失ったもの#02
「ライカ。お前がミストセルラルを捨て、魔王の傘に入ったことによりこの惨劇は生まれたんだ」
「私はミストセルラルを捨てていない!」
「ではなぜ、魔王の傘に入った? お前がミストセルラルに居れば、こんな惨事は起きず防げたかもしれない。どの種族よりも強大な力を持つ、アークドラゴンであるお前がいればな」
「私は自分が見定めた者の下へ付いただけだ。それは一族を、ミストセルラルを捨てたわけではない。ミストセルラルを護るうえで必要だと考えた結果だ!」
「でも実際はどうだ? ミストセルラルはなくなり、親しき者たちも殺された。護るものはもうなくなってしまったぞ?」
「それは…っ!」
「それだけの力を持っていながら、うまく使う術も知らないとは。なぜお前が先天性を持ち生まれ、この俺が持たずして生まれたのか。お前を見ていつも憎くて仕方がなかった。お前はそんなこと感じてもいなかっただろうがな。でも感謝もしているんだ。お前がミストセルラルを捨て、魔王の傘に入ったことで俺はこうして力を得ることが出来た。」
「ライカ、もうわかっているんだろ?」
隼人がライカの隣まで行き声を掛ける。
「…うん。」
「五風封印の内、何個だ?」
「3つ」
「わかった」
隼人がライカに触れ、解印を唱え始める。
「アンタが誰かなんてもうこの際どうだっていい。ただ一族を危機に陥れる存在だっていうなら、私はその存在を許さないだけ。それが例え私の兄だったとしても」
「だった、とは寂しい口ぶりだ。それに俺にもグレイヴッツって名前があるんだぞ? まぁこちらとしてもライカに用があって、ここまで大掛かりにやったんだ。やる気がある分には大歓迎だ」
「ではやはり、貴方なのですね。サラマンダもこの霧も」
「へぇ、この霧のことに気付いていたやつがいたなんてな。この霧には惑わしの効果があって、普通の奴らは目的地にたどり着くことすらできない。だからこそ、ドラゴンを察知することが出来るライカだけをここに呼び出すことが出来る。そのためにサラマンダを利用させてもらった。ライカが各地にいるドラゴンを守っているという話を、魔物がしていたのを聞いたからな」
「ライカ様を呼び出してどうするおつもりですか?」
「殺して力を奪うのさ。そのためにヘブルレイズもミストセルラルも潰したんだからな」
「その力を持って一体何をするおつもりですか?」
「…質問が多いな」
グレイヴッツを疾風の刃が襲う。
「それ以上は喋らなくていいよ。嫌でも全て喋らせてあげるから」
ライカに施された5つの内、3つの封印が解かれた。
封印が解かれたことによる、見た目こそは変化がないがこれまでとは明らかに魔力の質が異なる。
「魔王様、ベルザ。わかっていると思うけど」
「あぁ手出しはしない。ただどうしてもという時は許せよ」
「それじゃ、落とし前を付けさせてもらうよ」




