第四十四話 観測者の上
“別の目”。
それは、観測者たちより遥かに巨大だった。
空全体を覆うほどの瞳。
観測者たちが、一斉に動きを止める。
「上位権限確認」
レンの顔から血の気が引いた。
「……嘘だろ」
先行保持者も絶句する。
「なんで出てくるんだよ……」
悠真は空を見上げる。
巨大な瞳。
その視線だけで、世界が軋む。
今までの観測者が“管理者”なら。
これは違う。
もっと根本。
“観測そのもの”。
結衣が小さく呟く。
「……見つかった」
その瞬間。
巨大な目が、悠真を見た。
視線が触れた瞬間。
悠真の脳へ、“世界の始まり”が流れ込む。
最初。
何もなかった。
空も。
世界も。
人も。
ただ、“観測”だけが存在していた。
観測することで、世界は生まれる。
誰かが見る。
認識する。
記録する。
その瞬間、存在が固定される。
逆に。
誰にも観測されなければ、存在は消える。
それが、この宇宙の根本法則。
そして。
“最深部”は、その外側にいた。
観測されないもの。
だから存在できないもの。
なのに。
悠真が、それを“認識してしまった”。
巨大な目が、静かに瞬きをする。
次の瞬間。
“最深部”が苦しみ始めた。
黒い右腕が暴走する。
悠真が膝をつく。
「あ゛……ッ!!」
結衣が抱き支える。
「兄貴!!」
頭の奥で、“最深部”が叫ぶ。
「見るな」
「あれを見るな」
だが止まらない。
巨大な目を見た瞬間。
“最深部”の輪郭が、崩れ始めていた。
レンが目を見開く。
「観測されてる……!」
先行保持者が息を呑む。
「存在固定が始まったのか……!?」
“最深部”は、観測されないことで存在していた。
だが今。
“上位存在”に観測された。
つまり。
存在を固定される。
“曖昧でいられなくなる”。
黒い太陽が激しく脈打つ。
空間が崩壊する。
“最深部”が怒り狂っていた。
「やめろ」
「私は定義されない」
巨大な目が静かに見下ろす。
その瞬間。
“最深部”の姿が、一瞬だけ見えた。
黒い人影。
そして。
その顔は。
“神崎悠真”だった。
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