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転生少女のプライベートダンジョン  作者: 橘可憐


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ダンジョン管理課受付の番台に木札を見せると鉱石買い取りのための扉を教えられ美咲達は案内通り中へと入る。


中は採掘者登録をした板の間とは雰囲気が違い、昔の質屋のような印象の受付が五つほど並んでいた。


土間に鉄格子の仕切りがあり、その所々に出窓のようになったカウンター受付が設けられていて、美咲はその物々しい雰囲気にに途端に緊張してしまう。


鉱石の一つ一つを丁寧に鑑定してきちんとした買い取り価格を決めるのに時間が掛かっているようで、出窓のようになったカウンターに体をもたれかけて退屈している者も居れば、鑑定の一つ一つを目をギンギンにして見詰めている者も居る。


グリはそんな様子に臆することなく空いていた受付へと歩み寄ると木札を提出する。


「鉱石を持ってきましたので査定をお願いいたします」


「一度すべての荷物をお預かりいたしますのでご提出ください」


グリとパピは指示を受け背負っていた鞄をそのまま受付へと渡すと鞄は鉄格子の向こう側の台へと置かれた。


「他に提出忘れはございませんね?」


受付はそう良いながら美咲達をジロジロと無遠慮に見回してくるので、美咲は税関で密輸を企む旅行者にでもなった気分になっていた。


「その子の鞄も一応拝見させてください」


受付の指摘に美咲の心臓はドキリと跳ね上がりバクバク言い出し始める。端から見たらどう取り繕っても不審者にしか思えない態度だ。


肩からかけていた小さな鞄を恐る恐る受付に手渡すとその場で中身の確認が始まった。


中には掌サイズになった簡易お社と水筒にハンカチ代わりの手ぬぐいと、おやつ代わりの干しいもしか入っていない。


それに簡易お社は美咲以外の誰が触ろうと発動することはなく、ただの置物にしか見えないようになっているのだがそれでも何故か不安で仕方なかった。


万が一お社が発動されたらこの場所はどうなるのかとか、お社の中に置いてある鉱石などが見つかったらどうしようなどと想像するだけで冷や汗が止まらない。


美咲のバッグの中身を一通り確認して、さらにバッグも念入りに調べる受付にグリが声を掛ける。


「この雰囲気に飲まれて怖がっているだけでしょう。何しろ初めての事ですしこの子は少々感受性が高いようですのでご容赦ください」


「きっちり調べるのが仕事なだけで怖がらせる気はなかったのだが、まぁ問題ないだろう」


受付は美咲の荷物をバックに戻すとそのまま返してくれたので心底安心し、漸く心に余裕が生まれた気がしていた。


そうして次にパピの鞄を開け、一番初めに取り出した大きな妖石を手にして受付の男は目を丸くする。


「これほど大きな妖石は今まで見たことがないのですが、念のために何階層のどんな魔物から手に入れたかお伺いできますか」


「十五階層のボスだ」


「はっ、い、今何と…」


「だから、最下層にいた大鬼のボスの物だ」


「……」


初めは得意気だったパピも受付の唖然とする反応にイラついたのか少々声が大きくなる。


「今最下層って言ったか?」


隣の窓口に居たいかにもゴツそうな大男がパピの声に反応し声を掛けてきた。


「ああ、言ったが、それがどうした」


何でかパピは喧嘩腰で、何だったらそのまま乱闘騒ぎでも起こしそうな勢いだった。


「ふざけたことを言うな、俺らが何人がかりで何年かかって十一階層にたどり着いたと思ってる。おめえらみたいな子連れの若造がそう簡単に行ける訳ねえだろう! ホラを吹くのも大概にしとけや」


「私達はおまえ達と格が違うだけだ。諦めろ」


フフンとばかりに何気に神気を発動したパピだったが、相手がその神気を感じ取れなければ何の意味も無い。


「な、何をぉぉ~!!」


パピが意図せずして最大級の燃料を投下してしまったのを感じて、美咲は咄嗟にその場に蹲り耳を塞ぎ目を瞑っていざこざ回避を図る。


前世での年齢を考えればこの程度のことは受け流せるだけの経験をしているはずなのに、グリとパピに守られる生活に慣れきってしまったのか、はたまた肉体年齢に精神が引っ張られているのか、最近の美咲はすっかり子供化してしまっていた。


前世では幼い頃から親の代わりをさせられ、大人に頼るのに慣れない寧ろ人に頼ることなどできなかった反動だろうか、甘えさせて貰えることの心地よさは美咲に半端ない安心感を与え美咲が子供のままでいること許してくれる。


グリはそんな美咲を優しく抱き上げると、今は様子見に徹するつもりらしく穏やかな笑顔を美咲に向け安心させようとしていた。


(いやいやいや、笑ってないでこの場をどうにかしてよ)


心の中ではそう思う美咲ではあったが、グリの笑顔を間近で見ると実際には声に出せなかった。

何故かすべてどうでもいいというか、全部どうにかなってしまう、そんな気分にさせられる笑顔だった。


「何を騒いでいるのです! ここでの騒ぎは御法度ですよ」


「す、すみません…」


隣で顔を真っ赤にしていた大男は、受付の奥から現れた青年の声に途端に小さく萎んでしまった。


美咲はそのあっけなさにただただ驚き、いったい何者の登場かとその姿を確認すべく視線を向けると何故かその青年とバッチリ目が合った。


なんだかやたらとお高そうな雰囲気の衣装を纏った少しばかり威厳のある雰囲気のちょっとしたイケメン風の青年だった。


(なんだか偉そうな奴ね)


美咲の第一印象はそんな感じだったが、何故かその青年は美咲から視線を逸らすことなく、さらにジロジロと何かを確認するように視線を上から下へと送る。


(な、何よ。なんか文句あるの!?)


グリに抱かれ、心の中でなら強気に出られる美咲だった。


「その三名を私の執務室へ通してください。ああ、それからその荷物も一緒にですよ」


青年が言うだけ言って退場すると、その指示通り美咲達は鉄格子脇の小さなドアから中へと招き入れられるのだった。



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