祭り(余興)
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
近衛騎士のリベンジですが。
ではでは~
「タコー殿、お手合わせ願いたい」
「いえいえ、俺は、武芸は達者でないんでな」
ニュートの申し出にタコーは即答で断る。
「フッ」
騎士は、蔑むように笑みをこぼす。
「アニキは、すごいんだよ。騎士なんか目じゃないんだから」
「悪いことは申しません。引いてくださいな」
ココモとコッカが割って入る。
「アイハイロード殿」
フィーは、国王に同等の言葉遣いになることで不愉快を伝える。
「みんな、ごめんなさい。フィー、このことは必ず償うから、どうか、抑えて」
ジョシティアが殺気立つ義姉妹たちに詫びを入れる。
「ニュート、失礼だ。タコー殿、どうか、身の程を知らない若輩の戯言でございます。何卒、ご容赦ください」
近衛騎士長が、深く頭を垂れて謝意を示した。
「タコー殿、どうか、気を悪くしないで欲しい」
国王の顔色が悪くなる。
ここで、近衛騎士の無礼は、今後の王国の平衡を大きく揺るがしかねない。
「どうかしたんですか?」
ガヤ隊長が、険悪な空気に気が付く。
「いやな、近衛騎士さんが俺と手合わせをしたいってだけだ」
タコーは、差し障りなく、状況を説明する。
「はぁ」
ガヤは、国王たちに気づかず温い返事を返す。
「陛下、歩くだけが達者な兵卒が何の役に立つのですか?」
「ニュート、口が過ぎるぞ」
国王に問いかける騎士を諌める近衛騎士長。
「はいはい、わかったよ。お相手しましょう」
「アニキ、殺っちゃえ」
「物騒なことを言うな。俺が死んじまうよ」
「ぶー、嘘つきー」
タコーは、国王にさえ噛みついた若い騎士が収まらないと思って、手合わせに応じることにした。
「近衛騎士様、言っておくがこれは【御前試合】になるからな。負けたら、みっともないぞ」
「ふん。 タコー殿はご自身の心配をなさった方がいいのではないですか」
若い近衛騎士は、目の前の中年男を完全に見下していた。
「ヴェルン、木刀を出してくれ」
「はいな」
ヴェルンは、背中に背負った背嚢を下ろす。
それがアイテムボックスだった。
リフィから持たされたアイテムボックスから木刀を抜き取った。
= = = = =
アイテムボックス、ファンタジーお約束のなんでも入れられる収納アイテムのはずだったが、この世界では、都合のいいものではなかった。
携帯できる照明のないクローゼットのようなもので、生ものは中で腐るし、入れたものは手探りで探さないといけない。
開口部を通せる大きさしか入れられず、開口部から取り出すと重量が発生するので重いモノは転がして出さないと出しにくく不便。
どういう原理か解らないが、どれだけ入れてもいっぱいにならず、手探りで探すことができた。
置き場所を覚えておくとすぐに取り出すこともできる。
使いこなすのになかなかコツのいるアイテムだった。
ヴェルンは、リフィからタコーの役に立つことがあるかもしれないと託されていて、そこそこ使えるようになっていた。
= = = = =
「え、何々。それ、おもしろーい」
「もしかして、アイテムボックスですか?」
「宝物庫においてある以外のモノは、初めて見た」
ココモ、コッカ、フィーはそれぞれにアイテムボックスに驚いた。
「さ、さすがは主様」
「タコー様、一体あなたは」
キャサリアとジョシティアは、タコーに対して驚いた。
「た、隊長」
「お、おう。さすがは、タコーの旦那だ」
傭兵部隊は、初めて見る魔法具を当たり前のように活用している旅人に改めて畏敬の念を抱いた。
「おいおい、マジかよ」
「ほんと、こんなところにあるなんて」
「あの頃にあったら、どれだけ便利だったか」
「あなた、これほどの方がキャサリアのお相手なんて、信じられないわ」
国王、王妃、侯爵夫妻は、冒険者時代を思い出し、その貴重品の意味を知っていた。
= = = = =
タコーは木刀で素振りをし、身体をほぐした。
「うーん、ウップッ、ちょっと飲み過ぎたかな」
「タコー殿、そのような木切れで何をするおつもりですかな?」
ニュートは自信満々、練習用の剣をタコーに差し向ける。
「おっさんは、このくらいの重さじゃないと振れないんだよ」
「ふん。修練が足りないようですね」
「ああ、俺は旅人だからな。で、始めていいのか?」
「いつでもどうぞ」
「では、参る」
ニュートは、剣をタコーに向けて構えるが、タコーは居合の構えのまま間合いを詰めていく。
「なんだ、その構えは。ふざけているのか」
ニュートが声を荒げる。
「俺の故郷じゃ、憧れの剣士が何でも真っ二つに斬っちまう構えだから、気にするな」
「ほざけ!」
≪ヒュッ≫
「ぐぁっ」
≪カラン≫
一歩踏み込んだニュートの剣を握った右手の甲を木刀がしたたかに打ち据える。
ニュートは、短い悲鳴とともに激痛で思わず剣を落とす。
タコーは、間合いを知られないように素早く木刀を納め、ニュートから距離を置く。
今度は右腰に木刀を回し、左手を準備する。
ニュートは、腫れあがった右手を押さえ、タコーを睨みつける。
おもむろに左手で剣を拾い、再び構える。
「訳の判らない剣を使いやがって」
タコーは何も喋らず、ただ構えていた。
「このやろー!!」
≪ヒュッ≫
「ぎっ」
≪カラン≫
一歩踏み込んだニュートの剣を握った左手の甲を木刀がしたたかに打ち据える。
ニュートは、再び短い悲鳴とともに激痛で思わず剣を落とす。
「本物の剣で勝負しろ! 殺してやる!」
= = = = =
ニュートは、憲兵に引きずられていった。
殺してやると叫んだ瞬間、ひとりの妻(自称)の法術で一瞬動けなくなり、ふたりの妻(自称)たちに袋叩きにされてしまった。
ココモとコッカの組討ちは苛烈だった。
ココモがニュートの首を鷲掴みするとコッカが鎧めがけて後ろ足で蹴りを入れる。
ココモが踏ん張り、その破壊力を受け止めさせる。
ニュートは意識を手放し、ココモの手からぶら下がるだけになった。
ココモは、首を掴んだまま、数回ニュートの身体を地面に叩きつける。
「おーい、殺すんじゃないぞ」
「だってぇ」
「タコー様、止めないでくださいな」
「このまま最期まで」
キャサリアとジョシティアはマリアを必死に止めていた。
いかがでしたか?
踏んだり蹴ったりでした。
逆恨みが怖いですね。
次話をお待ちください。




