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水上の言葉が重くのしかかり、テーブルを囲む男たちがそれぞれの思案に沈む中、志乃は再び口を開いた。
その声は、先程よりもさらに冷静な響きを帯びていた。
「もう一つ、確認しておきたいことがあります。私たちは、これからどうするべきでしょうか」
彼女は、まず水上に向き直った。
「水上さんは玄洋会から『鎮めの石』を取り返したい。それを実現するには、石の在りかを探し出して盗み出すか、儀式が行われる直前に龍脈のある場所に居合わせる他には、手段が無いように思えます。一方で、私は身の安全を確保したい。ですが、水上さんが石を手に入れられるかどうかに関わらず、私は玄洋会に狙われ続けるのではないですか?」
志乃の言葉は、問いかけの形を取りながら、状況を的確に分析し、本質を突いていた。
宗一郎と岸馬は、ただただ娘(友人のお嬢さん)の顔を見つめている。
志乃は、そこで一度息をつくと、静かな、しかし有無を言わせぬ力強さのこもった声で続けた。
「そのためには私自身の、未だ良く分からない力の要因を調査したいという、水上さんの提案は理に適っていると思われます。もちろん、私の身の安全を第一に考えてくださるのでしょうしね?」
最後の言葉は、穏やかでありながら、水上の覚悟を問う、鋭い刃のようだった。
水上は、志乃のその言葉に、一瞬、虚を突かれたように目を見開いた。
そして、次の瞬間には、深い感嘆と承服の笑みを浮かべた。
「……参りました。志乃さん、あなたの仰る通りです。全ての点において、正しい。あなたの安全確保こそが、我々の最優先事項です。あなたという『鍵』を失えば、我々も玄洋会も、神器の謎を解くことは永遠にできなくなる。あなたを守ることこそが、彼らの計画を阻止する唯一の道なのです」
岸馬は、腕を組んで深く頷いた。
彼の猜疑心に満ちた目は、いつの間にか、この十五歳の少女に対する畏敬の念を帯び始めていた。
宗一郎だけが、娘が自ら危険な役割を受け入れたことに、喜びとも悲しみともつかない、複雑な表情で俯いている。
「あなたの分析通り」と水上は続けた。「我々の選択肢は限られている。闇雲に動いても、彼らの思う壺です。だからこそ、まずは守りを固め、敵が動く前に、我々が有利になる情報を集めなければならない。そのための最も有効な手段が、あなたの力の謎を解明することなのです」
玄洋会という脅威、神器という謎、そして志乃自身の特異な体質。
水上の言葉によって、混沌としていた状況に、一本の道筋が見えた。




