プロローグ
異世界召喚ファンタジーものです。
出来るだけ設定に矛盾がないように努めていきます。
不定期更新となりますが、それでも愉しんでいただけたら、と思っています。
ある日、学校の一室に6つの人影があった。
それなりに都会にある進学校。
スポーツも盛んで、勉強も有名大学に何人も輩出している名前がそれなりに知られている学校である。
その生徒が6人、大画面モニターがある視聴覚室に集まっていた。
背が高く、薙刀部に所属しているメガネをかけたスポーツマン。 古室 雄也。1年生。
背が低く、少しとぼけた顔をしている天然系遅刻魔。 大塚 大樹。1年生。
太り気味だが、見た目に反して活発的な楽天家。 九条 昌人。2年生。
唯一の女子。成績優秀で見た目はクールビューティー。 神近 知枝。2年生。
中肉中背、パソコン同好会に所属しているクールな知識人。 榊 耕介。3年生。
そして、黒板の前に立つ、色白ではあるが彼ら5人をまとめる一年留年の最年長。 松永 健治。3年生。
彼、彼女らは全員…………オタクである。
「さて、みなに集まってもらったのは他でもない。これを見てくれ」
だがそこは、黒のカーテンで光を遮った視聴覚室。
健治が手に掲げたものが暗くてよく見えないので、3人掛けの机それぞれに座っていたメンバーは立ち上がると、健治の周りへと集まった。
「なにこれ?」
「ゲームのパッケージ……ですか?」
「もしかして、新作のエロゲ?」
「へー」
昌人、雄也、大樹、知枝はそれぞれの感想を口にする。
唯一、耕介は視線を向け、興味なさそうにそっぽを向いた。
それぞれの反応を愉しんだ健治は、口元を緩める。
「今月の新作だ。今回はこれを題材に語っていこうと思う。ここに人数分用意した。持って行きたまえ」
そう言って横にあった不自然に盛り上がっている布を取っ払うと同じゲームの箱が5つ、下に3つ上に2つと綺麗に積まれていた。
全員それを手に取って、内容を確認する。メンバーが気にするものは2つ。
それを確認するべく、パッケージの文字へ目を走らす。
『
タイトル : 悠久の調べ ~世界の理と俺の理性が崩壊するとき~
ジャンル : ラブイチャ異世界召喚ファンタジーSLG
』
シリアス風味かと思われたそのタイトルだったが、サブタイトルで完全に意図が分かってしまう。
普通の人ならため息をついたり、書かれている言葉に嫌悪感を示す場面ではあるが、残念ながらここにいる人は普通ではなかった。
「いいね」
「久々のRPGものですか」
「僕頭を使うゲーム苦手だお」
「う~ん……やり込めればいいんだけど」
箱を片手にそれぞれ感想を言い合う4人。
その隣では耕介がパッケージを見つめてニヤリと口元を歪ませる。
「まー今からとりあえずオープニングムービーだけでも見ようか。なにせ、みんな平等に始めるために俺もまだ何もやってないんだからな」
そう言いながら、健治が自分の鞄からノートパソコンを取り出す。
接続頼めるかと耕介に伝えると、静かに頷いた耕介は視聴覚室特有の大画面モニターにノートパソコンを繋いだ。
そして、昌人が3つある机の左側の机に座ると、真ん中の机には耕介、大樹、雄也が。右の机には知枝が、先ほどのバラバラになっていた時とは違い、最前列の席に行儀よく並んで座った。
「よーし、それじゃ始めるぞ」
まるで教師が授業を始めるように、教卓側の黒くて広い机のど真ん中に陣取っていた健治はパソコンのインストールボタンをダブルクリックした。
大画面モニターに、インストール画面が映し出される。
「インストール画面は普通だね」
「プログレスバーもっと可愛く出来ないのかなー?」
雄也と大樹の一年生コンビは目の前の状況を素直に分析して感想を呟く。
「どんなゲームなんだろーなー」
「途中で飽きなきゃいいけど……大丈夫かな」
昌人と知枝の二年生ズはゲームの内容に考えを向ける。
「…………」
「ふぁー……ねみぃ」
三年生の二人はそこまで興味がないようで、インストールが終了するのを待っている。
そして…………インストールが終わり、ゲームを起動すると、
『ま~ぶるそふとっ♪』
「タミハスキタコレッ!!」
制作会社のコールが視聴覚室に流れた時、耕介が立ち上がった。
「あ……」
しかし、すぐに全員の視線を受けた耕介は咳払いすると、すぐに座リ直す。
好きな声優が出れば誰しもが同じ反応する。今回はたまたま耕介が好きな声優が出た。それだけだった。
それが誰にでも起こり得る事なので笑う人はいない。
「耕介ー。落ち着けってー」
健治ただ一人を除いては。
そうこうしている内に、オープニングムービーが流れだす。
ゲーム特有の青や緑、桃色の髪をした女の子たちが魔物相手に戦い、栄えた町では筋肉質のおじさんが炉を背景にして笑顔を見せ、城にいる王様や姫が映り、空を翔るドラゴンの背に乗って暗雲立ち込める山へと向かう女性たちが流れると、タイトルがゆっくりと浮かび上がってオープニングムービーの終了を告げた。
「オープニング曲いいねーいいよーこれは期待できるわー」
昌人は一人曲に酔いしれる。
「俺は青髪だなー」
雄也はすでにヒロインの目星をつける。
「綺麗な絵だったーこれなら飽きないかな?」
絵を評価するのは知枝。
「んー……エロいのはオープニングムービーにはないのかー。まぁ、いいんじゃないの?」
あまり琴線に触れなかったのか、歯切りの悪い反応を示すのは、大樹。
「タミハスはどのキャラだ? タミハスは攻略できるんだろうな? タミハス早く」
と、小声でブツブツ言っているのは耕介。
そんな全員の様子を見て、健治は満足そうに頷いた。
よーし、と健治は立ち上がると全員を見渡す。
「このゲームを気に入ってもらえたかな? それじゃ各自帰ったらすぐにやるよー…………に?」
不意に、健治と5人の間──2つの机を分かつ通路上に光が瞬いた。
誰もが一瞬気のせいかと思ったが、最初は薄く光っていた『それ』は、次第に明暗を増していき、やがて強い光を放つ。
部屋を暗くしていたせいで、全員がその眩しさに耐えられず、一様に目を閉じて光を遮るように手をかざした──その時だった。
『見つけた!』
全員の耳にその声が届いた瞬間、まるで爆発するような一際眩い光が視聴覚室を包み込んだ。
そして、正体不明の光がその明るさを収束させると、そこには6人の姿はなく、ノートパソコンと鞄だけが暗い部屋で静かに佇んでいた。
まずはほんの触りのプロローグです。




