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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
4章 侯爵領編
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領都の闇教会


ミキストリアはこの日、侍女マリアと護衛数人をつれて領内の闇教会に来ていた。闇属性は、ハズレと思われているためその事を感謝しにくる人もなく、教会は王都とこのユリウス・マルキウス侯爵領にしかなかった。


祥子は、侯爵が選んだ銀行、損保の実務担当者との詳しい話のため来ていない。祥子が活動を始めたことでミキストリアも張り切っていた。祥子の知見が具体化していくのを見るのはミキストリアにとっても嬉しいことであった。そのことを思うとつい顔が緩む。


(祥子も頑張っておりますわ。わたくしも気を引き締めてまいりましょう)


ミキストリアが教会へ入ると、その姿を見つけた教会の長、マザー ラテシャが走り寄ってくるなり涙ぐんだ。


「まぁ! ミキストリア様! ご無事にお帰りになったと噂は聞いておりましたが、本当に良くご無事で……」

「マザー ラテシャ。お久しぶりですわ。ご心配をかけてしまったようですが、この通り元気ですわ。シスターの皆さんもお変わりなく?」

「はい、おかげさまでつつがなく過ごす事が出来ております」


ラテシャの声が聞こえたのか、シスターたちも集まり口々にミキストリアの無事を祝った。


「今日は、皆さんに大事なお話があって来たのですわ」

「まぁ。わたくしとしたことがミキストリア様をこんなところで。ぜひこちらへ」


ラテシャはそういうとミキストリアを応接に案内した。途中、マリアに視線で合図するとさりげなくミキストリアからの喜捨を渡した。


「ミキストリア様、いつもお心遣いありがとうございます。大したものが出せず本当に恐縮なのですが……」


シスターが淹れてくれたお茶は素朴なものだった。


(わたくしがいない間は喜捨も減っていたに違いないのですわ。苦労をかけてしまいましたね)


「いいのですわ、マザー。話というのは皆さんのことですわ。侯爵家の、いえ、わたくしの魔法研究の手伝いをお願いしたいのですわ」

「ミキストリア様、それはどういうことでしょう?」

「皆さんも闇属性が、ハズレと言われていることは耳にしていますわね? それがもしかしたら訓練次第で強力な魔法が使えるかもしれないのです」

「……」


テレシャもシスター達も黙りこくった。半信半疑であった。ミキストリアが優秀な魔術師ということは領民には知れ渡っていたが、回復魔術師として、つまり強力な聖魔法の持ち主として知られていた。そのミキストリアでも闇属性部分はハズレ認定なのだった。


「信じられない気持ちもわかりますわ。

 わたくしが聖と闇属性を持っているのは知っていますね?」

「はい、ミキストリア様の2属性は有名でございますから」

「詳細は話せないのですが、わたくしが行方不明になってた間に、わたくしはいくつか新しい魔法を身につけましたの。そのうちの幾つかは闇属性ではないかと考えているのです」

「あ、新しい魔法、ですか……」


シスター達はいま聞いたことが信じられないという顔であった。


「ええ」

「それで闇属性しか持たない私たちが同じ魔法を身につけることができたら闇属性ということなのですね」


ラテシャが額を抑えながら言った。


「ええ、その通りですわ」

「大変ありがたい話しなのですが、教会を放っておくこともできません」


ラテシャが残念そうにそう言って俯くと、シスター達も暗い表情で俯いた。


「マザー、失礼ながらこちらに来る人は少ないのではないかしら?」

「はい。ご想像の通りほとんどいませんが、全くいないわけではないのです」

「では、こういうのはどうかしら。

 皆さんがわたくしと一緒に闇魔法の研究をしていることを教会に書き残しておくのですわ。そして興味がある方はぜひ一緒にとお誘いするのです。研究は午前と午後の一部の時間だけで十分ですので、それ以外は教会のお仕事をしていただいても構いません。研究の時間は給金をお支払いしますので、活動資金集めのお仕事はしなくても良くなるはずですわ」

「……」

「もちろん、わたくしがいた頃のように喜捨もいたしますわ」

「大変ありがたいお話なのですが、ミキストリア様はなぜそのようなことを?」


ミキストリアはにっこりと笑うとシスター達を見回した。


「今後、侯爵領をもっと良くしていくためには魔法の活用が欠かせませんの。闇属性に有用な魔法があるとわかればそれを活用することができるのですわ。闇属性だけではなく、聖、土でも同じように研究するつもりですわ」

「わかりました。教会の仕事もしながらできるのであれば、闇属性の地位向上のためやらせていただきます」

「感謝しますわ。

 研究する魔法ですが、実は生活魔法の中に闇属性があるのではないかと疑っています」

「え、あの、そんなことは初めて聞きます」

「ええ、わたくしもおかしいと思うのですが、そう考えないと理屈に合わないこともあるのです。なので暫くはその研究をします」


ミキストリアは研究の方法を説明した。4人にそれぞれステータス、ライト、クリーン、サーチだけでMPを残り5%以下になるまで使ってもらう。そうすると倦怠感で身動きできなくなるので1時間ほど休憩し、午前はこれで終わり。


午後は夕方遅く、MPが5割程度にまで回復したところで同じことを行う。さらに寝る準備をした後、MPを使い切って寝る。

これで生活魔法のどれかが闇属性であれば、それを使った人は何日かするとMP最大量が増えているはず、と。


最大MPはMPを使い切りこるによっても少しだが上がっていく。ただし属性魔法を使った場合だけだ。魔法LVが上がってもMPも増えるが、闇属性ではそもそも魔法がないため、レベルアップできず、レベルが上がらないのでMPも増えず、MPが少ないためにもしかしたら存在するかもしれない高レベル魔法も覚えられず、と悪循環なのであった。


どれが闇属性か分かれば、全員でその魔法だけで同じことを行い、魔法レベルを15、できれば17まで上げる、とミキストリアは宣言した。


「じゅ、じゅうご……」


魔法LVが2、3という低いところにいるシスター達には絶望的に高かった


「すぐなりますわすわ」


ミキストリアは楽観的だった。魔法レベル(MLV)が15というのは、MP上限が200を超えるということである。17といったのは、200MPを一気に使ってもMPが枯渇しない余裕を見て言ったのだったが、うまくMPをレベリングすればMLV15でも200MPを一気に使えるほどの最大MPは増える可能性がある。


200MPを一気に、というのはそれで新魔法を覚えるきっかけが作れるのではないかと、ミキストリアは考えていた。できれば300MPを一気に使うほうが成功の確率が上がると予想はしているのであるが、300MPとなると魔法LVも19から21程度となり、さらにハードルが上がってしまう。低いレベルから研究していくべきであった。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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