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第121話 王都侵食

『王都内部にて、“門”の発生を確認しました』


 評議場が凍りついた。


「……は?」


 ガブが間の抜けた声を漏らす。


 だが。


 ノアの声は続く。


『現在急速拡大中』


『地下深度区域の魔力汚染率上昇を確認』


『侵食反応――空門と一致』


「馬鹿な……!」


 研究院側の老人が立ち上がる。


「王都内部だぞ!?」


「結界はどうした!」


『既に突破されています』


 ざわっ――。


 空気が揺れる。


 王都アルディア。


 大陸最大級の防衛結界都市。


 その中心部で。


 “門”が開いた。


 ありえない。


 だが。


 ペケだけは静かだった。


「場所は」


『ヴァルディア帝国使節団地下区画』


 その瞬間。


 ペケの目が細まる。


「……地下か」


 低い声。


 その表情を見て、ヒオリの胸がざわついた。


「ぺけ?」


「心当たりがある」


 静かな返答。


 だが。


 その声は少し冷えていた。


 次の瞬間。


 轟ッ――――!!!


 王都全域が揺れた。


「きゃっ!?」


 ヒオリがよろめく。


 窓の外。


 王都中央区の地面から、黒い光柱が噴き上がっていた。


「うそ……」


 アイリスが顔を青ざめさせる。


 黒い魔力。


 空間侵食。


 そして。


 空に、黒い亀裂が広がり始めていた。


『侵食拡大確認』


『地下より高濃度反応接近中』


 ノアが警告する。


「接近……?」


 レートが剣へ手を掛けた。


 その瞬間。


 ドゴォォォォン!!!!!!


 評議塔地下が爆発した。


「っ!?」


 床が揺れる。


 悲鳴。


 瓦礫。


 直後。


 評議場中央へ、巨大な黒槍が突き刺さった。


「伏せろ!!」


 ペケが叫ぶ。


 轟音。


 衝撃波。


 評議場の壁が吹き飛んだ。


「きゃぁぁっ!?」


 ガブが転がる。


 ミーチーが即座に庇った。


 煙。


 崩壊。


 そして。


 黒槍の上に、“それ”は立っていた。


「……誰」


 ヒオリが息を呑む。


 蒼灰色の髪。


 黒い軍服。


 右目を覆う黒布。


 人間に見える。


 でも。


 空気が違った。


 その周囲だけ、空間が歪んでいる。


 男は静かに室内を見渡す。


 そして。


 ペケを見た瞬間、口元を歪めた。


「やっと見つけた」


 低い声。


「灰銀」


 空気が凍る。


 ペケの目が細まる。


「……お前か」


「知り合い!?」


 ガブが叫ぶ。


 だが。


 ペケは答えない。


 男の周囲から、黒い侵食が漏れ出していく。


『危険度再測定』


 ノアの声が響く。


『対象魔力反応、王級域到達』


「はぁ!?」


 レートが顔を引きつらせる。


「人型で王級!?」


 その瞬間。


 男の右腕から、蒼黒魔力が溢れた。


 空間が裂ける。


 そして。


 無数の黒刃が、評議場全域へ展開された。


「お前を壊せば」


 男が笑う。


「門は開く」


 直後。


 黒刃が、一斉に放たれた。

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