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当然のように採取しながら町に戻る。知らない人に道を聞くのは躊躇うので、歩いても疲れないのなら町を一回りしてみようととにかく歩いてみる。
それほど大きな町ではないが、ゲームと違い生身の体で歩くので見落としがちになり、同じところをぐるぐる歩いてしまった。そのおかげでだいたいの町の配置がわかってきた頃、ギルドの2件隣にアイテムショップがあった。何度見落としてしまったんだろう。
ショップにはいると、大阪の某遊園地の某魔法の国のお店の中に入ったような感じがする。ちょっと時代かかっていて、隅の方はほこりがかぶってそうな、なんだかわからないものが置いてあるような感じすらする。このごちゃごちゃした感じがたまらなく好きかも。
何の用事もなくお店の人に声をかけるのは少々勇気がいるので、何か欲しそうなものを物色してみる。できれば「結界石」が欲しいんだけど、置いてあるんだろうか。方位磁石やコップお守りっぽいものいろいろ棚に置いてあり手に取ってみるとができる、薬っぽいものは、カウンターの後ろの棚に並んでいるようだ。
初級の町のアイテムショップなので回復薬がメインのようだけど、埃っぽいところに心惹かれて、店の奥まった棚の奥にごちゃごちゃと置かれているところで、小さな石が目に入って、気になる。
青くて透明でガラス玉のようだけど、それよりはちょっと品があるような気がする。安いのか高いのか何の役にたつのかさえわからないけど、図鑑に入れてみたい。
「すみません。これおいくらでしょうか。」
「え?そんなのありましたか?ちょっと待っててください。・・・仕入れ台帳にもないな、誰かが勝手に置いていったものか?価値がないのか鑑定もできない。ただのガラス玉かな?・・・え、え、そうですね。10Gでどうでしょうか。」
仕入れていないのに値段をつけてしまうのはショップ定員のサガかもしれないが、安く売ってもらえるのならそれはそれで欲しい。
「10G払います。あと、このお店に「結界石」はありますか?」
「「結界石」ですか?この町にはないですね。結界をはって防御する必要のあるぐらいのモンスターが出てきませんから。この隣の町かその次の町ぐらいならあると思いますよ。」
「では、錬金術の本はありますか?」
「『初級錬金術の本』がありますが。」
「残念、それは読みました。それ以外はないですか。」
「申し訳ございません。錬金術の本はこれだけですね。隣の町に違う種類がありますよ。他に何か御必要なものはございますか。」
「他は今は思いつかないです。」
「残念ですね。ありがとうございました。」
とにかく綺麗な青い石が手にはいったことが嬉しい。大事にバッグに入れているとギルドの看板が目に入った。あ、そうか知らない人に話をするのは苦手だけど、ギルド長には昨日結構お話をしたので大丈夫になっている。ギルド長に「結界石」と「テント」の作り方を聞いてみよう。
「えええっと、錬金術で「結界石」と「テント」の作り方を知りたいのです。」
「「結界石」はともかく、「テント」?「テント」を錬金術で作ろうと?それに何故「テント」?この町の宿屋は安く設定してあるだろう。宿屋に泊ればいいじゃないか。」
「「テント」があれば宿屋に泊らなくても採取がはかどると思いまして。」
「宿屋に泊らない?も、もしかして、ちょっとタブレットを貸してくれ。」
怪訝な顔のギルド長に催促され、タブレットを渡すと、
「な、なんだ。これ。昨日が初日だろう。初級というのか、草原で取れるものほぼ取りつくしているじゃないか。夜しか取れないものも早朝一瞬だけのものもめったに取れないレアものも。
あ。錬金の方も初級はほぼ終わっているし、なんだ、この量。初日でこれだけ作ったのか。錬金レベル初日で上げすぎだろう。あ、でも魔法はまんべんなく試してみたのか。きれいに上がっているな。それにしても、あんた本当にガチ勢だったんだな。」
苦笑するしかないような顔のギルド長を見ると悪いことしたんだろうかという気もちょっとしたが、図鑑を完成させるのはわたしの楽しみで今回の目的だからそこは大目に見てもらおう。
「それよりも「結界石」と「テント」は作れるのでしょうか。」
「「結界石」は割と簡単に作れる。これも初級中級高級とレベルがいくつかあって、隣町ぐらいにいけば作り方の本もあるし、材料も採取できる。この町の周辺で取った素材も初級の材料になるから、隣に行く前に多めに採取していけば失敗しても初級ならすぐに作れるだろう。
あと、「テント」はレアではあるが、ダンジョンのドロップアイテムだから、ダンジョンに潜れる奴は、作るよりダンジョンに潜ってゲットする方を選ぶ。またはダンジョンに潜ってゲットしたけれど、お金のない奴は売り出したりするから、それを買ったりする方が多い。それでも作ろうと思えば作れるはずだ。」
