↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/8

第二話:終末の堕天使

カイリ

(最悪だ)


もう何度目かも分からない溜息を心の中でつく。

カイリの担当囚人は番号0。


あの"終末の堕天使"だ。


カイリ

(ほんっとうに最悪だ…)

(母さんが知ったら心配するだろうな…いや、大笑いするだろうな、あの人なら)

(というか何故 新人の僕が担当なんだ?)

(こういうのはもっとベテランが担当すべきなんじゃないのか?)


そんな事をぐるぐると頭の中で考えては頭が痛くなってくる。

目の前を歩く看守長の背中を睨みつけても何の意味もない。


彼の独房は一番奥深く。

看守長の後に続いて、螺旋階段を下る。

螺旋階段の周りの壁には沢山の牢があり、その中には様々な罪を犯した囚人達が収容されている。

彼らは皆、天界で罪を犯した堕天使たちだ。


仲間殺しの罪、人間攫いの罪、神に背いた罪

嘘をついた罪、誰かを犠牲にした罪

愛してはいけない者を愛した罪―…


カイリ

(僕が把握していないだけで、他にも数えきれないほどの罪と、その数だけの囚人がいるのだろう)


こちらをじっと睨みつけるような視線を浴びながら、

階段を一段ずつ、コツコツと靴を鳴らしながら降りていく。

降りるごとに海の黒が濃くなる。

窓の外にいる光るクラゲと、螺旋階段についている水色の蝋燭のみが唯一の明かりだ。


何分経った頃だろうか。

看守長がピタリ、とその足を止めた。


看守長

「着いたぞ津島」


そこには大きな鉄格子の扉。


看守長

「この先にはお前ひとりで行け」


カイリ

「ぼ、僕ひとりですか…?」


看守長

「ああ、そうだ。ひとりだ」

「いいか。ヤツに何を言われても無視をしろ」

「お前はただ、看守としての勤めを果たせばいい」

「決して絆されるな」


「―死にたくなければな」


ギィ…と耳が痛くなるような音を立てながら、その扉が開く。

"この先に入ってしまったら、きっともう元の生活には戻れない。"

そんな危険信号が頭の中で鳴り響いた。


カイリ

(看守が囚人に怖気づいてどうする…!)

(しっかりしろ、僕…!)


両の頬を手で軽くたたき、自分に喝を入れる。

ゆっくりと、その扉の中に足を踏み入れた。


扉の先、突き当りに牢屋はあった。

他の囚人とは違い、二重構造になっているのは、それほど彼が危険だという証なのだろう。


ごくり、と唾を飲み込みながら、ゆっくりと歩みを進める。


?

「新人さんですか?」


カイリ

「!」


唐突に牢屋から男の声がした。


?

「ああ、驚かせてしまってすみません」

「さあ、もっとこちらへ。互いに顔を見せ合いましょう」


透き通った、ガラスのような綺麗な声。

けれどその声には何か、蠱惑的な雰囲気が纏わりついている。


カイリ

「……」


カイリは一歩、また一歩と牢屋へと歩みを進めた。


?

「やあ、初めまして。新人看守さん」

「私は囚人番号0、シャムと申します」

「まあ、こんなところにいたら名前なぞ不必要なものかもしれませんがね」


挿絵(By みてみん)


そこにいたのは、銀色の長髪が特徴的な一人の大男だった。

身長は軽く2mあるのではないか、といったところだ。

金色の瞳が、影の中でぼやりと光っている。

まるで獲物を待つチョウチンアンコウのよう。


カイリ

「ぼ、僕は津島カイリ…です」


(…って、僕はなに下に出ているんだ!)

(看守は舐められたら終わりだ…!)


「ゴホン、津島カイリ、だ」

「ここでは名前なぞ不要だ。不要な私語は慎むように、囚人」


シャム

「おや、つれないですね」

「カイリくん、ですね。可愛い名前じゃないですか」


カイリ

「…な!!」

「貴様、ふざけているのか!ぼ、僕は看守だぞ!!」

「舐めた口をきいていると痛い目に合うことはわかっているだろうな!?」


シャム

「おお、こわいこわい」

「すみません、一人で退屈していたもので…誰か来てくれて嬉しかったんです」

「ついこの間、看守さんが…」




「死んでしまったものですから」


沈黙。

冷や汗がたらり、とカイリの頬を伝った。


カイリ

(……死んだって、噂は本当だったのか)


「お前が、殺したのか、…?」


シャム

「さぁ、どうでしょうね?仲良くなったら分かるかもしれません」


シャムは立ち上がり、鉄格子の前までやってくる。

そして


ぐあっ、と腕を伸ばし、カイリの胸元を強引に掴んで引き寄せた。

鉄格子を隔てて、目と目が至近距離で合う。


シャム

「これからよろしくお願いします、カイリくん」

「キミは死なないでくださいね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。