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神隠しマンション  作者: たま


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物件マニア

ここは外廊下なので、こんだけ騒ぐと他の階からも「何事?」と人が出てくる気配がする。

「ミー子さん、どうしたの?」西保さんや矢川さん夫婦も出てきた。西保さん家の旦那さんはまだ帰宅してないみたいだ。

矢川さん夫婦は帰ってきたばかりみたいで2人共スーツに鞄を持っている。

久地さんの奥さんも訳が分からず後ろの方からコチラを見てる。

「平間君が消えたんです!そしたら、この中から平間君の携帯の音がしたんです!(ウソ)

第2の立川さんなるかもしれないんです!

どなたか鍵持ってませんか?」言いながら蹴り続ける。

中には久地さんも居る。平間君を殺して逃げるのはムリだ。

何が何でも殺させはしない!

築古マンションの鉄扉はとにかく音が凄い。ミー子が蹴る度音が響いて近所の住宅からも覗く人が増えていく。久地さんがベランダから逃げるのは不可能になる。

実際扉が少しづつ変形し始めた。

「管理会社にしかないよ〜無理だよ〜」下の階から来た人が言うが完全無視だ。

「うるさいわね!いい加減にしてよ!」横のマンションの窓から誰かが怒鳴る。

「…尻手さんから預かってます、今開けます。」西保さんが険しい顔で人を掻き分けて前に出てきた。

「…お願いします。」やっとミー子が蹴るのを止めた。

開いた瞬間、ミー子が飛び込む。

やはり口にタオルを詰め込まれた平間君が後手に拘束されて抑え込まれてた。

久地さんの手にはサバイバルナイフが見える。

玄関の傘を掴んで久地さんめがけて振り落とす。平間君がいるので久地さんは身動き出来ないので辛うじて避ける。

ナイフの射程に入らないギリギリで傘を顔面に突き立てようとした瞬間、同じ顔した矢川さんが、やはりナイフで傘の柄を押さえてそのままミー子の顔にスライドさせてきた。

斜めに仰け反って傘はそのまま矢川さんの足元に振り込む。

矢川さんは足元をすくえたが、平間君を遠くへ蹴り飛ばして久地さんがミー子の顔面にナイフを向けた。

背後でバタンと音がする。

西保さんが扉の鍵を掛けチェーンを下ろした。

「ムダですよ。こんだけ騒ぎになって私達の死体があれば、3人共逃げれませんよ。」

ミー子がにらむ。

「羽田はすぐそこよ。逃げれるわ。」

無表情に西保さんが答える。

「夕方の便は混みますよ。夜8時を過ぎたら極端に本数減ります。無駄です。」ミー子が返す。

「ミー子さんは、これからのマンション運営にも協力してもらえると思ったのに…」西保さんが溜め息をつく。

「こっちだって、そのつもりでしたよ。香港のマンション管理会社は優秀なんで良いとこ斡旋して貰いたかったです。」ミー子も返す。

「どこら辺でバレたの?」西保さんが聞く。

「このマンションと同じ年代のマンションでダメになったのは日本には軍艦島しか無いんですよ。建て替えは進んでますが。

スラム化して潰されたのは九龍城(クーロンジョウ)だけです。」ミー子が断言する。

「ふっ、物件マニアだったのね。」西保さんの顔が少しゆるむ。

「1960年代から70年のフランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエに代表されるモダニズム建築のビルが特に好きなんです!

クーロン城、生で見たかった!」ミー子が本当に悔しそうだ。

九寨溝(きゅうさいこう)だからね。その呼び方、日本人しかしないから!

そんな良い場所じゃあ〜なかったけどね。」


とその時、玄関扉から、爆発音がする。

「先輩!大丈夫ですか?」903号室の谷保さんの息子さんが何故か不動産屋と入ってきた。

他にもワラワラとスーツ軍団が入って来て西保さんと矢川さん、久地さんを拘束した。

「先輩?」ミー子が首をひねる。

「ヒドい!もう忘れたんですか?俺ですよ!ちょっと太ったけど、ほら?」谷保さんの息子さんが、自分の顔を何度も指さす。

元旦那と離婚した後、ずっと駅弁したいとアピールしてた…

でも、更年期で性交痛で友人がグチってたから痛いのイヤだと断ってたら、昔のソックタッチそっくりな容器を出してきた…

「もしかして、ぺぺ君?」

皆、一瞬時が止まる。

「ヒドい!そんな覚え方!

俺、もう現場の隊長なんすよ〜」谷保さんの息子改めぺぺ君がガックリした。

「ププッ!」西保さんが笑い出す。

「やっぱりミー子さん面白いわ〜ずっと一緒にそこのテラスで月見たり花火見て暮らしたかったね。」西保さんが悲しそうに笑う。

「そんなあ〜刑期終わったら、また隣に住んで下さいよ〜西保さんなら司法取引で刑期短くできますよ!絶対!」ミー子が泣く。

「あらあら、そんなのがあるの?」

「はい、2018年から組織犯罪解明のため導入されました。存分に活用して下さい!

待ってます〜」

外に出ると西保さんの旦那さん、矢川さん、久地さんの奥さんが心配そうに待っていた。

ぺぺ君とマトリの不動産屋から司法取引の説明聞きながら頷いていた。

やはり家族からの説得が1番だ。


「でも、組織から命狙われませんか?」やっと解放された平間君が心配する。

「まあ、まだまだ法整備が整ってないからね、これからだね〜それより!」

顔面をミー子にガシッと掴まれる。

「よくもよくも捕まってくれたね?許さないから!

これから1ヶ月鉄のパンツの刑だからね!」

そう言うと唇に口づけた。


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