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書店部の内部事情  作者: 片羽京介
間のお話「冬の蜃気楼」
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冬の蜃気楼⑨

三人で話し合いをしてから数日が過ぎた。

奈留は何やら自分の部室で図面を何枚も書き起こしており、どうやら彼女なりの児童書売り場のコーディネートを構築中のようである。俺の知らないうちに冬商戦の時期の単品販売データや店頭写真まで仕入れていたので最早万全の知識を備えていると言っても良い。ホントこういう時は頼りになる。

一方の円城とはこの数日は連絡を取り合っていない。あの日の夜に『少し連絡つきづらくなるかも』とメッセージが入ったので何か職場でたて込んでいるのかもしれない。

一応、本業に影響の無い程度にとは言ってあるものの、念押しのためにもう一度その旨を伝えてそのままである。


やっぱり円城には電話でアドバイスをもらうくらいにした方がいいかな。

附属高で長らく児童周辺を見てもらっていたので手伝ってもらえたら嬉しいとは思っていたけど、もうアイツは書店部じゃないしな。



……………………。


…………。



そんなことを昨晩思っていたので、明けて雑誌館に顔を出したら腕を捲って雑誌を並べている円城の姿が目に飛び込んできて、それはそれは驚いた。初めこそちょっと懐かしいなんて思ってぽかんとしてしまったけどな。




「経済学部二年で元書店部本部所属の円城紫依瑠です。正式な辞令はまだですが、よろしく」


先輩後輩含めて多くの人間が初対面な大学書店部の面々を前に、円城は淡々とそう自己紹介した。本部勤務で鍛えた心の余裕もあるのだろうが、何より根本的な部分で鋼のメンタル持ちなのだ。代表者不在で隣同士とざわざわするしかない雑誌館の部員を尻目にあの自信顔は流石と言わざるを得ない。

……ていうか、もうそろそろツッコミたいんだけど。


「附属高校で三年間書店部で活動していました。そこの瀬名店長の下でね」


そう言って円城はこちらに手を差し伸べるかのような所作を取る。劇団員か何かかよ。

苦笑いしてその場の注目はとりあえず断ち切った。

……予想していた流れではあるが、何も自らこちら側(奇人変人)に寄ってこなくても良いのに……。


自己紹介が終わった。拍手はまばらながらも、円城も見てくれは美人麗人なので多くの部員が意識しているようだった。


よろしく、と爽やかに笑って締めた後、流れ的に(知り合いなので)俺が部員を解散させて円城と二人だけになる。

そうなると円城は急に女子っぽいメモリを回しまくって照れ笑いなぞ浮かべ始めるのである。


「……お前さぁ」

「えへへ」


『ははは』とシニカルに笑わないあたりかなり女子。

こうして『来ちゃったー』みたいなノリで本部勤めだったエリート候補は現場へと返り咲いた。こちらとしては怒るわけにもいかず、とにかく、何か心が落ち着かない。


「とりあえず。いいんだな?」

「どうぞ、如何様にでも」


微妙な言い回しだが附属時代と同じ関係で良いと思っていいのかな。


「早速計画を進めようよ。後ろの女性も一緒にね」

「!!」


振り返れば、後方の雑誌コーナーで顔を隠すようにしてダヴィンチを読むお客さんが一人。印象的な明るめの猫毛が端から覗いてわたわた揺れており、焦っている知り合いだとすぐに分かった。


「僕の異動の日まで知ってるとは流石は名探偵だね」

「あわわ」


慌てて雑誌を戻して髪を弄りながら奈留がこちらへ寄ってくる。

……あわわって日常で出てくるか、自然と?

女子ってわかんない。


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