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最後のラリアット

セレスティア彩乃のクイーン・ヴィクトリアの決戦の日が訪れた。

鋭い目つきと艶やかな黒髪を持つクイーン・ヴィクトリアは、濃厚なメイクに身を包み、黒い水着姿で立っていた。長い脚には筋肉がこりこりと張り詰め、強靭な体躯が感じられる。まるで獲物を狙う豹のように、周囲を見渡す鋭い視線は観客を圧倒する。その姿は、まさに「クイーン」の風格を漂わせていた。

対するセレスティア。彼女の髪は美しいセミロングで、水中で波のように揺れている。白い水着が、彼女の健やかな肉体を優雅に包み込んでいる。筋肉質だが、女性らしい曲線が魅力的だ。真っ白な肌が、水面に映って輝いている。まるで、水中の女神のようだ。

「私が女王の名にかけて、あなたを打ち負かしてみせる!」クイーン・ヴィクトリアが声高に叫ぶ。セレスティアはその言葉に反応し、真剣な表情で答えた。「そのために、私はここに立っている。全力で挑むわ!」リングの内外が緊張に包まれる中、二人の視線が交錯する。観客の歓声が高まり、運命の瞬間がついに来た。

最初は、セレスティアとクイーン・ヴィクトリアは互角だった。しかし、時間が過ぎ、闘いが激化するにつれ、次第にクイーン・ヴィクトリアのほうが優位になってきた。コブラツイスト、スーパークイーンレックス、ヘッドシザーズ…。クイーン・ヴィクトリアは次々とセレスティアに技を仕掛けていく。まるで、クイーン・ヴィクトリアの技の披露であった。

「どお、セレスティア。いつものあなたらしくないわね。もっと私を楽しませてほしいものね」

冷ややかな笑みを浮かべながら、苦しがるセレスティアをクイーン・ヴィクトリアは攻め続ける。ピンフォールで試合を終わらせることは可能だが、クイーン・ヴィクトリアはあえてセレスティアを痛めつけて楽しんでいるようだった。

「あなたのその優越感、私が覆してみせる!」セレスティアは苦しい状況の中でも声を振り絞った。彼女の目には再び炎が宿り、心の底から湧き上がる力が感じられた。

「この試合は私のものよ!」クイーン・ヴィクトリアの攻撃をかわし、セレスティアは反撃のチャンスを狙った。観客の歓声が彼女を後押しする中、最後の力を振り絞って反撃する決意を固めた。

「今度こそ、私の全てを見せるわ!」セレスティアは苦しみながらも、クイーン・ヴィクトリアの挑発に応えた。彼女の眼は燃えるような決意に満ちていた。「私の情熱は、あなたの冷たさを打ち砕く!」その言葉と同時に、セレスティアは力を振り絞り、反撃のチャンスを狙う。観客の期待が彼女を後押しし、リングに響く歓声が彼女の心を燃え立たせた。

繰り出す攻撃の中で、ほんの一瞬、クイーン・ヴィクトリアに隙ができた。その瞬間をセレスティアは逃さなかった。全力を振り絞って、ローブにロープに飛びつき、反動を利用して彼女はクイーン・ヴィクトリアに向かって飛び込んだ。華麗なラリアットの一撃を受けて、クイーン・ヴィクトリアはマットにあおむけに倒れた。そこをすかさずセレスティアが飛び乗って、フォールをとった。

「まだ終わらないわ!私の夢は絶対に諦めない!」セレスティアが叫ぶ。

レフリーのカウントが進む中、セレスティアは全身全霊を込めてクイーン・ヴィクトリアを押さえつけた。だが、その必要はなかっただろう。クイーン・ヴィクトリアは、セレスティアの渾身のラリアットを受けて立ち上がることができず、顔をゆがめただけだった。歓声が高まる中、セレスティアの心は昂ぶる。「これが私の力よ!」彼女は全力でフォールを決め込む。レフリーの手が三回目のカウントを下ろす瞬間、観客の歓声が一層大きくなり、セレスティアの勝利を祝福した。彼女はついに、ヒール・エンパイアとの決着を迎えたのだ。

「勝利者、セレスティア彩乃!」彼女の勝利を宣言した。

セレスティアは歓喜に包まれながら、リングの中央で両手を挙げた。しかし、その瞬間、突如として視界が揺らぎ、意識が薄れていく。彼女の体がふらつき、リングの上で膝をついた。「何が…」と呟く間もなく、全てが闇に飲み込まれていった。観客の歓声が遠くに消え、彼女の意識は遠のく。

「セレスティア! セレスティア!」

会場は一気に緊張が走る。観客たちは心配そうな表情でセレスティアを見つめ、彼女を支えるためにリングに駆け寄る人々もいた。しかし、彼女は動かなくなっていた。

「救急車を呼んでくれ! 早く!」リング上で倒れたセレスティアを見たレフリーが叫び、すぐにスタッフが動き出した。セレスティアは慌ただしく病院に運ばれた。観客たちは心配そうな表情でその姿を見送るだけだった。


残念ながら、セレスティア彩乃の姿を再び人々が見ることはなかった。十日後、彼女の死について、あるスポーツ紙は次のように報じた。

「プロレス界のスター、セレスティア彩乃が突然の死去。彼女は激しい試合の最中に倒れ、病院に搬送されたものの、必死の救命措置は力及ばずに息を引き取ったという。彼女の死により、プロレス界は大きな喪失を受けることとなった。セレスティアの闘志と情熱は多くの人々を魅了し、彼女の夢に共感を抱いていた。その輝きは永遠に忘れられることはないだろう。セレスティア彩乃の名は、プロレス界に刻まれたままである。」


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