五話 鞭100%!?
「アマリリス様。貴女は馬鹿ですか?馬鹿なんですね?いえ、馬鹿ですね」
今の台詞は私が言った言葉では有りませんわ(心の中では言ってましたが…)
彼女は現在歴史の先生に駄目出中でございます。正確には全ての先生から駄目出しされましたが。彼女を教育するに辺り私が選んだ教師達。
まず、文筆の先生、ブロテア・ハーノ様。
隣国、ランタナ公国で現在の皇太子(現在32才)の元教育係を勤めていた方でふくよかな体格の見た目は穏和そうなおば様。しか~し。反感の態度を見せれば、
『ランタナの皇太子様や他の皆様方は覚えが早いのに対し、貴女様はまだ覚えられないのですか?しかも何ですか?その汚い文字は?』
から始まりネチネチとアマリリス様をいたぶって行く。
次に、マナーの先生。ダリア・デューク・コーザ様。
私達のおばあ様で何と元々攻略者の一人ヤード家の長女。隠居しているお祖父様の後添いで嫁いで来たとの事(←何とコーザ公は先妻の子で我とは母は異母兄妹だったんです。道理で年が離れているはずだわ)少しでもマナーを間違えれば言葉よりも先に手が出て来ましたよ。私は出されてませんが他の三人は叩かれまくってます。
そして、魔法学の先生。マグワ・アール・グスタ様。
お父様の元部下で伯爵家の次男。以前魔法団での訓練の際怪我をされ、退団後メリス兄さまの教師をしていらっしゃるのですが今回私達の教育を依頼。見た目は厳ついおっさん。授業の内容は何故か体を鍛える訓練とかさせられます(尚、カルは魔法の才能が無いためこの時間は公爵嫡子カミーリア様と剣の稽古中で御座います)。先生曰く、
『戦闘の際肉体も強くならなければ心も強くならない』
とか?(私達はともかくアマリリス様は戦う事は無いと思うのだけれど…?)
運動何て殆どした事が無いアマリリス様にはかなり辛い…。
最後に、歴史の先生。ナギ・ナイト・ザガ様。
アマリリス様の兄で公爵嫡子カミーリア様の教師でも有ります。(カミーリア様は屋敷内に居る様なのですが此方に気を使ってか未だに会ってません)。見た目優しそうな雰囲気を醸し出している30才位の男性の方なのですが出る言葉はかなりの毒舌。今はシュトルゼの建国から代々の王の功績やその時代に起こった歴史を習っている最中なのですが、冒頭の言葉はナギ先生から発せられた言葉ですよ。
此の様な感じで既に二ヶ月が経ちました。此方《此方》の世界では一週間が十日有り、光、火、水、地、木、風、空、雷、氷、闇となり、一年が約三百日、基本的な休みは光と闇の二日間、その他大きなお祭りや夏と冬に一ヶ月ほど休みが有るのが一般的となっております。そして基本的に私達が揃って授業を受けるのは週に二回。風の日に各授業後おさらいとして宿題を出され火の日に採点、宿題の復習をさせられる流れとなっております。そして本日は風の日でございます。
先生方の駄目出しをされる確率は私が10%だとすれば、デュランが40%。カルが60%、アマリリス様が100%となっています。この差はやっぱり年の功(精神年齢順)ですわね。デュランは前世で働いていたので要領が結構良いのです。それに比べてカルは元高校生。大雑把な所があり経験が少ないかな?アマリリス様は年と精神年齢が同じ+今迄甘やかされていたので問題外。
最初こそ威勢よく先生方に噛みついたり泣き付いたりしていた彼女ですが今は既に文句を云う気力も無い模様。えぇ、楯突いたものなら倍以上で反されますし泣き付いてスルーされますから。プライドも粉々に砕かれたようでして最近は怯えながら素直に授業を受けています。ハッキリ云って飴を与える機会がございません。
でもそろそろ何かしら与えないと不味いですね。やり過ぎると精神に支障が出ますし。さてどうしましょうか?
