百合カップルの隣、意外と居心地が悪くない
ついに第10話です!
レン、
だいぶ心境が変わってきました。
「恋愛フラグが折れた主人公」から、
ちゃんと“この三人の一員”になり始めています。
でも安心してください。
今回も普通に振り回されます。
「討伐隊の護衛依頼?」
ギルドの掲示板を見ながら、
俺は眉を上げた。
「ちょっとレベル高くない?」
「でも報酬いいですよ」
フィアが言う。
最近この子、
危険度より報酬を先に見るようになってきた。
冒険者適性あるな……。
「村へ向かう輸送隊の護衛です」
受付嬢が説明する。
「道中、魔物の出現が増えているので」
「……受ける」
ミアが即答した。
フィアも頷く。
二対一。
民主主義なら負けてる。
「分かったよ」
俺は肩をすくめた。
「やるか」
⸻
翌朝。
輸送隊は馬車三台の小規模なものだった。
荷物は薬品や食料。
護衛には俺たち以外にも冒険者がいる。
「新人か?」
大剣を背負った男がこちらを見る。
「大丈夫かよ」
「失礼だな」
「まあ男一人で女二人連れてる時点で苦労人っぽいけどな」
「なんで初対面で察するんですか?」
最近ほんと多いなこれ。
男は笑った。
「空気で分かる」
「どんな空気だよ」
「“あっ、この子たち両想いだ”って空気」
そんな分かりやすい???
俺はちらっと二人を見る。
フィアは顔を赤くしていて、
ミアは露骨に視線を逸らした。
……うん。
分かりやすいな。
最近俺もそう思う。
⸻
道中は比較的平和だった。
森を抜け、
草原を進む。
風が気持ちいい。
「平和だなー」
「こういう依頼ばかりならいいのに」
俺が呟くと。
ミアが小さく言った。
「レン、死亡率高そう」
「なんで!?」
「油断するから」
「否定できない」
フィアが苦笑する。
ひどい。
でも最近、
こういう会話が普通になってきた。
前より自然だ。
三人でいることに。
その時。
「止まれ!」
前方から怒声。
空気が変わる。
森の奥。
何かいる。
「……数、多い」
ミアが剣へ手をかける。
次の瞬間。
飛び出してきた。
黒い影。
牙。
爪。
獣の群れ。
「《シャドウウルフ》だ!!」
輸送隊がざわつく。
数は十以上。
多い。
普通に多い。
「レン、左守って!」
「了解!」
俺は剣を抜いた。
怖い。
でも。
前みたいに頭真っ白にはならない。
後ろに二人がいる。
それだけで動けた。
狼が飛びかかる。
俺は風魔法で加速し、
横から斬り払う。
「うおおっ!!」
一匹撃破。
直後。
二匹目。
間に合わ――
「レン!」
フィアの魔法。
身体が軽くなる。
避けられた。
さらに。
銀閃。
ミアが狼を斬り裂く。
「ぼーっとしない」
「助かった!」
「あとで説教」
「理不尽!」
でも。
息が合ってる。
俺たちも。
三人で戦ってる。
ちゃんとパーティだ。
気づけば、
輸送隊の冒険者たちも連携を始めていた。
戦いは数分で終わる。
最後の狼が倒れ、
静寂が戻った。
「はぁ……」
俺はその場へ座り込む。
疲れた。
マジで疲れた。
「レンさん!」
フィアが駆け寄ってくる。
「怪我は!?」
「ちょっと切っただけ」
「見せてください!」
フィアは膝をついて治療を始めた。
温かい光。
優しい手。
その隣でミアが周囲を警戒している。
自然だった。
俺を治療するフィア。
それを守るミア。
その空気の中に、
ちゃんと俺もいる。
恋愛の中心ではない。
でも。
仲間として。
ここにいていいんだと思えた。
「……どうしたの」
ミアが聞く。
「なんか変な顔」
「いや」
俺は笑った。
「俺、このパーティ好きだなって」
一瞬。
二人が少しだけ目を丸くした。
それから。
フィアがふわっと笑う。
「……はい。私もです」
ミアも小さく頷いた。
「……ん」
風が吹く。
草原が揺れる。
俺は思った。
ハーレム主人公にはなれなかったけど。
これはこれで、
悪くない異世界転生かもしれない。
第10話ありがとうございました!
レン、
ようやく“自分の居場所”を見つけ始めました。
ミアとフィアは特別な関係。
それは変わらない。
でも、
だからってレンが不要なわけじゃない。
三人で戦って、
三人で笑って、
ちゃんと“パーティ”になってきています。
そして今回、
レンが自然に
「このパーティ好きだな」
って言えたの、
個人的にかなり大きな一歩でした。
失恋はした。
でも、
物語から降りたわけじゃないんです。
次回は少し不穏回。
三人の関係に、外から波が来ます。




