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9・イケメンすぎる転校生


キーンコーンカーンコーン。

朝のホームルームの時間になり、零の担任の先生が教室に入ってきた。

「みなさん、おはようございます。早速ですが、今日はビッグニュースがあります」

先生は少し口元を緩ませながら、嬉しそうな様子を隠しきれないでいる。

その様子を見て、零は固まった。

(まさか、ツキのクラスって……)

零は周りには悟られないようにしながらも内心焦っていた。そんな零を他所に先生はどんどん話を進めていく。

「このクラスに転入生が来ます!」

「おー!!」

クラスメイトは転入生が来ることを知らなかったため、一気にざわざわとし始めた。

「男子と女子どっちかな!?」

「俺、女子に1票!」

「俺も、女子がいいから女子に1票!」

男子か女子かで盛り上がるクラスメイトを横目に、零は静かにはっと息をこぼした。

(男子たち、女子だよ……。確かに女子だけど、皆の思うような女子ではない……)

先生自身も少しハイテンションだが、クラスをまとめないといけないため、頑張って平静を装いながら声を上げた。

「はい、静かに! それでは、教室に入ってきてもらいましょう。さぁ、美城さん教室に入って!」

ガラガラ。

その人物が入ってきたとき、零以外の生徒全員がその美しさに固まってしまった。

「初めまして。美城ツキです」

ツキが静かな落ち着いた声で挨拶したとき、生徒たちはハッとして驚きの歓声をあげた。

「えっ……えーーーーーー!?」

「い、イケメン……!!」

「うそ!! ツキってあのアクロスのツキ!?」

「ヤバくない!? 芸能人じゃん!! てか、美しすぎ!!」

女子たちが大騒ぎしている一方、男子たちは戸惑いが隠せなかった。

「えっ、めっちゃ綺麗な男……? じゃなくて女子なのか……?」

「俺、この人テレビで見たことある……! えっ芸能人が転入してきたってこと?」

「やば、まじで顔の整い方がレベチすぎる」

クラスの騒ぎようを見た先生は、手をパンと叩いてクラスを静かにさせた。

「はい! 騒ぎたくなるのもわかりますが、一旦静かに! えーそれじゃあ、美城さん。自己紹介をお願いします」

ツキは教卓の前に立ち、みんなの方をまっすぐ見た。

「改めまして、美城ツキです。この様子だと、僕のこと知ってくれてる子たちもいる感じかな? 僕は男装アイドルグループ、アクロスのツキとしても活動しています。諸事情あって、この学校に転校してきました。みんな、仲良くしてくれると嬉しいです」

ツキが自己紹介を終え、綺麗なお辞儀をすると、クラスの生徒から歓声があがった。

「あと1つ、みんなにお願いがあって、僕の学校での様子を写真に撮るのは無しでお願いします。本当は思い出として写真を撮ったりしたいんだけど、事務所の方針でプライベートの写真があがるのは絶対ダメという決まりがあるから、みんなも協力お願いします。その代わり、写真がなくてもみんなと思い出をたくさん作りたいから、これからよろしくね」

「みんな、美城さんがクラスに来て嬉しいのはわかるけど、約束忘れないようにね! じゃあ、美城さんは東雲くんの後ろの席ね。東雲くん、美城さんに色々教えてあげてね。じゃあ、今日の朝のホームルームはこれでお終いです!」

そう言うと、先生は教室の外に出ていくかと思われた。……が、なぜかスタスタとツキの元へと歩いていき、色紙とペンを控えめに差し出した。

「……?」

「み、美城さん……。デビューしたときからずっとファンです……! サインください!!」

いつもテキパキとしていてオタクとは無縁のような先生がまさかのアクロスのファンだと知り、クラスの生徒たちは驚きの声をあげた。

「せ、先生!?」

ツキは差し出された色紙とペンを受け取り、サラサラと慣れた手つきでサインを書いて、王子様スマイルを浮かべながら先生に渡した。

「いつも応援してくれてありがとうございます。これからもしっかり見ていてくださいね」

「は、はい……!!」

顔を赤らめながら、先生は大事そうに色紙を抱え教室を出ていった。

「せ、先生が乙女だ……」

クラスの生徒も今まで見たことのない先生の一面を見て、目をぱちくりさせた。零ももちろん驚きを隠せなかった。

(まさか、先生までファンだったとは……。アクロスすげぇな……)

