1話
初めて人を殺す仕事をした日。
相手の後頭部に思い切り叩きつけたのは、
飲み口が握りやすく作られた半分にも満たない飲みかけのウイスキー瓶だった。
頭皮に冷たくシパシパとした感覚を感じたが、心臓は熱く脈を打っていた。
男は喉が擦れたような音を出しながらスローモーションで崩れていく。
カクカクと小刻みに動く男を見ていると腕に強い痛みを感じた。
きっと殴った時の強い衝撃と普段の運動不足のせいだろう、
シパシパの頭がスンと元に戻るの感じながら、
鼻から鋭く空気を吸い込む、冷たく感じる、目の奥がチュンチュン鳴き、
心臓は過去最高速度を常に更新しながら爆音で鼓膜を揺らしている。
「うわっっ、なっつかしぃ」思わず一瞬シラフに戻った。
サコッシュから携帯をとると、細かい傷がちらほらついたガラケーだった、
男の写真を撮り、電話帳に唯一登録されている【104】にワン切りする。
後は言われた通り、バス停横のガードレールの淵に携帯を入れれば全てが終了する。
いや、まだ終わってない、こんなに血が出るのは想定外だ、
「怪しまれないように止血しないと…」
瓶の蓋で切れたぬくぬくの右手を見つめてたら、
寝起きのようなうめき声が聞こえた。
身体中に電気が走ったような寒気がし、
振り返るとそこには俺よりも大きな男が立っていた。
男はコリコリと首を回しながら右手で頭の血を拭い、
自分の血をスンスン嗅いだ後、指を舐める。
「スゲーな兄ちゃん、久々に死んだぜ」
ニコニコしながら話しかけてきた。
「なんだコイツ、なんなんだよ、ヤバイ、ヤバすぎる」
頭のてっぺんから爪先まで、今までに無いほどの危険信号が出ている
「早く逃げないと!逃げたい!動けない」
仕事のことなどとっくに頭から吹き飛んでいて、
地面と癒着して剥がれない両足は、震えすぎて逆に止まっているように見える。
視界は目に焼きつけんばかりと男だけにピントが合い、
逸らすことさえできないほど俺は固まってしまっていた。
「お前こんなことすんの初めてだろ?」




