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カクヨムにて同時に投稿中。そちらの方が数話先行投稿しています。
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こちらはコピペになりますので,ルビや傍点など崩れてしまっています。
読みやすさや先の話が気になる方は,カクヨムがオススメです
ふと気がつくと、そこは何もない暗闇でわたしは空中に漂っているようだった。
閉じた瞼まぶたの裏側に感じる明るさも熱もないから、多分、真っ暗闇。
足の裏に踏みしめる床の感触も、背面全てを預ける感覚もないので、おそらくは立っても寝転んでもいない。
だから、『暗闇の中で漂っている』のだろう。
目を開けようとするけれどピッタリ張り付いてるみたいでビクともしない。
諦めて閉じたままにしていると気がつけば眠っている。
もう何度そんなことを繰り返したか分からないけれど、不思議と起きなきゃ、と焦る気持ちに一向にならない。
そうやって過ごす中でたくさんの人の声を聞いた。
父の声、侍女の声、メイドの声、主治医の声。ヒロインサラや第3王子エヴァン、側近ニコラエスの声も聞こえた気がする。…それと、ベイルードの声も。
声をかけられたのだから応えたいけれど、瞼まぶたと同じように口も張り付いたように開けない。喉も凍りついたのか震わせて呻き声も上げられない。
ならばせめて手でも振ろうとするけれど、やっぱり指1本も動かない。
このまま諦めて眠り続けるのも良いかもしれない。
もうそれで良いのかもしれない。
それが正しいことなのかもしれない。
そう思い始めた頃の、何度目かの意識の覚醒。
まるでそれに気がついたように、急に周囲を明るく照らす何かが現れた。
眩しくて目を瞑つむるのが普通だけれど、眩しくて気になって見てみたくなるなんて…知らなかった。
瞼まぶたが開かないはずなのに、今回ばかりはやたらすんなりと開いた。
目の前にあったのは、眩まばゆく輝く光の球体だった。
球体のはずなのに、なんだか、こちらを振り返ってふわりと桃色の髪が揺れた気がした。球体に髪なんてあるはずもないのに。ましてや髪色なんてわかる訳もないのに。
振り返ったってまん丸の球体じゃ、どっちが正面か背面かなんて分からないのに。
丸い光の球は少し近寄ってきて、話しかけてきた。口もないのに喋れるのが意味がわからないけれど、この空間にはわたしとこの球体しかないから…わたしじゃないなら、必然、球体が喋っているのだろう。
「申し訳ないことをしたな。お前があの場で死なぬ様、盾は用意してあったが…魂の宿命は如何いかんともしがたかった。それでも幾いくつか貼ってあった予防線にかかって持ち堪えてくれた良かった」
気安い。おそらく初対面のはずなのに、やたらに気安い。
返事をしていないのにペラペラとよく喋る。人の頭ほどある大きさで右に左に瞬きの間に移動するから、そろそろ目が回ってきそう。
『立ち話もなんだから座ったらどうだ』と言われるが、座るも何も空中には座れない。なのに、『座ろうと思えばどこでも座れる』とアドバイス?をするから、心の中で必死に『座る座る』と念じる。
すると、足だと思う方向に床ができるた。
そこで初めて、わたしがわたしの形で空中に浮いているのではなく、目の前の輝く球体と同じように丸くなっていたのに気がついた。
見上げれば星空が広がり、足元は磨かれた大理石の床があった。
そこから徐々に、自分の形を思い出す。顔の横にかかる黒い髪、座るときにふわりと広がるスカート。膝の上で緩く合わせる両掌りょうてのひら。
当たり前に視界にありすぎて意識して覚えてはいないだろうに、思い出そうとするとスルリと記憶の隙間から引き出される。
はて?わたしはこんなに記憶力があっただろうか?
きちんと覚えていられて、然しかるべき時に使おうと引き出せる人間だっただろうか?
「宿命を変えるにあたって、宙ぶらりんになった魂の定着に思ったより時間がかっかってしまった。まぁ、あくまであの子を助けるのが1番大事だから。片手間になってしまったのは諦めてくれな。君とあの子では、どうあってもあの子の方が我には大事だ」
『あの子』とは誰のことだろう?なんとなく思い至りそうな気がするけど、最後の角のあたりで引っかかって出てこない。それなのに、わたしは委細承知いさいしょうちとばかりに深く頷いていた。何故だ?
目の前の球体がふるりと震えると、人っぽい形へとグニャグニャもやもやとしながら変化していく。
見上げるくらい高い位置にある顔部分に、長い髪が波打っている…様に見えるシルエット。細身に見えるけれど、女性の骨格には見えないから多分、男の人なんだろう。
ちなみに声は、女性にしては低めでハスキーだし男性にしてはやや高い。
「では目覚めるが良い。そうして、あの子の帰りでも待っていてくれ」
軽く肩を押される。なかなかに強かったので1歩後ろに下がってしまったのだけど、下げた足の先に床が無くなっていた。踏み外したみたいに真っ逆さまに落ちていく。
星空があり、大理石の床がある。と、確かに見渡す限りに広がっていたはずなのに。
一瞬で全身の毛穴が広がり冷や汗が噴き出す。
悲鳴もなく喉奥の引き攣った音だけを体内に響かせながら、落ちていく。
落ちていくさきは、足元に広がる光景は怖くて見れない。
落ちていたのは一瞬だったか、ずいぶん長い間落ち続けていた気もするけれど…兎とにも角かくにも、気がついた時はわたしは自室のベッドの上だった。
荒く息を吐きながら起きあがろうとしたけれど、体に力が入らなくてばたりと背中からベッドに倒れ込んでしまった。
その気配に気がついたのか、隣室に控えていたメイドが部屋に入ってくる。
ベッドの上のわたしと目が合うと、驚いた顔をして『お嬢さまがっ!!』と叫びながら出て行ってしまった。
『お嬢さまがっ!お嬢さまが、半年ぶりに目覚められましたっっっ!!』
バタバタと走っていくメイドの叫びが本当なら…え?わたし、半年も寝てたの?




