エピローグ:幸せ
ダリアはディエールと再会した。
あたりには、気絶した部下とゾレシア。
先生として、けだるげな表情でダリアを見つめる。
フン。と鼻を鳴らしてはなった言葉は、たった一言――。
「終わったんだな」
それだけだった。
!
丘の上に、一つの墓石が置かれていた。
随分と新しく、傷や風化している様子はない。
文字も、はっきりと『ディエーゴ・アレスタイン』と書かれていた。
爽やかで、生暖かい風。
澄んだ空気のにおいが、ダリアの鼻腔をくすぐる。
丘の上で一人、ダリアは墓石を見つめて、話し始めた。
「久しぶり...ディエーゴ」
返事はない。
ただ、草や木の葉が揺れる音だけが響く。
「僕は...英雄にはなれなかった。だけど、君の守ろうとしたものだけは、ちゃんとここにある」
ダリアは自嘲気味に笑い、自分の拳を見つめる。
最後は拳。
ただ、ディエーゴへの想いだけで殴り続けた拳だ。
「君の約束を守れただけでも...生きていてよかったなって、僕は思えるよ」
背中を見せ、立ち去るようなそぶりを見せる。
「君がいたから、僕はここまでこれたんだ」
去り際、ダリアは今までの気持ちをまとめるように、一言。
「...ありがとう。ディエーゴ」
その時――。
『なーにしんみりしてんだよ。馬鹿野郎』
懐かしい声が、聞こえた気がした。
ハッ。と振り返る。
だけど、そこには何もない。
いや、何も見えないだけだ。
最後は、やっぱり笑顔で。
悲しませないようにするように――。
ダリアは、満面の笑みで笑った。
「じゃあね!僕の親友!」
『...じゃあな。相棒』
其の声は、ダリアには届かない。
去り際を、ただ優しく、温かい目で見守ることしかできなかった。
!
「ダリア君...泣かなかったですね」
ヘルメスが、木の後ろでつぶやく。
「ああ...あいつはもう、弱くはない。俺がいなくてもな」
「先生...」
アルゼーヌが、不安げにディエールを見つめる。
ダリアの行動。
それらを見て、ディエールは過去の呪縛から解放された。
「...俺も、一歩を踏み出す時なのかもな。だが、もちろん今後もお前たちの指導はするぞ?」
「はは...スパルタだけは勘弁してくださいね...」
ディエールは、『ディエールのまま』話す。
のどかな空気が、あたりを包み込んでいた。
空を見上げる。
空は、千年前のあの時のように澄んでいた。




