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スピンオフ:フェイ編② ―『勇者なんて柄じゃないので』より―

本編で買われた後――

長年憧れ続けたご主人様についに仕えることができたフェイ。

しかし、その生活は

フェイ自身が思い描いていたものとは少し違ったものでした。

そんなお話です。

ご主人様とともに奴隷市場を離れても、

フェイはずっと、ご主人様にべったりくっついていた。

自然とこぼれる涙を手の甲で拭いながらも、彼女は笑顔を崩さなかった。

――奴隷として、こんな行動は褒められたものじゃないかもしれない。

フェイ自身も、それは分かっていた。

街を歩けば、周囲の冒険者たちは

「えっ、あの子を買ったのか?」と驚いた様子でこちらを見てくる。

そんな視線が集まっても、フェイの胸にあるのは恥ずかしさよりも

――圧倒的な喜びだった。

フェイはご主人様と歩きながらも

精一杯、言葉と行動で感謝を伝え続けていた。


『勇者なんて柄じゃないので、

冒険者として奴隷とのんびり暮らすことにしました。』より

スピンオフ:フェイ編②



しばらく歩いたあと、

ご主人様は一軒のお店の前で足を止めました。

そのまま私を連れて、お店の中へ。

店内はキレイな洋服がたくさん並んでました。

流行りの服、可愛い服、おしゃれな服

(ご主人様はどんな服を買うのだろう・・・)

でも、どんな服でもお似合いになるはずです。


さっきは嬉しくてついご主人様にべったりくっついてしまった。

私は奴隷だから、ちゃんと身の程をわきまえなくちゃ。

ちゃんといい子でいないと・・・!

そう自分に言い聞かせながら、

私はおとなしく、ご主人様の買い物が終わるのを待ちました。


少ししてご主人様に呼ばれたので

私は急いでご主人様の元へ向かいました。

ご主人様が持っていたのは女性物の服

(……流石に、それをご主人様が着るのは無理があるかも)

そんな風に思っていたら――

「フェイにはどっちの服が似合うかな?」

その一言で、ようやく気づきました。

ご主人様は……私のために、服を選んでくれている?

そんなご褒美をもらえるほど私は頑張れてない

まだ家事も料理もしていない。何も役立てていないのに

困惑して言葉が出てこなくなった。

「フェイはどっちの服がいい?」

その言葉でハッとした。

(え、選ばなくちゃ・・・!)

どちらの服も私の好みの服だったので

とても悩んでしまったけど、その時は右の服を選びました。

その後も、いくつかの服を選ばせてもらって――

でも、ご主人様は私が長く悩んだ服に関しては、

迷わず、両方とも買ってくれたのです。


本来、奴隷が服を買ってもらえるのは

たくさん頑張って役立てた時のご褒美。

だから私は、このご褒美にちゃんと応えたくて、

家に帰ったらすぐに家事や料理を頑張ろうと心に決めました。


ご主人様と宿屋に戻った私は、

腕によりをかけた晩ご飯を振る舞いました。

「凄く美味しいよ」と喜んでいただけた。

お役に立てて私はとても喜んだ。

そんな私の姿を見たご主人様は言いました。

「フェイも一緒に食べよう?」

一緒に食べたい・・・

でも奴隷だからいい子にしないと・・・

どうしたら良いかわからなくて下を向いて答えられなかった。

ふと見ると、ご主人様が

私の分の食器まで、用意してくれていたのです。

本当は私がやらなきゃいけないのに・・・

ご主人様にさせてしまった。

役に立たない奴隷だと思われて捨てられるかもしれない

怖くて仕方がなかった。

自然と涙が溢れてしまう。それでももう1回だけ

もう1回だけ勇気を振り絞って言葉にしてみようと思いました。

「フェイも・・・一緒に食べても・・・い、いいんですか?」

「うん。一緒に食べよう?」

「は、はい!」

数年振りに誰かと一緒に食べるご飯はとても美味しかったです。


ご主人様の部屋には、ベッドがひとつだけ。

だから私は当然、ご主人様がベッドで、

私は床で寝るのだと思っていました。

けれど、私が床に寝ようとすると

「フェイおいで」

ご主人様が、ベッドから優しく呼んでくれたのです。

ベッドで寝かせて貰えるのは凄く嬉しい

ご主人様と一緒に眠れるのも夢のように嬉しい

本当は毎日一緒に眠りたい

でも・・・

私はそれだけのご褒美を貰えるほど頑張れてはいない・・・

ちゃんとこのご褒美が貰えるくらい頑張らなきゃ!

だから私はご主人様が寝付いたのを見計らって

そっとベッドから抜け出し、床で眠りました。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


フェイ編②では、

「ご褒美を素直に受け取れない子が、必死に頑張ろうとする姿」

を描いてみました。

本当は甘えていいのに、まだ“頑張れてない”

と、思い込んでしまうフェイの姿が伝わっていたら嬉しいです。

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