6.満を持して内政
「破壊光線!」
シギャァッ! ツビーム!
「薙ぎ払えっ!」
何をしているのかって?
5つの大穴が湖化したんだよ。
でもって、5つの湖を繋ぐ運河を私自らの手で作っているのだよ!
公共工事の名の下、人力で作った場合の試算をしてみたところ、50年以上必要と出た。
とてもじゃないが待っていられない。
私は早く内政をしたいんだ。
となると、私の出番。
北西部の丁度いいところに湖が一つ出来ている。ここの出口は二つ作ろう。北と西の出口だ。
「薙ぎ払い式破壊光線っ!」
大型船が十分すれ違える川幅。いわば二車線の運河を作っているのだ。
この運河群は、内陸部のシュタイン魔帝国に沿うように作られている。
それは、内陸部のシュタイン魔帝国が運河を通じて北東の海に繋がった、という意味である
内陸部の各種産業地帯から直接に北大陸と東大陸へ荷を運送できる事となった。
輸送コストの大幅な低下、輸送量の劇的アップが期待される。
これは流通革命だ
北、東、両大陸との貿易が期待できるぞ!
「こんなもんか?」
細かい仕上げだけを人民に任せよう。
安っすい賃金でこき使ってやる!
ふはははっ! 貴様らが戴く王の無慈悲さを嘆くが良い!
バサバサバサ!(蝙蝠の翼を羽ばたかせる音)
―― 運河工事現場にて ――
「え? 賃金が出るの?」
「俺っててっきり荷役だとばかり」
「もっと村から人を呼べ!」
空前絶後の開発ラッシュが始まった。
この公共事業により、戦で疲弊した人々が一息付けたといわれている。
シュタイン城にて。
今日は雨だ。
ノーマンズ迷宮では雨が降らなかった。
狼の森はよく雨が降った。
だから私は雨が好きだ。
さて、今日も今日とて会議を開く。
ガッツリとした料理は出さないようにしたが、軽食はOKにした。
だのに遠慮して、みな、飲み物だけにしている。
……ビンネブルクだけ、何やら美味しそうにつまんでいるが。
「ビンネブルクよ、先ほどから何を食べている?」
袋に手を突っ込んでは口に運んでいる。
「はっ! お蚕さんのバター揚げです」
知ってる。バターでカリッと炒めたらキャラ●ルコーンみたいな味になるんだよね。
蛹だとウンコが無くてさらにカリッとなるんだ。
それ、次期主力産業として、テッドから100匹納品しておくように申しつけてたヤツ?
「何で食ってるの?」
「はっ! 蜘蛛は昆虫が主食故!」
確かにそうだ!
蜘蛛にお蚕さんを任せた私が間違っていた。
「アーラス! 貴様に養蚕産業振興を任せる! もう一度テッドからお蚕さんもらってこい!」
「はっ! 有り難き幸せ」
気を取り直そう。
「まずはヴァルディック! 深層農耕法の試験はどうなった?」
「畑を3メートル掘り返したんだけど……しましたが、赤土や粘土が、よく肥えた土と混ざって、水捌けが悪くなりやがって……なりました」
ヴァルディックが首を振っていた。
この中で一番人間っぽいフォルムの人狼に、3メートル農法を試させたのだ。
「変身してない人狼の力でだけどよ……ですが、3メートルの深さを畑単位で掘り返すのは重労働ですぜ……でした。人間に出来るとは思えませんな……ですね。我らが王なら軽作業なんでしょうけど。……いったい何のためなンすか? ……なのでしょうか」
「うむ、それは……」
失敗だった。どうやって誤魔化そう? 私は言葉に詰まった。
「これ、ヴァルディック! 我らが帝王の深いお考えを我らごときが理解できるはず無かろう!」
アーラス老より叱責が飛んだ。
「へ、へい、ご勘弁を」
さすがアーラス。年の功! 前々から使える男と思っていたんだ。
