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悪役令嬢、産まれて早々悪役を放り出す

初めまして、Pandoraと申します。なにかミスなどございましたら、ご指摘していただけると助かります。

これからよろしくお願いします

「女の子です!」


「よくやったアイリス…!」



 ざわざわと聞こえる女性達の声。1人だけ男性で、その声は今にも泣きだしそうな声だった。

 視界は、とても朧気て見えたもんじゃない。ただ、息がしづらい。身体が空気を欲する。だけど気管に何かが詰まったような感覚で、できない。



「お願い、産声を…!」


「息をしてくれ!」


「っ…ぉ……おぎゃぁぁあ!!」



 自分の声とは思えないほど大きな声を、腹から、喉から、身体中から叫ぶ。待ち望んだ空気を肺いっぱいに取り込む。歓喜する人々の声を聞いているうちに意識が朦朧としてきてゆっくりと意識は沈んでいった。



「あら、眠っちゃった。」


「まぁあんな大きな声を出せば疲れるだろうな…」


「ねぇ貴方、名前は決めたの?」


「もちろんだ、この子の名前は…リリアンヌ。リリアンヌ・リープリング・スティーア。」




 ────



 と、言うわけで、気がついたら転生していたようです。死因はアレルギー。なんのアレルギーかは置いておいてただいま搾乳中です。どちゃくそ恥ずかしいですが本能に負けました。美味しいです。

 今お乳をくださってるお母様のお名前はアイリス。アイリス・リープリング・スティーア。プラチナブロンドの髪はふわふわとしていて搾乳の時私の身体を包むように触れる長い髪がふかふかして、暖かくて好き。瞳は垂れた柔らかなエメラルドグリーンで髪とおなじプラチナブロンドの長いまつ毛が縁どっている。ちなみにボッキュッボンのナイスバディである。カップはGらしい。羨ましい。

 そしてお父様、アーロン・リープリング・スティーアは…デレデレである。所謂親ばか。だが世間に知られている父は高圧的で、自分の目的のためならばなんでもする冷徹宰相…となっている。だが私の前では切れ長の冷淡そうな淡い水色の瞳も、彫りの深い威圧的な顔も甘く蕩けている。まさに娘が可愛くて仕方がない親ばかな父、の図である。



「可愛い…」


「ふふ、見事に貴方に似ましたわね」


「あぁ…私に似ているのは嬉しいが、……ここまで似なくてもよかった…」



 そう、私はお父様似なのだ。パーツが似ているというより、雰囲気が。お母様譲りのプラチナブロンドと垂れ目はゲットしたが淡い水色の瞳と彫りの深い顔立ち。お父様の灰色の髪より色素の薄いプラチナブロンドの髪の方が冷淡に見えるようでメイドさん達がちょっと可哀想な目で見られたこともある。ただ間違いなく美人になるだろうという顔なので良しとしよう。


 実は、これらは想定内。自分の顔が悪人面というか、冷淡そうになるのも。私の名前はリリアンヌ・リープリング・スティーア。国の名前はリープリングらしい。私はこの名前達に聞き覚えがある。

 “戦姫と戦士の恋愛攻略”、略して戦略っていうめっちゃ略された名前のゲームだった乙女ゲーム、なのだが。恐らく6、7割ほどがRPG要素で埋められているだろう。何せこのゲーム、その名の通り戦略が大事であるから。

 選択する言葉も当然そうだが、服装、教養、運動、体調のパラメータも大事である。どれかひとつ欠ければ好感度が下がってしまう中々シビアな乙女ゲームだった。

 まぁそのゲームの舞台と名前が似ていたり通貨の名前が一緒だったり王家の名前も一緒だったりと共通点がある、ってだけで確信はないんだけど。

 でも攻略対象とそっくりな人間がいて、なおかつ名前や性格、地位とかが同じだったら“戦略”の世界なのか、はたまたよく似た世界なのか…。ま、完璧に確信することは出来ないけどとりあえず“戦略”の世界であることを前提に考えよう。


 さて、私リリアンヌですがヒロインではありません。そう、私は悪役令嬢。リープリング王国のスティーア公爵家令嬢、リリアンヌ・リープリング・スティーアなのです。赤子のうちから妙に悪人面だからきっと、素敵な悪役令嬢になるでしょう。


 はい、今まで私はこのゲームの話をしてきましたが。よく聞いてください、テストに出ます。

 私は!悪役令嬢なんてどうでもいいんです!!ヒロインに負けてられない!逆ハーつくるでもなく!ましてや大して頭も良くないのでなにか協会作るとか研究するとかでもなく!

