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古今堂怪異綺譚  作者: 一宮九葉
第1章

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 水上の言葉が重くのしかかり、テーブルを囲む男たちがそれぞれの思案しあんに沈む中、志乃は再び口を開いた。

 その声は、先程よりもさらに冷静な響きを帯びていた。


「もう一つ、確認しておきたいことがあります。私たちは、これからどうするべきでしょうか」


 彼女は、まず水上に向き直った。


「水上さんは玄洋会げんようかいから『しずめの石』を取り返したい。それを実現するには、石のりかを探し出して盗み出すか、儀式が行われる直前に龍脈りゅうみゃくのある場所に居合わせる他には、手段が無いように思えます。一方で、私は身の安全を確保したい。ですが、水上さんが石を手に入れられるかどうかに関わらず、私は玄洋会に狙われ続けるのではないですか?」


 志乃の言葉は、問いかけの形を取りながら、状況を的確に分析し、本質を突いていた。

 宗一郎と岸馬は、ただただ娘(友人のお嬢さん)の顔を見つめている。


 志乃は、そこで一度息をつくと、静かな、しかし有無うむを言わせぬ力強さのこもった声で続けた。


「そのためには私自身の、未だ良く分からない力の要因を調査したいという、水上さんの提案はかなっていると思われます。もちろん、私の身の安全を第一に考えてくださるのでしょうしね?」


 最後の言葉は、穏やかでありながら、水上の覚悟を問う、鋭い刃のようだった。


 水上は、志乃のその言葉に、一瞬、きょを突かれたように目を見開いた。

 そして、次の瞬間には、深い感嘆かんたん承服しょうふくの笑みを浮かべた。


「……参りました。志乃さん、あなたの仰る通りです。全ての点において、正しい。あなたの安全確保こそが、我々の最優先事項です。あなたという『鍵』を失えば、我々も玄洋会も、神器じんぎの謎を解くことは永遠にできなくなる。あなたを守ることこそが、彼らの計画を阻止する唯一の道なのです」


 岸馬は、腕を組んで深く頷いた。

 彼の猜疑心さいぎしんに満ちた目は、いつの間にか、この十五歳の少女に対する畏敬いけいの念を帯び始めていた。

 宗一郎だけが、娘が自ら危険な役割を受け入れたことに、喜びとも悲しみともつかない、複雑な表情でうつむいている。


「あなたの分析通り」と水上は続けた。「我々の選択肢は限られている。闇雲やみくもに動いても、彼らの思うつぼです。だからこそ、まずは守りを固め、敵が動く前に、我々が有利になる情報を集めなければならない。そのための最も有効な手段が、あなたの力の謎を解明することなのです」


 玄洋会という脅威、神器という謎、そして志乃自身の特異とくい体質たいしつ

 水上の言葉によって、混沌こんとんとしていた状況に、一本の道筋みちすじが見えた。


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