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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
4章 侯爵領編
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魔法の研究


翌日、朝早くからミキストリアはマザーラテシャ、シスターマンド、セシー、シェラを侯爵邸に呼んだ。研究開始である。朝早くしたのは朝食を振舞うためであった。シスター達は痩せすぎていたのである。清貧とはいうが単に資金不足であることは明白だった。


「魔法を使うにはある程度の体力も、集中力も必要ですわ。遠慮せず召し上がってくださいね」


メニューは流石に侯爵家の人と同じとはいかず、使用人達が食べるもので、焼きたてのパン、昨日夕食の残りの肉や野菜、スープというものである。残り物とはいえ、侯爵家の夕食に出されるものであるから、闇教会のシスター達の普段の食事からすれば格段に良い食事なのであった。


4人はそれぞれに、ステータス、ライト、クリーン、サーチだけを使いまくってMPを消費した。どれも消費MPが少ないので何度も発動する必要があり手間であるうえ、意味もなくステータスを何度も発動するのは気も滅入ることだった。ミキストリアはお茶を振る舞い、ライト魔法の出現位置や明るさを変えさせたり、クリーンする場所や対象物を変えたり、サーチもいろいろな対象を探させるなど、同じ生活魔法でも微妙に発動条件が異なってくるように変化をつけさせた。変化をつけることができないステータス魔法での研究は退屈で苦痛であった。


3日目、クリーン魔法を担当していたセシーの最大MPが1つ増え、シスター達は驚くと同時にこの活動が成果を生んだことに救われる思いだった。同じ魔法を延々と、MP切れになるまで使い続けるのは、いくらミキストリアを信じているとはいえきつかったのだ。


「皆さんの頑張りのおかげで、わたくし達の考えが正しいことが分かりましたわ。引き続きお願いしますわ」


ミキストリアも笑顔でシスター達を労い励ました。


4日目サーチ魔法を担当していたシェラも最大MPが増えていた。生活魔法と思われていたものが実は2つも闇属性というのはミキストリアにとっても驚きであった。


5日目が終わってもステータス魔法を担当していたラテシャ、ライト魔法を担当していたマンドに変化はなかった。ミキストリアはこれらは闇属性ではないと見切りをつけることにした。


「マザーラテシャは今日からクリーン、シスターマンダはサーチに変えてください。これでお二人の最大MPに変化が出れば確定ですわ」


ミキストリアは、休みを挟んだ翌週の初めにそう言って担当する魔法を変更した。セシーとシェラには収納魔法を練習してもらう。


「収納魔法はレアな生活魔法と思われていますが、わたくしが収納魔法を使えるのはご存知?」

「いえ、それは初めてお聞きしました」

「そんな秘密を私達に言ってしまって良いのですか?」


ミキストリアは心配顔になるシスターに笑顔を向けた。


「ええ、問題ありませんわ。わたくし達は闇属性研究の仲間ではありませんか。そしてもし収納が闇属性なら皆さんも使えるようになるはずなのです」


ミキストリアが収納魔法が使えるというのは宮廷魔法師団では知られている。団員の能力を知らないと討伐の際の戦術が立てられないからであり、能力向上のための適切な訓練ができないからである。秘密なのは容量である。宮廷魔法師団でも、もう一人分の荷物を予備として収納できるかどうかが、収納魔法が使えるかどうかの判断でありそれ以上は聞くのもご法度である。これは1人の能力に依存しきった戦術とならないようにするための知恵でもあった。


シスター達は収納魔法がレアな生活魔法という常識に縛られて、思いつかなかったようであった。収納魔法がもし使えるようになれば生活は激変する。ポーターとして商人や冒険者の手伝いをしてお金を稼ぐことも可能になるし、何により闇属性の地位は爆アゲする。半信半疑ではあったがやる気はあった。


収納魔法の特訓が始まった。一番小さな銅貨1枚を意識して収納し、意識して収納から出すことを繰り返した。収納から意識せず出してしまっても研究中は同じ部屋にずっと居るので探すのも問題ない。サーチの練習にもなった。


翌週から、ラテシャとマンドも収納の研究に加わった。ラテシャもマンドも最大MPは増えていた。クリーンとサーチは闇属性で確定としてよかった。今までの魔法理論が根底からひっくり返り、全ての研究を1から見直す必要があるほどの重大発見である。


セシーとシェラはようやく銅貨一枚を意識して収納に出し入れできるようになり、魔法レベルも上がった。これだけでは収納はレアでないかもしれないというだけであり、練習すれば誰でも使える生活魔法という今までの考え方を変えるものではない。また容量が銅貨1枚の収納では意味もなかった。セシーとシェラは小さなコップで収納魔法の練習を続けた。


闇教会のシスター達が収納魔法の特訓に移ってしばらく、聖属性、土属性をもつ「魔術師未満」の子ども達8人がミキストリアの元に集まってきていた。すべて10歳から14歳までの女の子であった。ミキストリアが父ローレンスに頼んで行った侯爵領での募集に応じた子ども達である。


女の子しかいないのはローレンスの気遣いもあったが、力仕事の即戦力となる男の子は親も出したがらなかったし、侯爵としてもあえて選ばなかったのだった。ミキストリアの回復魔術師としての名は高かったし、ミキストリアの生還は領民を歓喜させもしたが、よく理解できない研究とやらに進んで子どもを出そうとする親は多くなかった。これは意図的に侯爵がしたものである。将来に確たる道が見えている子ではなく、持って生まれた才能を使いこなせていない子を拾い上げるのも目的であったからだ。魔法適性が高くない子を優先して選んだのである。


ミキストリアは早速、子ども達の魔法の特訓を開始した。研究メンバーも増えてきたこともあり、区別のためにそれぞれの組に名前をつけることにした。闇属性メンバーは月組、聖属性は星組、土属性は花組である。歌劇団ファンだった母を持つ祥子のアイディアである。


聖属性の子ども達には朝晩、自分達と侯爵家の使用人・侍女全員にヒールをかけるよう指示した。子ども達の魔法レベルが低いのでヒールの効果も期待できないのだが、そもそも使用人も侍女も健康に問題があるわけではないので、回復効果がないことは問題にはならない。魔法レベルを上げるのが目的である。


土属性の子ども達には、侍女で土魔法が多少は使えるというルーシーを先生役に、土魔法で穴を掘る練習と掘り出した土を固めて穴埋め戻すという練習を指示した。


子ども達のMPは少なくすぐに尽きてしまうので、午前の練習が終わるとルーシーを先生に読み書きや四則計算の勉強もさせた。また、午後には領都の冒険者ギルドや肉屋に連れていき、魔物や鶏の解体を学ばせた。これは聖属性の子どものみが対象であったが、土属性でも希望すれば連れて行くようミキストリアは指示していた。知識が魔法を強化し、時には別物と言える効果を生み出す可能性があることをミキストリアは体験している。



闇教会のシスター達がコップの収納への出し入れが安定してできるようになってきた頃、闇教会での案内を見た母親2人がラテシャに相談を持ちかけ、その話を聞いたミキストリアは6歳のフィオーネと8歳のジェシカを月組に加えた。


月組新メンバーのフィオーネとジェシカがコップの収納をマスターした頃、ミキストリアは侯爵から急ぎで呼ばれた。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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