 私は!前世では出来なかった、動物に触りたいのです!!そう、動物に触りたい!!!大事だから2回言いました!



「あら、どうしたの?なんかに興奮してるのかしら、魔力漏れちゃってるわ」


「あぅあー…」



 あ、お母様すいません。興奮してました魔力抑えます。少し落ち着きます。

 ええとですね、前世の私。めっちゃ病弱というか…アレルギーだらけだったんです。子供の頃おじいちゃんちのラブラドールに抱きついて発作を起こしてからというものの、動物はほぼ触れないし何気に食品のアレルギーも多いから色々食べれない。すぐ倒れるから外にも行けないしずっと病室暮らし。ちなみに死因は最初にもお話した気もしますがアレルギーです。確か動物アレルギー。遊びに来た小児科の子の服に犬の毛が着いていたらしくそれに反応して発作で死んじゃったっぽい。だって触った直後の記憶ないから。

 まぁそういう訳で、動物が何よりも好きだったのにも関わらずアレルギーで触れなかったので、今世では触りたいということです。…アレルギーとかないよね、うん。


 話を戻して“戦略”の話になりますが、このゲームは先程お話したように6、7割がRPGです。つまり、モンスターがいるわけです。モンスターを倒したりクエストをクリアすると報酬として服やアクセサリー、パラメータが上がるとかそういう感じでした。


 また話を変えますが、悪役令嬢リリアンヌの性格が曲がった理由は二つあります。ひとつは家庭。親ばかで甘々な両親の元で育ったため典型的な高飛車とわがまま娘ができあがったこと。そして重大なもうひとつは…リリアンヌのスキルに、『魔族魅了』があったこと。『魔族魅了』はその名の通り魔族を魅了するスキルである。それがリリアンヌのコンプレックスだった。屋敷を歩けば窓に魔物が張り付き、外を歩けば路地裏や空から魔物が寄ってくる。彼女の周りには常に、人間の的である魔物が存在していた。

 それ故に性格を除けば、容姿も地位も財産もオールクリアな彼女が、中々婚約者もできず、“残り物”のような扱いで攻略対象の婚約者となったのだ。ちなみにリリアンヌは王子、騎士、宮廷魔道士、のルートに入るとライバルとなる。まぁそういうわけでプライドの高かったリリアンヌだったが相手がイケメンであることにとりあえずは大人しくなった、のだが。

 そこでヒロインである…初期設定がオリヴィアなのでオリヴィアちゃんとしよう。彼女の登場である。

 “残り物”でなく、平民でありながら自分の婚約者に求められ、愛され、必要とされた彼女が許せなかった。憎かった。

 故に彼女はコンプレックスである『魔族魅了』のスキルを駆使し、ヒロインをいじめた。といっても暴力は加えず、驚かせるだとかお茶をこぼさせるだとか、鳥の糞をかけさせようとする、とか地味に陰湿なものだったのだが。

 だが婚約者にそれがバレて婚約破棄され、没落するというテンプレであった。ちなみにRPGの方である程度レベルを稼いでいれば全て回避可能なイベントである。つまりRPGの方をちょっと重視してやればほとんどと言っていいほど会わないレベルの悪役令嬢だ。


 でも、私はこの人がめちゃくちゃ羨ましかった。何故かって、分かるでしょう。だって、魔族に愛されてるんです!羨ましいことこの上ない!!ということです。まだ私にこのスキルがあるかどうかはわかりませんがあるんだったら悪役令嬢なんてしないしわがままも言わないので魔族に触りたいです。愛でたいです。


 なので、私リリアンヌは宣言致します!悪役なんて放り出してスキル『魔族魅了』を盛大に使い魔物ハーレムを作ります!!



「ふふ、…なんだか楽しそうな顔してるわ」


「何か面白いことでもあったのかな」

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