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三話 甘いわね!!

「無礼者って言ったのよ!!」


バシャッ


「「「お嬢様!!」」」






あれからあっという間に半年が経ちました。本日私わたくしネモフィラ・マークィス・モーナンが公爵家へとやって来る日になり只今馬車で移動中でございます。ここ処へ来る迄が思った以上に大変でしたけど。






まずデュランタ。彼女は元々孤児院の出身。最初私わたくし付けの侍女にさせる事に周りの者達は良い顔をしませんでした。当然他の侍女見習いと一緒に寝起きをさせた所食事を抜かれたり夜遅く迄働かされたりしておりました。


(でもわたくしの話し相手と云う事で部屋へ来る度にガッツリ寝てお菓子をお腹いっぱい食べてたからどちらにしろ目が覚めて眠れないとか食事が不味いとか文句ばかり言って全然懲りてなかったけどね)


しかし一ヶ月もすると彼女は他の見習いの誰よりも家事が上達しとうとう侍女長に気に入られ今では認められ一目置かれる存在になり今は我が物顔で屋敷を闊歩しております。体術の方も棒術が得意で師範のお墨付きを貰っていた。但し魔法は苦手みたいでまだマナを上手く操作出来ず二回ほど暴走させて先生に怒られていたけど…。






次にカルミア・ノニヤ。彼はデュランタと違い王都でも有名な商会の御子息。家とも取引をしているせいか侍従や執事達も最初は敬語で対応してました。まぉ…何かあったら商会との取引に支障が出ると思っていたみたいですが、肝心のカルミアの父より。


『私は私。息子は息子ですので気にせずビシバシ鍛えてくれ』


との要望と本人が気にしない性格の為今では完全に皆と馴染んでおります。只、剣術は師範に兄さまより断然教えがいがあるとお褒め付を頂きましたがどうも執事の仕事が覚えられない様で未だ駄目だしを貰っております。わたくしが。


『商人の勉強してたならば楽勝ではなくて?』


と言ったら。


『全然違う!!』


と返された。






最後にわたくし。…チート万歳と思った時期もあったけどやっぱり努力が無くしてなれないものよね…ふっ…。半年経っても未だ武器を持たせれず基礎体力ばかり鍛えされております。師範曰く。


『お嬢様には武器を持つ以前に体力が無いのでまずは基礎をしっかりなってから初めて武器を持つのを許します』


と…。えぇえぇわたくしはどうせお嬢様。今まで箸より重いものなんか持った事は無いですよ(この世界ではフォークとナイフだけどね)。


最初は全身筋肉痛で酷かったわ…。両親や兄さまには心配されるし、デュランやカルには。


『ロボットみたい』


と馬鹿にされるし。今は毎朝屋敷の周りをマラソンしてるし筋肉痛にはならなくなったけど。そろそろ武器を持たせて貰えないかしら?実は秘かに某時代劇の○殺仕事○に憧れてたのに。上手くいかないわね…。


「あっネモ着いたみたいよ?」


あらっ?考えに没頭してたら着いたみたい。デュランに声を掛けられ馬車の窓から外を覗くと家よりも立派な屋敷が。


「ふっふっふっ…デュラン、カル、いざ出陣よ。気合いを入れて行くわよ」


「大袈裟ね」


「大袈裟だな」


「相手は我が儘なお嬢様。私達は良く思われないでしょう。当然何かしてくるはずだわ。まぁ予想はしているけどね。後貴方達、屋敷に入ったらその言葉使いは気を付けなさい。」


「分かったわ」


「了解」


「さっ、まずは公爵夫婦へ挨拶よ。その後幾つか設定して貰ってから令嬢との顔合わせが待っているわ」


そう言うと私達は屋敷へと入っていった。







テーブルの上にはお菓子と紅茶が用意されており、わたくしのすぐ横には銀のトレーが置かれております。座っている位置はわたくしの右にデュランダ、左にはカルミア。そして目の前にはアマリリス様。但し大変不機嫌顔。何故ならば使用人である筈のデュランとカルが一緒の席に着いているのが気に入らない様。しかもわたくし自身も初対面に彼女の前で挨拶もそこそこに倒れているのでそれも印象が悪かったみたいですね。ふふっ…。さて改めて挨拶しますか。


「アマリリス様。前回は大変失礼致しました。改めて御挨拶をさせて頂きます。わたくしの名はネモフィラ・マークィス・モーナン。貴女様の父方の従妹になりまして侯爵家であるクワカス・マークィス・モーナンの長女になります。そして右の女性はデュランダ。左におりますのはカルミア・ノニヤと申しまして共にわたくしの身の回りの世話をしている者達で身分も低いのですが特別に今回アマリリス様と一緒に学ぶ事になっております。」


