留置
お待たせしました。
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ではでは~
馬車隊が停車場に到着する。
乗客が降りてきて、迎えの人と抱き合ったり、荷下ろしをしたりとごった返していた。
護衛の騎馬隊の隊員たちも馬から降りて、愛馬をねぎらっていた。
それらとは違った最後尾の馬車。
その馬車は、小休止の後、数騎の騎馬が伴って、王都中央に向かって、大通りを抜けていった。
それをハーフオークとケンタウロスとエルフが見送っていた。
彼女らの眼には、静かで固い決意が籠っていた。
= = = = =
「いよいよか。キャサリア、もしもの場合、ココモ達を護ってやってくれ」
「主様、言わないでください」
「あくまで、もしもの場合だよ。俺も簡単に死ねないからな」
「はい」
しばらくすると馬車が停まる。
馬車の外から声がする。
「被告人タコー=イスルギィは乗っているな?」
「はい。自分は近衛騎兵隊所属、ヘインリーであります」
「法務大臣の命により、被告人の身柄を移管する。任務お疲れさまでした」
「はい、法務大臣の命に従い、被告人の身柄を移管します。ありがとうございます」
馬車の戸が開き、数人の官士が馬車に乗り込んできて、タコーを外に連れ出した。
1人の文官がタコーの前に立ち、
「あなたはタコー=イスルギィですね。間違いありませんか?」
「はい、わたしがタコーです」
「では、裁判まであなたの身柄は留置されます。法に従うよう命じます」
そういうと建物の方に向きを変え歩き始めた。
タコーを取り囲む官士達が無言でついていくように促した。
タコーは、先を行く文官を後についていった。
キャサリアは、タコーが建物の中に消えるのを見届けた。
「主様、ほんの少しの辛抱です。キャサリアがお役に立ってみせましょう」
= = = = =
「裁判の証人は2名と聞いておりましたが?」
「はい、証人は2名です。こちらは、アーエルフルのお姫様です」
ココモがさらっと言ってのける。
「ヒッ!我が王都へは、どのようなご用件でお越しですか?」
「裁判の見届け」
「ま、誠に申し訳ございません。宿泊施設の準備をしておりません。王宮へ使いを出しますので、しばし、しばしお待ちください!」
停車場でココモ達証人を迎えに来ていた官士が大慌てで部下に指示を出していた。
「アニキ、大丈夫かなぁ?」
「まだ、心配いらないわ。タコー様のことだから、何か仕込んでいる頃よ」
「コッカ、女の勘?」
「フィー、これは夫への理解よ。ね、ココモ」
「うん。アニキは狡猾だよ、フフ」
「タコー様、読まれてる」
= = = = =
「裁判までここで待ってもらう。食事は1日2回、奥に中庭にでる穴がある。中庭に水飲み場がある。特に束縛はしないので自由に過ごして良い」
頑丈な鉄の扉が開かれた先に小部屋があった。
「判りました。タだ私は、身の潔白を示すタめ、食事と水は取りません。そのことを裁判官殿にお伝えください」
「我が国の裁判は、厳正かつ公平である。断食でもなんでも好きにすればいい。判決は正しく下されると承知するといい」
文官は、そう言い残すと立ち去った。
「はい、公平な判決を受け止めます」
タコーは、聞こえていなさそうなのを承知で言葉を返した。
取り囲む官士たちに促されるようにタコーは部屋に入った。
鉄の扉は、軋みながら重い音とともに閉ざされた。錠前ではなく閂がかけられ、小部屋からはびくともしなくなった。
部屋の中は、予想外に小奇麗で、簡易ベッドには、清潔なシーツがかけられていた。
「ほー、安宿よりずいぶんマシだな」
鉄の扉の反対側に丸い木の板(?)が壁に嵌っていた。
タコーは、文官の言った中庭に出る穴のことを思い出した。
「一応確認しておくか」
丸い木の板(?)の取っ手を掴み、引き抜いた。
板だと思っていたのは、分厚い丸太の輪切りで、その穴は、大人の肩がギリギリ潜れるくらいだった。
「これはデブや亜人は通れないだろ」
窮屈な穴を抜けるとちょろちょろと水が注がれる小型の噴水のような水飲み場があった。
底に埃が溜まりかき混ぜると泥水になりそうだった。
水飲み場からあふれた水は、石堀の樋を通って穴の中に落ちている。
「部屋の中におまるが無かったから、この穴がトイレか。水洗トイレだな」
中庭は部屋と同じ幅で奥行きが少し長いように感じられた。
囲む塀は大人二人分の高さがあり、陽の光が差し込むのを邪魔していた。
タコーは、部屋に戻り、穴を塞ぎ、ベッドに座ると静かに目を閉じた。
「持久戦の開始だ」
= = = = =
キャサリアは、ひさしぶりのヘインリー侯爵家王都屋敷に来ていた。
ヘインリー家は代々騎兵の家系で、戦争の度に活躍し、100年ほど前に敗走寸前の王国軍を逆転勝利に導き、その功により今の地位がある。
亜人でなければ、確実に王家と縁故の関係になっていただろう。
「久しぶりね」
キャサリアは、騎兵団に入団後、初陣を果たした後、近衛騎兵団に転属となった。
王都屋敷には、見習い騎兵の間だけ暮らしていたが、それ以降は、騎兵団の寮生活に移っていた。
ポコポコと敷地の中に進むキャサリア。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
落ち着いたメイドが挨拶をする。
「ただいま、マリア」
寛いだ口調で帰宅を告げる。
「ここは、いつ来ても安らぐわね」
「お嬢様はここから通勤なさればよろしいではないですか」
「それはダメよ。命を預ける仲間たちと一緒に過ごさなくては・・・」
正直な自分の言葉に気が付くキャサリア。
出会ってから、数日しかたっていない仲間たち。
同じ想い人というだけ。
なのに心から仲間だと思えるし、思ってほしいと望んでいる自分がいる。
「仲間のために」
「お嬢様?」
ふとキャサリアはおかしなことに気がついた。
「どうしてマリアがこっちにいるの?」
いかがでしたか?
タコーは留置されました。
断食で凌ぐだけ無事自由になれるでしょうか?
次話をお待ちください。




