迷子
「いや、広すぎだろ」
俺は現在、城の中で迷子になっていた。
暇だから魔王城をちょっと探検するかって軽い気持ちで始めたのが運の尽き。
事前に調べていた情報よりも桁違いに広かった。
サタンに案内してもらえばよかったなあ。
「もー、本当。ここどこなんだよ」
入り組んだ城の廊下を、もう何時間も彷徨い続けている
歩き疲れてきたし、少し休憩したい……
どっか適当な部屋にでも入るか
カチッ
「ん?」
不意に聞こえた物音は俺の足下から聞こえた気がした。
視線を足下に向けるが特になにもない。
気のせいか……?
そのまま気にせず歩みを進めたその瞬間
ヒュンッ
なにかが鼻先ギリギリを掠めて、壁に突き刺さった。
「え?」
そっと、横向くと槍が刺さっている。
いやいやいや!なんで!?
槍なんてどっから??
槍が飛んできた方を見るとそこには今にも放たれそうな大量の槍が。
あんなんさっきまでなかったぞ!
焦る俺は急いで来た道をもどろうとするが
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
大量の槍がものすごい速さ飛び交い始めた。
殺される!!!
突然訪れた命の危機。
これを乗り越えるには……きっとあの技しかない……
俺は魔王を倒すためにこの技を修行した日々を思い出した……
あれは……そう。魔王を倒す旅を続けて資金が底をつきそうになった時……先生に声をかけられたんだ。
「あなた、お金に困ってらして?私ダンサーを探しているのだけど、うちに来ませんこと?」
「ダンサー?俺無理っすよ。踊れないし魔王倒さないとだしー」
ひらひらな服着て踊るのとか勘弁だし
「あら、知らないの?このダンスはただのダンスじゃないわ。魔王を倒すためのダンスよ。」
俺は自分の耳が大きくなるのがわかった。
「それ詳しく」
そこから俺の立派なダンサーになるための修行が始まった。
「ちょっと!!ライトそんなダンスじゃ魔王なんて倒せませんわ!」
「すみません!!先生!もう一度お願いします!!」
俺は立派なダンサーになるため夢中で練習した。
晴れの日も、雨の日も、毎日練習した。
そして、店のステージ踊るだけでなく、ダンスワールドコンテストで優勝を勝ち取ることができた。
「もうあなたにはなにも教えることはないわ」
「先生……今までありがとうございました」
流石にあの時は涙がでたなあ。
おっと、思い出に浸りすぎたな。早く逃げねば!
「必殺!!ベリーベリーダンス!!」
降ってくる大量の槍を華麗なベリーダンスで避けていく。
「ふっ!はっ!とう!」
久しぶりに踊るがまだまだ腕は落ちてないな。
まだまだ降ってくる槍はもはや俺のダンスを引き立て役でしかない。
俺は見事ベリーダンスで全てのの槍を避け切った。
「はぁ、はあ……助かった……」
逃げ切ったはいいが、まだ絶賛迷子中なのは変わらない。
他にも仕掛けがあるかもしれないと思うとただの迷子よりも酷い状況だ。
ただの迷子に戻りたい……
というか、最初に魔王城に入った時にだいぶ彷徨ったはずが罠なんて一つもなかったぞ!?
べそかきながら、おそるおそる廊下を進んでいく。
どこか知ってる場所に出られたらいいんだけど
流石に休憩もしたいな
廊下だとまたいつ槍がふってくるかわからん。
どっかの部屋にでも……
俺は休憩場所を求め近くにあったドアを開いた。
「うわぁ!!!!!!」
ドアを開けた瞬間振り子のように大きな巨大な丸太が顔面に向かって来た。
「まじか……廊下だけじゃないのかよ……」
間一髪。美しいイナバウアーで避けれたが、これは休憩場所を探している場合じゃないかもな。
ゴゴゴゴゴゴゴ
「うわ、嫌な予感しかしない」
どこからともなく低い音が壁や床を伝って響いてくる。
あー、このパターンは……もしや……
予想が当たらないことを願い後をを振り向けば、大きななにかが迫ってきている。
「そんなことだと思ったよ!!!」
罠といえば、巨大な岩が転がってくるの定番だよな!!
城の中に巨大な岩とかおかしすぎるけどな!
俺は全速力で廊下を走る!!
「はぁ!!!!はぁ!!!!!勘弁してくれ!!!!」
しかし、岩との距離はどんどん縮まっていく。
曲がり角を必死に探すが、さっきまで、あんなにあった曲がり角がない!!
「なんで!!こんな時にないんだ!!よ!」
岩はもう、すぐ後ろまで迫っている。
えええ、本当にどうしようもないんだけど!
勇者、岩に潰されて圧死とか!!ダサすぎる!
ここで死ぬんか?本当に?死にたくねえ!
最後の力を振り絞るが、岩が俺の身体を容赦なく押し潰そうとした。その瞬間
ガコン
「おわあああああああ!!」
岩に潰されたと思った俺は、何故か滑り台を滑っていた。
周りは真っ暗でなにも見えない。
ただわかるのは、俺はどこかに向かって滑っているということ…
「うぇええええええ!!!なんじゃこりゃ!!!!!」
さながらジェットコースター並みの速さで
滑っていく。
小さな光がみえ始め、滑り台の終わりが近づいていくと俺は悟った。
罠と言えば、落ちた先は針谷で串刺しなんだよ!!!
「誰かたすけてー!!!!!!」
叫んだところで、助けなんて来ず。
とうとう滑り台は終わり、身体は宙に投げ出される。
「おわぁっ!!!」
ドスンと尻から着地した場所は、
「あれ?なんで僕の部屋にいるの?」
サタンがいた。
「え??」
「ん??」
互いに顔を見合わせ、少しの沈黙があった後、とりあえず、椅子を借り
ここに辿り着くまでの経緯を話す。
「えええ!まだ残ってたの!?忘れてたよ!」とサタンは驚く。
罠があるなら最初に教えといてくれと思ったが、本人も忘れていたようだった。
「この城広いから、◯ンディ・ジョーンズみたいにしたら面白そうって思って作ったんだった。」
えへへと照れくさそうにするサタンを俺はどつきたくなる。
「こっちがどれだけ大変だったと思ってるんだ!!」
「いやぁ、ごめんごめん。でも無事でよかった!!後で罠は解除しとくから!」
サタンは椅子から立ち上がり紅茶を用意し始めた。
「他にも罠があるならそれも忘れずに解除しといてくれよ。」
もう二度とこんな目に会いたくない……
「あっ……うん。みつけたら解除しとくね」
歯切れの悪い返答に俺はまさかと思う。
「もしかして……」
サタンは俺から目を逸らし
「うん……全部はちょっと…覚えてない。」
俺はそれから全ての罠が解除されるまでの間、サタンを盾にして行動するようになった。
「ちょっとライト!僕を盾にしないでよ!!今の危なかったよ!」
「お前が仕掛けた罠だろ!お前が受けろ!」