「ダンジョンでゲットされた方が売り出すのはダブってしまうからですか?」
「いや、序盤の方はお金をあまり持っていないので、レアものを売って良い防具や武器を買うんだよ。あいつらは「テント」よりも武器に魅力を感じるから余計な。あると便利だとは思っているんだろうけど、高く売れるからな。
お金は持っているがレアアイテムに出会えない運のないランクの高い奴が買う。うまくできているわけだ。
ただ、「テント」は大抵ダンジョンを深く潜る時にダンジョン内のセーフゾーンで使うもので、初心者の町の草原で使おうとは思った奴は今までいなかったはずだ。それにしても510G残っているが、初期費用は500Gだったよな。何か売買した結果なのか、宿屋に泊らなかったことを聞いた後に聞くのも怖いが、何か飲み食いはしたのか?」
「「スライム」を少し倒したのでGは増えていますね。飲み食いですか?「リンゴ」食べて「リンゴジュース」「傷薬」「初級回復薬」を飲みました。HPはこれで満タンです。HPが減らないと疲れが出てこないので一晩中錬金できました。生身の体のようで生身の体ではない仕様素晴らしいですね。ほとんど眠くならないんですよ。どんどん試せました。」
「はぁ…。一晩中錬金して、採取しただけの「リンゴ」と自分で錬金した「傷薬」とかだけでよく済ませたね。宿屋の隣に食堂あっただろう。屋台もそこそこあっただろう。
買って食べたいと思わなかったのか。初期費用の500Gは少なかったか?いや、このタブレットの情報を見れば、作った「傷薬」「初級回復薬」の在庫は必要以上できているから、いくつか売るだけで1食ぐらいなんとかなっただろう。」
「お金が足りなくて節約したわけではなく、食堂でわざわざ食べたいと思わなかったのと、草原で採取していたらそっちが楽しくて町に戻る時間がもったいなくなったのと、食べた「リンゴ」が瑞々しくて美味しくて元気出てきてそれで満足してしまったんですよ。それに初めての町の初めての食堂に一人で入りづらいですよ。」
「本当にソロ体質なんだな。よし飯を食いに行こう。俺がおごってやる。食堂での食事でもHPMPはある程度回復するようになっているぞ。」
「一緒にご飯ですか?できればご遠慮させていただきます。親しくない人におごってもらうのは心苦しいです。それよりも「結界石」や「テント」のヒントを早く探したいのですが。」
「親しくない人って俺のことか?」
ギルド長は自分の頭をがしがししている。
「昨日会っての今日だから、まだ親しくはないのか。じゃ、こうしよう。俺はおまえの、そうだ名前で呼んだ方が良いな。タブレットに表記されている名前、マキノで良いのか。」
「ええ、向こうのゲームの世界でよく使っていた名前です。」
「じゃ、マキノ、こっちの世界では俺がマキノの上司になる。マキノのことを上に報告するのが俺の仕事だから、マキノは俺の部下。新しい町に着いたら必ず顔を出して報告すること。同じ町に長く滞在する時には1週間に1回程度顔を出して報告すること。これは依頼者とテスターとの契約だと思ってくれていい。どうだ。それでいけば俺は上司だから飯をおごってもおかしくないだろう。」
良いこと言ったっていうような顔をしているギルド長を見て、そうか上司、依頼主がいたんだなと思い出す。
「ええ、そうですね。上司のお誘いなら仕方ありません。それに今回の図鑑の仕事は何から何までも自分にとって願ったりかなったりなので、依頼主さんのご機嫌を損ねるのは避けたいところです。
それによく考えてみるとギルド長こっちの世界の唯一の知人になりますよね。ご飯ごちそうになります。では、一緒に食べに行くとなれば外でお名前を呼びことになるかもしれませんが、なんてお呼びすればいいんでしょうか。」
「呼び方か?こっちでの名前もあることはあるが、ギルド長っていうのが設定で名前呼びをするような奴は今のところいない。
できればギルド長と肩書きのまま呼んでくれ、こっちの住人はすべての町のギルド長が俺である設定を疑問に思わないことになっているので、個人名で呼ばれると肩書きではない個性が気になり違和感を抱く人がでてくるかもしれない。
役職の肩書きのままなら、個人ではなく空気のような扱いで済むので詮索されにくくなるからいいんだ。他に何か質問はあるか。なければ食堂に行くぞ。今から行くところは宿屋の隣でこの町で一番安くてうまいので俺はこの町にいる時は毎日通っているぞ。」
そういうと、ギルド長はソファーから立ち上がった。昨日も今日もいつもソファーに座っていたから気づかなかったが、ギルド長案外足が長かったのかもしれない。思ったよりも背が高い。こっち仕様の冒険者風の服装に編み上げのブーツが良く似合っていてなかなか強そうにもみえる。
颯爽と歩いていく後ろ姿を追いかけていく。




