ヘインリー家、知らぜざる謀反の実態
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
舞台はヘインリー家王都屋敷
ではでは~
洗濯物を取り込んでいた一人がこっちに歩いてきた。
見たことがある。
近衛騎兵のヘインリー五十騎長だ。
彼女のファンは憲兵隊にも少なくない。
彼女を敬礼を見て軍に志願した者がいるくらいだ。
「憲兵隊ですね。何かわたしに御用かな?いや当家でしょうか?侯爵は、ただいま王宮におられますので、しばらくお待ちいただくことになりますが」
美しい、近衛隊正装もいいが、部屋着に薄い毛織物を羽織っている娘らしい着こなしに見惚れてしまいそうだ。
「どうかされましたか?」
「い、いえ、しょ、小官は、ヘインリー家王都屋敷を制圧する命令を受けている。抵抗するものは・・・」
『あーあ、隊長言っちゃったよ』
『この様子見て言うかな?』
『ヘインリーさんに嫌われたら、女子隊員からも無視されるかもしれないのに』
後ろから隊員たちのヒソヒソが聞こえてくる。
「うーむ、当家には心当たりがございませんが、命令となれば仕方ありません。どうぞお入りください」
「う、うむ。では、せ、せいあ、・・・おじゃまする」
屋敷を包囲していた50人のうち30人が屋敷の中へぞろぞろ入ってくる。
のこりの20人が塀の外で警戒する。
「奥様、おもてなしは、いかがなさいますか?」
「そうねぇ、あちらもお仕事ですし、タコー様の身の安全を優先してもらえるかしら?」
「はい、承知いたしました」
キャサリアママは、歳の近い義理の息子の安全を優先することにした。
そういうタコーは、ココモとフィーと並んで草むしりに集中していた。
キャサリアも草むしりをできなくはないが、長い時間しゃがんでいるの無理だったので、あきらめて別の用事をすることにした。
= = = = =
憲兵隊が屋敷の中に入って捜査を始めたが、何も出てこない。
どの部屋も錠がかかっておらず、入ることが躊躇われた。
侯爵夫人が口を出してきた。
怪しい、やはり何か隠しているのだろう。
「これから案内する部屋は、女子隊員だけで捜索してください」
「え?」
「わたしや娘、メイドの部屋に見知らぬ男を入れるのだけは、絶対に許しません」
「あ、あの」
隊長が言葉に詰まる。
「侯爵夫人、わたしたち、キャサリア様のお部屋に入ってよろしいのですか?」
「あらあら、お仕事なのでしょ。かまいませんよ」
「「「キャーーーー」」」
黄色い声が上がる。
「あ、あの、ご夫婦のお部屋も捜索対象なのですが・・・」
「よろしいですよ。ただ、この屋敷は王都の仮住まい。みなさんの将来の手本には、ならないかもしれませんよ」
「「「イヤーーーーン」」」
(ううう、この命令、絶対おかしい。自分、嵌められたんだろうか。かーちゃん、くびになったらゴメン)
憲兵隊の隊長は頭を抱えて蹲ってしまった。
「アーン、お姉さまの部屋いい香りだったー」
「ふぁー、あのドレッサーでキャサリア様が身支度をしておられるのね」
「キャサリア様、私服が質素。やっぱり着こなしが大事なのね」
(こいつら、絶対捜索してないだろ)
いつの間にか、侯爵夫人の案内で屋敷の中を憲兵隊30人がぞろぞろ歩き回ることになっていた。
= = = = =
門の脇で草むしりをしているタコーのところに町娘がやってきた。
「お兄さん、タコーって人、誰かわかる?」
その声から少し遅れてタコーは立ち上がった。
「お嬢さん、俺はおっさんだから、うれしいこと言うなよ」
「えー、おじさんじゃないよ」
「おだて上手だな、ちょっと待っててくれな。おーい、ココモ。タコーって人、わかるかぁ?」
「えー、アニキがわからないなら、ボクもわかんないよー」
「フィー、タコーって人」
「フィー、わからない」
「コッカーーー」
「ハーーーイ」
「タコーって人、わかるかぁ」
「ご主人様がわからないなら、わかりませーん」
「すまん、俺、ここの人じゃないから、これ以上はわからん」
「ううん。ありがと。お兄さん」
「お嬢さん、何の用事か教えてもらうと後で知らせることもできるんだが」
「それは言えないの。知っちゃうとお兄さんにも迷惑がかかっちゃう」
「そうか、お嬢さんはいい子だな」
「な、わ、そ、わたしはいい子なんかじゃないよ」
「俺に迷惑がかかるからって心配してくれたよな」
タコーの言葉に町娘は俯いて動かなかった。
タコーには、小さく震える肩でおおよその見当がついた。
(この子が実行犯だ。自分が汚れ仕事に手を染めてきた。そして、それはこの子の本意じゃない)
「お嬢さん、なんか奢ろう」
「え、え、なんで?」
「頑張ってる人へのご褒美だ。その中に俺も入る」
「何よソレー」
「ココモー、ちょっと行ってくるー。フィー、なんとかリフィと話を通しといてくれー」
町娘を連れて、大通りに向かうタコーだった。
= = = = =
王宮の通用口から、地味な馬車が数騎の騎馬従えて出発した。
ほどなく、ある屋敷の前に到着したが、その物々しい警備とにらみ合いになった。
「我らは憲兵隊である。貴殿らの官姓名を名乗られよ」
この言葉に一騎が馬車の方に寄せて中の人に聞く。
「武をもって下がらせますか?」
「忍んで来ているが兵は損ないたくない。これだけの人員が動いているなら、命令が出ているのだろう」
「御意。では?」
「ここは侯爵の屋敷、そのまま入ろう」
「御意」
指示を受けた一騎が警備に当たる憲兵隊に返答する。
「馬上から失礼する。ヘインリー侯爵様のお戻りである。道を開けられい」
「身柄を拘束いたします。お役目ゆえ阻むこと敵わず」
「何故か、お聞かせ願おう」
「ヘインリー家に謀反の容疑!」
「ぷーーーー、アハハハ」
「きったねえなぁ」
「謀反だって、そうか、お前、いつかは、やると思ってたんだよーーー」
「くっそー、なんだよ、それー。いい加減、噴き出すのやめろって。馬体にかかるだろう」
「お、余に歯向かうのか。・・・ぷーーーーーー」
「だから、きたねえって。うわ、唾がくせー」
馬車の中で、男二人が騒いでいた。
いかがでしたか?
国王もキャサリアパパも年頃の娘がいるというのに軽いです。
次話をお待ちください。




