プロポーズ
蓮と愛良が結婚する話です。連はすごく忙しい時期で恋人との時間を取れなかったけれど、それでも愛していたからこそ結ばれたのだろうと思っています。
蓮の前歴も解け、無事に大学へ進学した怪盗達はそれぞれの勉強をしていた。
もちろん、それは蓮と愛良も例外ではなく。特に蓮は勘当された後もテレビに出演し、実家を立て直すために実家と行き来していた。弟が生まれて、少しは楽になったがそれでも成雲家の評判は下がったまま。
母である広子も疲弊しているのが見て分かってきたので、蓮は通信制に切り替えて基本的に実家の方にいることが多くなった。
「蓮……ごめんなさい、あなたに苦労をかけることになって」
弟の世話をしていると、母が謝ってきた。
「いえ、お母様が気に病む必要はないですよ。むしろこの子の姉として、将来苦労させないようにするのが役目ですから」
蓮はもう、成雲家の令嬢ではない。将来的にはこの弟が背負うことになるのだ。少しでも重荷は減らしておきたい。
「でも、蓮もお付き合いしている人がいるんでしょ?ほら、愛良っていう……」
「あはは……あいつは分かってくれていますから……」
そういえば最近は恋人にもロクに会えていないな……と少し寂しい気持ちになる。
その時、「ただいま」と双子の弟の声が聞こえてきた。
「光助?お前、大学はどうしたんだ?」
蓮はもう一人の弟を抱えて玄関に行き、光助に尋ねる。
「オレも通信制にしたんだ。姉さんにばかり負担させても申し訳ないからね」
「別によかったのに……」
話をしながら、光助を母のところに連れていく。
「お久しぶりです、母さん」
「光助。本当に久しぶりね」
母は光助を抱きしめる。長年ずっと一緒にいられなかったのだから、邪魔するのも申し訳ないと蓮は食事の準備をする。使用人達に止められるが、蓮は気にしない。
食事を持ってくると、母は「一度、恋人に会ってきたらいいわ」と言ってきた。
「いきなりどうしたんですか?」
あまりに突然で蓮は首を傾げる。光助は「いいから。オレ、しばらくこっちにいるし」と笑った。疑問に思いながら「まぁ、光助がいるんだったら……」と頷いた。
久しぶりの東京に、蓮は目を細める。
――あー、こんな感じだったな―。
実際には実家に戻って半年も経っていないが、それでも懐かしく思える。
蓮はテレビ局の人達に捕まらないように、早急にファートルに向かった。
「おう、久しぶり、蓮」
ファートルの扉を開くと、藤森が出迎えてくれた。二階からりゅうと義明も降りてくる。
「おかえり、蓮」
「ただいま。ごめんね、もう少しかかりそうだ」
抱き着いたりゅうを撫でながらそう告げると、「仕方ないよ、おじさんのやったことはそれだけ大きなことだったんだから」と義明は微笑んだ。
「そういえば、愛良は?」
「上にいるよ」
「早く会いに行ってあげて」
そうかと蓮は上がると、こちらを見ていた愛良が手を振った。
「おかえり。元気だったか?」
優しく出迎えてくれる顔のよく似た恋人に、蓮は「うん。元気だよ」と笑って返した。
隣に座ると、彼は蓮の肩を抱き寄せた。
「急で悪いんだが、外に行かないか」
耳元でささやかれ、蓮は頬を染めながら「い、いいけど……」と承諾した。
――本当に、心臓に悪い……。
こいつは自分が魔性の男だって自覚あるのか?と思いながら、愛良に手を引かれた。
連れてこられた場所は愛良が『ジョーカー』だった時によく相談していた公園。ここも、だいぶ久しい。
「蓮」
きょろきょろしていると、愛良に呼ばれた。蓮は「どうした?」と愛良を見る。
彼は蓮の左手を取り、薬指に指輪をはめた。
「オレと、結婚してくれないか?」
思考が停止した。しかしその言葉を理解し、蓮は炎呪文が放てるのではないかと思うほど顔を真っ赤にする。
「お前も忙しいし、まだ学生だ。だが……友里と真里もいるし、結婚出来る年齢だ。だからいいんじゃないかと思ってな」
突然のことに混乱しながらも、蓮の答えは一つだった。
「……喜んでお受けします」
その返事に、愛良は笑った。




