触れる距離にある王国の危機
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ヘインリー家は安泰でしょうか?
ではでは~
憲兵隊をヘインリー家王都屋敷から撤収させて、大広間でお茶会の最中だった。
「アーエルフル殿、此度はアイハイロードにお越しいただき、大変光栄に思います」
「裁判の見届けが目的」
国王の言葉に薄い反応で答えるフィー。
「その裁判も訴えが下げられ良かったと思います」
「それは良かった」
「それで、その、よければ、王宮で晩さん会を催し、歓待いたしたいのですが」
「領民の税金。いらない」
会話が続かなくなった。
マリアがティーポットを持ってきた。
「フィー様、お代わりはいかがですか?」
「うん、マリア。マリアのお茶はおいしい」
「ありがと。熱いから気を付けて」
「はい」
国王は、ふたりのやり取りが姉妹のようだと錯覚する自分が不思議だった。
= = = = =
タコーは、広場からの帰り道、今の状況を整理していた。
キャサリアの言葉で屋敷に来たのは憲兵隊とわかった。
おそらく命令系統の途中に先王弟の息のかかったものがいる。
これは間違いない。
ヘインリー家の影響力を国王から引き離すか、国王への忠誠に揺さぶりをかけたのだろう。
ここで生じた疑問は、遡ってジョシティアが誘拐、監禁された事件の黒幕と同じ人物なのか?
謀反のでっち上げと王女誘拐という犯罪。
質が異なるように思えてくる。
謀反のでっち上げはヘインリー家を取り込むきっかけとなることに対して、王女誘拐はジョシティアを傀儡に仕立て上げる算段が見え隠れする。
前者は、国王にとって代わるのに必要だが、後者は、影で操ること目的にしているように思える。
「あー、いいかい、ユリアン。パズルのピースがまだ足りないよ」
王国に関する知識がない現状では、知らないことが多すぎてどうしようもない。
キャサリアに考えを伝えて、あとは任せよう。
そうこうしているうちに屋敷の前まで帰ってきた。
憲兵隊の姿はもうなかった。
その代わり一見普通に見える馬車と馬が数頭。
馬は草を食んでいた。
(普通よりでかいな。軍用馬か?)
そう思ったところから、馬車の主を予想した。
敷地に踏み込まず観察することにした。
護衛を伴っているから司令官クラス、いや普通に見える馬車を使っている時点で軍関係の線は薄い。
馬車の車軸が太い。
車体が重いのかもしれない。
普通の馬車より、はるかに頑丈に作られていると導き出される。
となるとお忍びで来る人物である可能性。
先王弟かと一瞬考えたが、このタイミングだと早すぎる。
危険はないという結論にたどり着いた。
もしかしたら国王かな?
「まあ、なるようにしかならないな」
タコーは屋敷へスタスタ入っていった。
タコーの前を2人の青年が行く手阻み立ち並ぶ。
「待たれよ。この屋敷に何用か?」
「へぇ。おいら、臨時雇いの掃除夫でさぁ」
タコーはさらっと嘘をつく。
タコーは嘘をつくのが嫌いだが、事実を言ってもまず信じてもらえないからである。
一人が後ろを向いた。
指示を仰いでいるようだ。
(俺が刺客だったら、もう死んでるぞ)
「メイドに来ていただく、それまで待たれよ」
「へぇ、わかりやした。このお屋敷のマリアさんは別嬪さんでございますねぇ」
「・・・」
タコーの言葉に青年2人の目つきがきつくなる。
(お、憧れのマリアさんをお前みたいな男が見るんじゃないって目だな)
速足の足音が屋敷の方から聞こえてくる。
やがて、ヘインリー家のメイドが屋敷の中から出てくるのが見えた。
2人の青年をすり抜けタコーの許にマリアが辿り着いた。
少し乱れた息を整えたマリアは、微笑みタコーを出迎えた。
「お帰りなさいませ。タコー様」
「ただいま戻りました」
「旦那様がお戻りです。あと陛下が玉体をお運びいただき、御用があるものかと存じます」
「2人には会い辛いなぁ。でも、ここに居ても仕方がないから、とりあえず行こうか」
「はい。・・・お二方、お勤めお疲れさまでございます」
呆然とする青年2人に軽く労いの言葉をかけ屋敷に向かうマリア。
その後ろから、タコーがついて歩く。
タコーは、マリアの後ろ歩きながら、ふと気になった。
小声で確かめてみる。
『マリア、もしかして、心配してた?』
『知りません』
少し怒っているようだった。
= = = = =
国王は、事の重大さを思い知らされていた。
「ココモ殿は、伝説的お二方の・・・」
「孫です。陛下」
「コッカ殿は・・・」
「お察しの通りですよ」
「あなた方は王国をどのようにお思いでしょうか?」
「「一時は滅ぼそうかと考えたことがあります」」
タコーと会えずに王都入りした時の気持ちをためらいなく口にした。
「・・・」
愕然とする国王。
「でも、アニキがダメだっていうから、もう思っていません」
「わたしもあの方のお考えに従います」
「フィーも同じ」
「この国の平穏は、その≪アニキ≫殿の考え一つで染め変えられるということですか?」
侯爵は、娘たちがキャサリアの友人であり、アニキなる人物の放免で事なきを得たと早合点していたことに気が付いた。
キャサリアの祖国であることなど歯牙にもかけていなかった。
いかがでしたか?
王国はりゅうのしっぽを踏んだ感じでしょうか?
次話をお待ちください。