そう伝えると彼女の眉間に先程よりシワがよっております。(あらあら、更に機嫌が急降下中ですね。此方こてらにとっては好都合ですが)



「…嫌よ」


「はい?」


わたくしは嫌と言ったのよ。二回も言わせないで!!」


「何故ですか?」


「何もかもよ。何で貴女何かと一緒に教育を受けなければならないの?しかもその二人平民じゃない!しかも一人は名字も無い。明らかに孤児じゃない。何でわたくしの前で座っているのよ!誰かこの者達を大至急屋敷から追い出してちょうだい!」


(あっデュランダの周りの空気が寒くなって来たわ。カルは笑顔が引きつってちょっとドン引きしてるわね)そう思いつつオロオロしている周りの侍女達に向かいわたくしは声を掛けた。


「令嬢はああ言っておりますがわたくし達を追い出してらどうなるか貴方達は分かりますね?この件は公爵様方に既に許可を頂いております。彼女が何と言っても公爵様の命令の方が重要です。」


そう言うとアマリリス様に目を向け、


「と言う事ですのでアマリリス様には拒否権は一切ありません。これれからは先生方の手配も教育方針もわたくしが指示する事になりますので貴女様がいくら癇癪かんしゃくを起こしても無駄ですわ」


と、ニコリと微笑んでやった。


「…れ…の…」


おやっ、等々我慢できなくなった見たいですわね。何を言っているか分かりつつもえてこう云う時は聞き返しましょう。その方が面白くなりますからね。


「はい?今何と?」


「無礼者と言ったのよ!!」


彼女はそう言うと立ち上がり手元に置いてあった紅茶が入ったカップへ手を掴むと其をわたくしへ向けて投げつけた。だがしかし、それはわたくしに取っては想定内。侍女にわざわざ下げさせず側に置いていたトレーを掴むとつかさかさず自分の前へ盾替わりにする。当然投げた紅茶はトレーに当たり跳ね返ってアマリリスの顔や服へ跳び跳ねた。幾らか服へは跳ねたけどわたくし自身はほぼ無事状態(お~訓練の成果がこんな所で役に立つとは)、デュランとカルは彼女が立ち上がった時点で既に避難済。ふるふる震えている彼女に侍女達が慌て、



「「「お嬢様!!」」」



「…う…うえっ…」


侍女達が駆け付けてたが彼女は等々泣き始めてしまった。と其処そこへ公爵夫妻が騒がしい音を聞きつけて部屋へと入って来た。


「どうした?物が割れる音が聞こえたのたが」


「お…うっ…おとう、さま…。おか、あさま…えっえっ…」


「まぁ!アマリーその格好はどうしたのです?」


「ネモフィラ嬢。一体何があったんだ?」


これでやっと役者かが揃いましたわね…)


「この、お、女がうえっ、わ、わたくしに紅茶を投げつけ、ひっく、たの…。お父様、ひっく、この女をうっ…首にして、ひっく…」


と母へ抱き付きながら此方こちらに指をさして父に懇願した。


しかし、甘いわ。今私わたくしの手にはトレー。しかも受けの体制でのままの格好。それれにね、実は扉の向こうで夫妻には待機して貰っていたの(←どんだけ自分の子の残念さを認識させる為にね。わたくしってとっても親切❤)。当然今迄のやり取りは聞いているので今の貴女には味方が居ないわ。と云うか人に指をさしては失礼です。そう考えが寄り道仕掛かっていた所に公爵が娘に向かってこう言ったのよ。


「…アマリー。謝るのはお前の方だ。」


「何故ですか!?」


「見た限りでは紅茶を投げたのはアマリー。お前の方ではないのかい?何故ならばお前のカップが無いではないか?しかもネモフィア嬢はトレーを持っている。その体制でカップを投げつけるのは難しいだろう」


「まぁ!公爵様。その通りですわ。わたくしアマリリス様が突然立ち上がったと思いましたら此方こちらに向かって投げて来たのです。咄嗟とっさにトレーで応戦致しましたけど。しかも理由は一緒に学ぶ相手が平民や孤児だからとか…。将来上に立つ者の一人が下の者を思いやる気持ちが無ければ先が思いやられますわ。今の自分はその者達が有っての者なのに」


「ネモフィラ嬢の言った通りだ。アマリー。今迄お前を私達は甘やかし過ぎた。対してお前より年下のたった5才で有る筈の彼女は既に大人と対等に話せるほど大層聡明な子だ。れに引き換えお前は我慢も出来ずすぐ癇癪かんしゃくを起こして周りに迷惑ばかり掛けている。これを機に彼女から色々学びなさい」


「ぞんな…おどうしゃまぁ…わ~ん…」


(中身は伊達に年を取ってませんから。)


こうして彼女の教育が始まったのであった…。




























人物の名前は全て花や樹木関係です。

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