいつも、ライカの反応も。それにローブと現れたタイミング。)…なぁ、そのライカのお兄さんとやらがなぜこんなところにいるんだ?」
「可愛い妹に会いに来たんだよ。って言えば信じてもらえるのかな? そもそもアンタは確証があるんだろ?」
「あぁそうだな。ベルザ、ライカ。こいつが今回の元凶だ」
隼人は身構える。それに合わせるように2人も警戒をする。
「まぁ待てって。先にサラマンダの言いかけていたことの話をさせろよ」
「否定はしないんだな」
警戒を解くことのない3人を見渡しながら、軽く呆れた様子を見せ話を始める。
「赤竜たちの住処、ヘブルレイズはなくなった。いや正しくは住まう場所ではなくなったが正しいか」
「どういうこと?」
ライカが聞き直す。
「ある時、ヘブルレイズを襲った人物が居たんだ。もちろん抵抗をしたがほぼ壊滅状態。今は赤竜たちも存在が僅かになっている。その1匹がこのサラマンダだ」
「本当なのか?」
「『はい。なので私たち赤竜は場所を移し隠れながら暮らしています』」
「なぜ隠れているんだ? ミストセルラルへ移り住めばいい。そのための都だ」
「『ミストセルラルは…』」
「ミストセルラルもなくなった」
「なくなった…?」
ライカの表情に動揺が見て取れる。
「そんなはずはない! ミストセルラルがなくなった? 冗談も休み休みにしろ! そもそもミストセルラルは竜族しか…!」
言葉に詰まり、何かに気が付く。
そして相手をじっくりと見ながら質問をする。
「レザヴィリオとウィリリアは?」
「先代を守りながら死んだよ。もちろん先代も死んだ。それを守ろうとした多くのドラゴンたちも」
「レジィ、リリィ…」
ライカが俯き小さく言葉を漏らす。
「まさかレザヴィリオ様とウィリリア様が」
「ベルザは知っているのか?」
「えぇ、一度だけですがお会いしたことがあります。それこそ初めてライカ様とお会いした時です。お二人ともライカ様同様に先天性の持ち主でした。ミストセルラルは竜の都と言われおり、ドラゴン以外は近寄ることが出来ず、各種族のドラゴンの中で、一族を統べる力を持つ者がその地を護っているそうです。レザヴィリオ様は黒竜のウィリリア様は赤竜を統べる力をもっておられました」
「その二人が死んだって、それにミストセルラルを襲ったやつは同族だっていうのか?」
「後天性…」
ライカが口を開く。
「後天性は先天性と異なり、得た力の影響をその身に受ける。レザヴィリオは漆黒よりも深い角を持ち、ウィリリアは業火よりも紅い瞳を持つ」
「漆黒の角と赤い瞳…」
隼人が何かに気付く。




