2話
「お前こんなことすんの初めてだろ?」
男が話しかけながら近づいてくる。
俺は未だ動けずに置物のようだ、
「なぁ、聞いてんのかっ…!」
男が視界から消えた、
と思った瞬間、目の前には男の足下だけが映っていた。
息ができない、右の脇腹がめちゃくちゃ痛い…
何が起こったのかわからないまま、一瞬にしてパニックになった俺は、
目の前の男のことを忘れ、必死に生きようと呼吸を意識する、
しかしこんな状況で上手くいくはずもなく、カッ…コッ…と、
ほんの数mlしかないであろう僅かな酸素を吸ってるのか吐いてるのかもわからないまま、
ただ喉を鳴らすことだけに消費することしかできない。
「ハァ、まいいや、んで、電話したの?」
男の問いかけに、
もうこれ以上痛くされたくない俺は、
絞った力で小刻みに首を頷く、これだけしか動けない。
「マジかよめんどくせぇなー、てか俺こんなピヨピヨくんにヤられたの?マジで?
ありえないんですけど、反省だなこりゃ」
男はカウンターにあるおしぼりを手に取り、
首元を拭き取った後ジャッケットを脱ぐ、
「おぉ!服にはついてないな!よかったよかった」
ジャケットを羽織り直し、俺の目の前に立つと、
髪の毛を鷲掴みにされ起こされる。
「君はお金のために仕事をしたかもしれないけど残念だったねー、
君とは仲良くなれそうな気がしたのに…
カラスもカラスでこんな素人を使うなんて馬鹿だねぇ、ほんじゃ、さいなら」
男が陽気な声で喋りながらドアに向かって歩いていく、
俺はその姿を、朦朧とした意識の中、ぼやけた世界で見ていた。
「あっそうだ」
男がトストス戻ってくる。
「どうせ消されるだろうし、君の残滓、せっかくだからもらってくね?」
そう言うと俺の左肩辺りに足を掛け、俺の左腕を引き千切った。
痛みはとっくに限界を超えていたようで感じなかったが、
肘から先には、まだ腕の感覚と少し涼しさを感じた。
「おいおいてめぇマジかよ!こりゃ大当たりだぜ!」
急激な眠気に負ける寸前、母ちゃんの顔が見えた気がした。




