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古今堂怪異綺譚  作者: 一宮九葉
第1章

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 水上の重い言葉がテーブルに落ち、三人の男たちがそれぞれの思いに沈む中、それまで沈黙に徹《てっ》していた志乃が、静かに口を開いた。


「水上さん、一つ確認させてください」


 彼女の澄んだ声に、三人の視線が再び集まる。


「紀伊半島で使われたという『水龍《みずち》の玉』は、儀式によって龍脈《りゅうみゃく》というものに働きかけ、結果として災害を引き起こしてしまった。そういうことですね?」


「……その通りです」と水上は頷いた。


「そう考えると、玄洋会《げんようかい》の今回の狙いは、『鎮《しず》めの石』と、儀式を行うための龍脈の場所、そして……私。この三つを同じ場所に集めることが目的、と結論づけて良いのではないでしょうか」


 志乃の言葉に、その場の空気が凍りついた。

 父の宗一郎は、娘が自らを危険の中心に置く発言をしたことに、息を呑んで絶句《ぜっく》している。

 新聞記者の岸馬は、煙草を口にしたまま動きを止め、驚きと感心が入り混じった目で志乃を見つめていた。この少女は、この異常な事態の構造《こうぞう》を、誰よりも正確に理解している。


 水上は、初めて志乃に対して、研究対象を見るのではない、対等な協力者を見るかのような眼差しを向けた。


「……全くです。驚きました、志乃さん。あなたの結論は、寸分《すんぶん》の狂《くる》いもなく正しい。それこそが、玄洋会の最終目的です」


 水上はテーブルに身を乗り出し、声をさらに潜めた。


「そして、最悪なことに、彼らはすでに三つのうちの一つ、『鎮めの石』を手にしている。そして、二つ目の鍵であるあなたの存在にも気付いている。残るは、儀式を行うための『力の場所』だけです。彼らがその場所を突き止めた時……あなたを奪いに来ることでしょう」


 水上の言葉が、決定的な事実としてその場に突き刺さった。

 志乃の冷静な分析によって、漠然《ばくぜん》としていた脅威は、明確な輪郭《りんかく》を持った危機へと変わった。

 残された道は、もはや多くはない。

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