「ちょっとした実験だ。ご苦労だったなヴァルディック。大変参考になったぞ!」
「ありがとうございます!」
褒められたと思ったのだろう。ヴァルディックは喜んでいる。
私はゆっくりと目を閉じ、顎に手を置き考えるフリをする。
うまく行くと思うんだけどなぁ。
……よし、この企画はドラフェンの馬鹿王にやらせよう。
失敗しても、糾弾されるのは馬鹿王だし。
さて、このように内政ったって準備に時間が掛かるのだよ。
種も無いのに綿は採れぬ。
当初よりミラベルに命じて、大陸各所より、使えそうな植物の種を集めさせていた。
「以上の調査結果により、『こめ』もしくは『いね』なる植物は、この大陸に存在しない事が判明いたしました」
ミラベルの報告にがっくりと肩を落としてしまった。
無い物は無い。仕方ないよね。
稲は無かった。ジャガイモもサツマイモもこの大陸に無かった。
大麦小麦ライ麦など、麦類だけだった。
それもあって、北と東の大陸に期待しているわけだ。
沈んでいると、ミラベルがにっこりと微笑んだ。
「トウモロコシが御座いました」
「なんだと!」
「コーブロック王国で栽培されておりました。これをご覧ください」
ミラベルの合図で、トウモロコシが運ばれてきた。
確かにトウモロコシだ! チート内政の必須アイテム、トウモロコシだ!
粒が小さく、数も少ないが、品種改良すれば見覚えあるトウモロコシになるはず。
「粒の大きな個体同士とか、一本あたりの粒の数が多い者同士とかを掛け合わせるんだ。品種改良は内政の一歩だぞ!」
よし! 手応えを感じたぞ!
陥没湖周辺湿地帯の灌漑工事が進めば、一大穀倉地となる。
麦の栽培方法は全く知らない。年に2回採れるはず。いや4回だったか?
麦飯は……それなりに美味しかったが、噛み応えがあった事を記憶している。
それとトウモロコシ。北と東の大陸と交易する材料が出来た!
交易してどうする? と言うなかれ。内政チートは交易と同義語なのである!
「魔石は産出量が少ないので、輸出する事は叶いませんが、カラーストーンならコーブロック王国で多数産出されております」
艶然と笑い、身を乗り出すミラベル。揺れるオッパイ。
「いずれ、我が元に下る予定の国だ。ゆるりと行こう」
「御意!」
姿勢を正すミラベル。そして揺れるオッパイ。
「よしよし、ミラベルには何か褒美を取らせよう」
「それでは、お願いが一つあります。エリザーベトを我等魔族六部衆? に加えて頂きたく存じます」
オッパイを揺らしながら意気込むミラベル。
「よくぞ言ったミラベル!」
ベレシュ達も意気込んでいる。
「人間である女騎士を魔族にか? 魔族的に良いのかお前ら?」
「人間との融合策です。努力すれば魔族と同じ一等国民になれるのだぞと!」
戦闘力は格段に劣るのだがな。
いやまてよ「こやつは魔族六部衆の中でも一番の小物!」的な台詞が使えるな。
よし!
「お前らが良いのであれば、私はかまわん」
「ありがとうございます。つきましては、7人になりますので魔族六部衆という名称も、ここは一つ」
ふむ、確かに7人になったのに六部衆もアレだな。
「道理だ。何かいい名前は無いものか?」
雨が上がった空を見上げ、格好いい名称を考える。おお、虹が出ている。
「つきましては、評議委――」
「レインボーセブンにしよう」
「軽すぎます! せめて……ま、魔族七部衆に! あ、しまった!」
ベレシュ達六部衆の視線がミラベルに集中した。
なんか必死だなミラベル?
「魔族七部衆か、なかなか良いな!」
より漫画かラノベっぽくなってきたな!
どことなくドヨッとした空気のまま、会議は次回へ続く。