「…様ネモフィラ様!!手が止まっていますよ?貴女様も授業中に考え事とは良い度胸ですね」
やばっ、いつの間にか此方に迄飛び火しそうです。
「申し訳ございません。少々先ほど教わりましたこの国の三代目の王の側妃様とのお子様の名前が変わっていたものですから何か意味が有るのかと思いまして…」
そう言い先程気になってしまった名前を云う、
「どの方でしょうか?」
「はい。第三側妃様の子の名なのですが『ゆい』様なんて珍しい名だと思いまして…」
「あぁ、子の名ですか?確か当時の文献では当時の王のと自分を結びつけると云う意味を込めて妃自ら付けられたと云われています。但し発音が難しく当時の方々は皆『ユゥイ様』と言われていたとか。実際私も言い辛くよく発音を間違えますが」
うん。何と無くこの第三側妃は転生者っぽいな…。過去の事だから確認は出来ないけど。だって流石に王の名前は樹木の名前が無かったけど(あったら間抜けそう。現王子様達は攻略者だから論外だけど)女性の名は今の所確認した限りでは全て花の名前の中でこの名は違ったのよね。
「さて、次回は今回の復習を致します。此方の宿題をしっかり提出してくださいね。特にアマリリス様?また馬鹿呼ばわりされたくなければ貴女様の場合、死ぬ気でやりなさい」
…眼が笑ってないですよ。そしてアマリリス様お顔が真っ青になっておりますよ。
本日の時授業も無事終わり此れからの時間はお互いの交流を深める為のお茶会の時間でございます。最初こそカップを投げ付けるという暴挙を起こした彼女ですが最近は私の顔を伺う様になって来ました。侍女経由での嫌がらせもされましたが此方に関してはやった本人は私の支援者で有る公に報告し見せしめとして辞めさせましたし。(←いくら令嬢の指示だとしても実行した時点で、はい。OUT!!問答無用です)自分達も生活が掛かって居るのでそれ以来嫌がらせも無くなりました。
「アマリリス様、其では私達はそろそろ失礼致します。次回の火の日迄御機嫌よう」
その言葉に続けてデュラン、カルが。
「アマリリス様其ではさようなら。自力で宿題頑張ってくださいね」
「ちゃんと終わらせる様にな?」
「…………」
と言ったものだから此方を無言で睨んできましたよ。おやっ?まだ反抗する精神が合ったのですね?私が冷笑したらびくついて眼を反らしましたよ。度胸がないならやらなきゃ良いのに…。お・ば・か・さ・ん❤
「と云う事でそろそろ次の段階に行こうと思うのですが」
屋敷に戻り二人を自室へ招いてから第一声に対し、
「行きなりだな。おいっ」
「次の段階って?」
突っ込みと質問をされつつ。
「ほらっ。最近我が従姉も最初に比べて大人しくなってきたじゃない」
「あれだけやられれば誰だって大人しくなるわい!!俺だって時々泣きたくなるし」
「カルの場合は打たれ強いから大丈夫よ」
「そうよね。あんたの場合、自分からどつぼにハマって怒られているパターンが多いから自業自得よ」
「まぁ、貴方はもう少し要領良くこなす様にしなさい。細かい所にも気を付ける様にしていって慣れれば大丈夫よ。其より!!そろそろ第二段階として獲ずけをしようと思うのだけれど」
「餌付け…」
「餌付けするならやっぱり食べ物じゃない?」
「食べ物か…とすればお菓子かしら?」
「でも、こちらの世界のお菓子って味気無いわよね。勿論食事もだけど」
そうなのです。基本料理もお菓子もあまり凝ったものが無いのです。
「確かに!!俺たまにポテチとかポッキーとか無性に食べたくなるとき有るわ!!」
野菜をお菓子としても使われてないですね…。
「私も好物のラーメンが無いと分かった時は絶望したわ」
…凝縮したスープも使われてないわ…。と、彼らの食べたい物を聞きながら。
「あらっ。ポテチもポッキーもラーメンも作ろうと思えば出来るわよ?ラーメンは塩味限定だけど」
「「えっ!?」」
「材料は有るし作り方も知ってるから。元主婦をなめないでよ。食べたい?」
「「食べたい!!」」
「…ふむ。お菓子ね…。相手はお子様だからデュランの案を採用しますか…。でも折角だから少し凝ったのにしたいわ。何を作ろうかしら?」
「はい!!俺、カステラが食べたい!!」
「あっ!!私アップルパイがいい!!」
「私はどちらでも良いわよ?実際作らせるのはデュランにやってもらうから」
「「えっ?」」
「当たり前でしょう?貴族の私に厨房を使わせるわけ無いじゃない。指示はするけど」
「じゃあ。私が作るならアップルパイに決定~!!」
「カステラ~…」
因みに此方食べ物は塩、胡椒、砂糖が基本。現代程味付けもレパートリーが無いです。