先生の衝撃の事実を知り、アクロスの人気度を改めて自覚していると、後ろの席に座ったツキが声をかけてきた。

「零くん」

鈴のなるような声で自分の名前を呼ばれた方向へと零は顔を向けた。

「学校でもよろしくね」

「……!」

後ろの席から耳元で囁かれ、零はビクッとした。

そんな零の様子を見て、ツキはクスッと笑った。

「大丈夫、私たちの関係のことは上手く隠すから」

「ほんとに大丈夫か……?」

どこか楽しそうなツキを見ながら、零ははぁとため息をついた。

ふと顔を上げると、零とツキの机の周りに人だかりができていた。人だかりは主に女子の割合が多く、男子はツキのイケメンぶりにまだ戸惑っていたため、遠くから眺めている。

「あ、あの! 2人は知り合いなんですか?」

早速、1番聞かれて困る質問がきた。

「うん、零くんとはこの前知り合ったんだ」

「ちょっ……!」

ツキがあっさり知り合いだと認め、零は焦った。

だが、ツキは全く焦りを見せず言葉を続けた。

「実は僕たちの両親が知り合いでね、そこで友人になったんだよ。まさか、同じ学校で同じクラスになるとは思ってなかったけどね。世の中不思議なことがあるんだね」

(よくまぁそんなスラスラと嘘が……。クラス一緒なのもなにか手回してるよな絶対。でも話合わせるしかないか)

胡散臭さを隠しながら、零もツキの話に合わせた。

「そうなんだよ。ほんとに最近知り合ったんだ。俺もまさか同じクラスになるとは思ってなかったよ」

ははは、と笑いながら誤魔化し、上手く話を合わせて婚約者だということはバレないようにできた。

だが、もう1つ零にとって驚きの出来事があった。

(てか、女子からこんな風に話しかけてくるの初めてじゃないか? 俺、なんか遠巻きにコソコソ言われること多かったし)

そう。零は女子と会話したことがほとんどなかったのだ。理由は簡単。零がアイドルレベルでイケメンすぎるのである。そのため、零のかっこよさに女子が近づけなかったのだ。コソコソ言われているのは、ただかっこいいやらイケメンやらと褒められているだけだ。零は爆モテしていながらもそれが無自覚であり、裏で王子と崇められていることも、他校にまでファンクラブがあることも知らない。

女子生徒たちは涙を流しながら天に手を合わせた。

「このクラス、王子2人もいてやばい。神様、私をこのクラスにしてくれてありがとう」

「私もう、このクラスに骨を埋めてもいい……」

「私も、もう死んでもいい……」

1人の女子がそう発言すると、ツキはその女子の顔に手を添え言った。

「まだ死なないで欲しいな。みんなこんなに可愛いんだから、早く死んでしまうなんて勿体ないよ?」

バタン。

その女子生徒はツキの顔の良さと王子様発言に気絶して倒れてしまった。

「おっと……大丈夫?」

(まぁそうなるよな……)

「ツキ、その子気絶してるぞ」

「え、気絶? なんで?」

キョトンとしているツキに零ははぁとため息をついた。

女子たちは気絶した女子生徒を保健室に運ぼうとしていた。

「ちょっと誰か、この子保健室に運ぶの手伝ってー!」

「はい、じゃあ俺行くわ。てかこれで今日このクラスから保健室行きでるの何人目だ?」

1人の男子が保健室に連れていく係を立候補し、気絶した女子を背負って運んで行った。

さっきの女子はツキが転校生として教室に入ってきてから、5人目の保健室行き患者である。

「俺も保健室行ってくるわ」

「えっ零くんも行くの?」

「直人……俺の友達も気絶したうちの一人だから、様子見に行こうと思ってね」

直人はツキが教室に入ってきた瞬間に倒れた1人目の保健室行き患者である。

「じゃあ、僕も行くよ」

「いや、ツキは教室にいてくれ。また保健室メンバーが倒れても困るからな」

「わ、分かった……」

シュンと落ち込んだツキには悪いと思いながら、零は保健室へと向かった。

(ツキって、みんなの前では僕呼びなんだな。でも、俺と2人のときは私なんだよな。なんで変えてるのか今度理由聞いてみよ。てか……これからの学校生活どうなるかなぁ)




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